支持されていない自民党が圧勝する選挙システムって一体何?
2012.12.20 15:30:00 記者 : 夕刊ガジェット通信 カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ : 夕刊ガジェット通信
国民の6割しか投票しなかった衆院選。正確には、小選挙区の全県投票率が59.56%となるが、そんな中で自民党が圧勝した。この「圧勝」の裏には、私たちが知っておくべきさまざまな数字のマジックが潜んでいる。以下、2012年12月18日付の東京新聞を参照しながら、そのマジックについて考えていきたい。
まず、今回の自民党の勝利には、一部の民意しか反映されていない。全有権者の中で自民党に投票した人は、小選挙区では24.67%(およそ全有権者の4人に1人)にとどまるのだ。さらに、比例代表では、たったの15.99%(およそ全有権者の6.3人に1人)のみ。
そして、投票した人のうち、自民党に投票しなかった人が小選挙区で34.65%、比例代表で43.42%もおり、いずれも自民党の得票数よりも多かった。しかし、政党が乱立したことにより、それらの票が自民党以外の各党に分散。とりわけ小選挙区では票の食い合いとなったため、結果として少ない得票数でも自民党の候補者が勝てる環境を作り出した。
このように、小選挙区での票の食い合いが起きると、大量の死票が発生する。落選者に投じられた票を「死票」というのだが、今回は「総得票の53%が死票」になった。要するに、自民党が獲得した294議席とは、全有権者1億395万9866人のうち、小選挙区では2500万人強、比例代表では1660万人強からの支持と、多くの死票によって得られたものなのであった。
だからこそ自民党の安倍晋三総裁は、今回の選挙結果について、諸手を挙げて喜ぶのではなく、「自民党に信任が戻ったのではなく、民主党政治の混乱に終止符を打つべきだという国民の判断だった」とコメントしたのである。候補者はたくさん当選したが、自分たちを支持しているのは一部の国民のみだと、安倍氏は自覚している。
とはいえ、一部の国民しか支持していなくても、当選した自民党の候補者は衆議院議員になる。なおかつ、衆議院の議席における単独過半数を獲得したので、政権交代となる。そのほかの政党は、今回の総選挙で多くの死票を生み出した責任を問われ、戦略の甘さを指摘されることになろう。
繰り返すが、今回の自民党の圧勝は、全有権者の一部からの支持と多くの死票によってもたらされたものであることを、私たちは忘れてはならない。そういう政党が、この国の舵を取るのだから、その一挙手一投足に注目し、暴走しないように監視し続ける姿勢が必要となる。
以上のことを調べてみて痛感したことは、「こんなに支持されていない政党が、294議席とか獲れちゃう選挙制度って、いったい何なのだろう」というものであった。
(谷川 茂)
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