2ちゃんねる書類送検:刑事責任追及に慎重論も
毎日新聞 2012年12月21日 02時30分(最終更新 12月21日 02時40分)
インターネット掲示板「2ちゃんねる」に覚醒剤の売買をもちかける書き込みを放置したとして、警視庁は20日、2ちゃんねるの元管理人の男性(36)を麻薬特例法違反(あおり、唆し)ほう助の疑いで書類送検した。掲示板の違法な投稿を巡って管理人が立件されるのは異例。
2ちゃんねるに対する警視庁の捜査の背景には、投稿に絡む薬物犯罪の多発がある。警察当局によると、10〜11年、2ちゃんねるへの投稿をきっかけとする薬物密売などの事件検挙は11件。神奈川県警などが摘発したグループは延べ4500人から1億円以上を売り上げ、インターネットを利用した密売事件としては過去最大規模だった。
警視庁は、昨年11月以降、関係先など10カ所を家宅捜索するなど運営実態を捜査。(1)問題のある投稿の削除を受け持つボランティアが、削除の可否に関する判断を元管理人に求めている(2)収益の一部を元管理人が得ている(3)元管理人が譲渡先としているシンガポールの会社はペーパーカンパニーである−−などの状況が判明し、元管理人が現在も運営の決定権をもつと判断した。
しかし、元管理人の刑事責任を問うことには慎重論も強い。捜査関係者によると「薬、違法」の掲示板には、昨年5月に無職の男が広告を投稿した時点で約9800件の違法情報が放置されていたが、全投稿に占める比率は約6%。800以上の掲示板の集合体である2ちゃんねる全体でみると、比率はさらに低くなる。
IHCの削除依頼に限界があるとの指摘もある。園田寿・甲南大学法科大学院教授は「掲示板の書き込みを削除する義務が管理人に課されるのは、裁判所から命令を受けた場合などに限られる。法的に削除の義務がない限り、書き込みを放置した管理人の刑事責任を問うのは難しい」と話す。
一方、警視庁が捜査に着手した直後から、2ちゃんねるの自主的な規制で違法情報が大幅に減少した。昨年12月から半年間の削除依頼は123件で、11月までの半年間に比べて約94%減った。捜査幹部は「薬物犯罪の抑止という成果につながった」と話す。堀部政男・一橋大学名誉教授は「ネット上の情報に対する法規制や公権力の介入を最小限に抑えるためにも、掲示板の管理人は、違法情報の排除に社会的な責任をもたなければならない」と話している。