〈⑷慰安所は1932年上海事変時に旧日本軍兵士による強姦事件が多発して現地人の反発と性病などの問題につながるや、その防止策として日本海軍が設置したのが最初だった。
日本軍は1937年7月から中日戦争で兵力を中国に多数送り占領地に軍慰安所を設置したのだが、1937年12月南京大虐殺以後、その数が増加した。これには軍人たちへ「精神的慰安」を提供することによりいつ終わるか分からない戦争から離脱しようという軍人達の士気を高め不満を宥和し、特に日本語ができない植民地女性を「慰安婦」として「雇用」することにより軍の機密が漏れる可能性を減らすという意図が含まれていた。
1941年からアジア太平洋戦争中に日本軍は東南アジア、太平洋地域の占領地域にも軍慰安所を設置した。公文書によって確認された軍慰安所設置地域としては朝鮮、中国、香港、マカオ、フィリピンなど日本が侵略した地域だ。
日本軍慰安婦の数は8万から10万あるいは20万程度まで推算されており、その80%は朝鮮女性達であって、そのほか日本軍慰安婦被害者の国籍はフィリピン、中国、台湾、オランダなどだ。〉
ここで書かれている慰安婦の数の推計と80%が朝鮮女性という説は全く実証的根拠がないことが秦郁彦教授らの研究で明らかになっている。
〈⑸これに対してわが国政府は「日帝下、日本人慰安婦に対する生活安全支援法(法律第4565号)」を制定して日本軍慰安婦被害者に生活支援金を支給し始めたが、日本政府は日本軍慰安婦被害者に対する補償は協定ですでにすべて解決された状態で新しく法的措置をとることはできないという立場を固守し、1994年8月31日軍慰安婦被害者の名誉と尊厳毀損に対する道義的責任により人道的な見地から個別的な慰労金や定着金は払うことができ、政府次元でない民間次元でアジア女性発展基金の造成などを模索したいという立場を明らかにした。
⑹韓国、台湾などの日本軍慰安婦被害者と支援団体はアジア女性発展基金の本質が日本政府の責任回避だと判断し、日本軍慰安婦被害者を正当な賠償の対象でない人道主義的な慈善事業の対象として見る基金に早くから反対の立場を表明したが、韓国政府は日本政府を相手にアジア女性発展基金の活動を中断することを要求したが受け入れられないと、この基金からカネを金をもらわないという条件で政府予算と民間募金額を合わせて上記基金が支給しようとしていた4300万ウォンを被害者に一時金として支払った」。〉
条約上の立場を崩さない中で、人道的支援としてわが国の政府と民間がつくったアジア女性発展基金という枠組みは、被害者の心を慰めるどころかむしろ責任回避と非難されただけだった。
〈⑺一方、金○順をはじめとする9名の日本軍慰安婦被害者は1991年12月6日日本を相手にアジア太平洋戦争犠牲者補償請求をしたが、2004年11月29日最高裁判所で上告が棄却され敗訴で幕を閉じた。
この訴訟過程で控訴審である東京高等裁判所は原告が安全配慮義務及び不法行為に根拠する損害賠償権を取得した可能性はあるが、これは協定第2条第3項の財産、権利及び利益に該当しすべて消滅したと判示した。
また、1992年12月25日に提起した釜山軍隊性奴隷・女子勤労挺身隊公式謝罪など請求訴訟でも1審で一部勝訴したが、控訴審で破棄され、最高裁判所で2003年3月25日上告不受理決定が下りた。
それから在日韓国人宋神道などが1993年4月5日に提起した軍隊性奴隷謝罪補償訴訟も2003年3月28日最高裁判所で最終棄却されて終結した。
⑻これに対して韓国政府は2004年2月13日、韓・日会談関連文書の公開を命じる判決に従い関連文書を公開し、国務総理を共同委員長とする「民官共同会議」の2005年8月26日の決定を通じて、協定はサンフランシスコ条約第4条を根拠にして韓・日両国間の財政的・民事的債権・債務関係を解決するためのものであり、日本軍慰安婦問題などのような日本政府など国家権力が関与した「反人道的不法行為」についてはこの協定によって解決したものとみることはできないので日本政府の法的責任を認定するという立場であることを明らかにした。
しかし、日本政府は後述の米下院の決議案採択、2008年国連人権理事会定期検討会議の「慰安婦」問題の解決を追及する各国の勧告と質疑を内容とする実務グループ報告書の正式採択に対抗して、
①河野談話を通じた謝罪、
②協定を通じた法的問題解決、
③アジア女性基金の活動などを通じて日本軍慰安婦関連問題が完全に解決したと主張した〉
日本政府の謝罪しつつ法的責任は逃れるという方針は、韓国政府に全面的に否定されているだけでなく、国際的にも支持されていない。
この後、(9)(10)(11)では、この間、国連人権小委員会の2回にわたる報告書で慰安婦が性奴隷でありと慰安所は強姦センターと規定されたことなど、
2007年の米下院、オランダ下院、カナダ連邦議会下院、EU議会の決議が採択され20万人の女性が慰安婦として強制動員されたことや日本政府の公式謝罪と法的責任認定と補償実施などが追及されていること、
2008年に国連人権理事会が慰安婦問題実務グループ報告書を採択したこと、
2008年韓国国会が日本の公式謝罪と賠償を求める決議案を261名中260名の賛成で通過させたこと、
2010年12月11日、大韓弁護士協会と日本弁護士協会が日本政府による謝罪と金銭補償を早期に求める共同声明を出したことなどを列挙している。
つづく