12・16衆院選で落選して「ただの人」になったのは前議員だけではない。国会議員は3人まで税金で給料が支払われる公設秘書を雇えるため、単純計算で落選・引退した前議員266人の秘書800人弱が職を失ったことになる。私設秘書を含めればさらに増える。議員事務所がある東京・永田町の議員会館では、立ち退きと再就職に奔走する秘書たちの哀しい姿がみられた。
「どこか、いい事務所はないですか?」
「子供がまだ小さいんです…」
国会議事堂に隣接する衆院議員会館では17日、仕えている前議員が落選した秘書らが、こんな悲鳴にも似た会話を交わしていた。
衆院事務局は、落選者に対し、「3日以内に議員会館から立ち退くように」と要求。17日の衆院議員会館は、選挙区にいるため不在の事務所も多かったが、議員や秘書が荷物を段ボール詰めしている姿もみられた。エレベータの半数が引っ越し用になり、廊下や壁の一部がブルーシートを張った板で養生(保護のためのカバー)されていた。
今回、失職した前議員266人のうち、多くは民主党のため、秘書の失職も大半が民主党だ。民主党秘書会は今月、栃木県日光への温泉旅行を企画していたが、衆院選のため中止となっただけでなく、大量失職という悲劇になってしまった。
一方、119人の新人議員が当選した自民党や、同じく新人が多い第3極を中心に経験者の需要はある。秘書は永田町の慣習に精通し、日程調整や後援会づくりなど実務に慣れているためだ。
2009年の衆院選後、自民党から民主党に移籍した50代の男性秘書は「家族もいるので、自民党に戻りたい」と話した。議員が民主党を離党して第3極に移った30代の男性秘書も、同じく、自民党への再就職を考えている。