現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年12月20日(木)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

政府と日銀―金融緩和は魔法の杖か

次期政権を担う安倍自民党総裁が、日銀に大胆な金融緩和を迫っている。日銀の白川方明総裁との会談で、政府と協定を結び、2%のインフレ目標を設けるよう求めた。日銀も来月には協[記事全文]

一票の格差―「解消済み」は考え違い

国会議員が真剣にとり組まねばならない課題がある。一票の格差の解消だ。「それは前の国会で処理済みだ」。そう考える議員がいたら認識が甘いというほかない[記事全文]

政府と日銀―金融緩和は魔法の杖か

 次期政権を担う安倍自民党総裁が、日銀に大胆な金融緩和を迫っている。

 日銀の白川方明総裁との会談で、政府と協定を結び、2%のインフレ目標を設けるよう求めた。日銀も来月には協定を結べるよう検討に入ったという。

 実勢から外れた高すぎるインフレ目標は現実的でないとしてきた日銀にしては、何とも素早い身のこなしである。

 来年3〜4月に白川総裁と2人の副総裁の任期が相次いで切れる。政界では早くも後任人事の話題が熱い。日銀法を改正して、言うことをきかせようとする動きもある。

 日銀には、政府や国会の機嫌を損ねるのは得策でない、という政治判断もあろう。臨機応変さも必要だ。しかし、変わり身の早さだけでは、中央銀行としての信用を失いかねない。

 選挙中から、もっと緩和さえすれば景気は良くなるかのような主張が飛び交った。

 だが、金融緩和は魔法の杖ではない。日銀も、高いインフレ目標を無理に達成しようとすると、さまざまなリスクや副作用を招くと指摘してきた。

 収入が増えない家計が物価高を警戒して節約に走れば、景気はさらに悪くなる。企業に設備投資などの資金需要がない中で大量にお金を流しても、効果は乏しい。緩和が空回りしたまま日銀が国債を買い続ければ、財政不安が高まる――。いずれももっともな目配りである。

 残り任期が少ない白川総裁にとって、金融政策の役割と限界を、政治家と国民に納得させることも大事な使命だ。

 逆に安倍氏には、金融緩和に伴うリスクをどう考えるのか、説明する義務がある。

 さらに、規制や制度の改革などで企業の資金需要を刺激し、金融政策の効果を引き出す責任は政府にあることを、明確にすべきだ。

 政府と日銀との協定も、デフレの複雑さを直視し、金融政策の効果と限界を踏まえ、政府と日銀の適切な役割分担を実現させるためなら意味をもつ。

 政府の怠慢を、緩和の「ノルマ」として日銀にツケをまわす内容は許されない。公共事業の拡大に向けて、日銀に事実上、国債を引き受けさせるような発想は問題外だ。

 一連の経緯からは、日銀法にうたわれた独立性が、実態としては決して高くないことが分かる。放漫財政に目をつける市場から金利急騰のしっぺ返しを受けないために、法改正より、むしろ日銀の政府への従属が強まらないよう注意が必要だ。

検索フォーム

一票の格差―「解消済み」は考え違い

 国会議員が真剣にとり組まねばならない課題がある。

 一票の格差の解消だ。

 「それは前の国会で処理済みだ」。そう考える議員がいたら認識が甘いというほかない。

 たしかに「衆院小選挙区の議員定数の0増5減」と「参院選挙区の4増4減」が、衆院解散の前にかけ込み成立した。

 しかし小手先の修正にすぎない。引き続き「制度の抜本的な見直し」を検討するというものの、具体像はみえない。衆院を中選挙区制に戻す、比例代表の定数を減らす、それに伴い比例議席の配分方式を改める――など思惑含みの案が飛びかう。

 利害関係がある国会議員が、自らの選出方法を公正、中立に決めるのはむずかしい。

 学識者でつくる選挙制度審議会を首相の下に設け、両院の役割やそれに応じた選び方について英知を集める。現時点で考えうる最善のやり方だろう。

 成案を得るまで一定の時間がかかってもやむを得ない。

 それまでの間、いまの状態で手をこまぬいていていいのか。

 まず衆院である。

 私たちは社説で0増5減の早期成立を唱えた。解散にむけた緊急避難策と考えたからだ。

 だが、格差の元凶である都道府県に一律1議席を割りふる1人別枠をやめ、小選挙区の全議席を人口に比例して配分し直せば21増21減になるはずだった。

 影響をうける選挙区を減らそうと、議員がお手盛りでまとめたのが0増5減だ。それも区割り作業が間に合わず、総選挙はもとの定数で実施された。

 「抜本的な見直し」が成るまで次の選挙が行われない保証はない。審議会の議論は議論として、本来やるべきだった是正をやりきる。それが筋だ。今回のような「時間切れ・その場しのぎ」の再現は許されない。

 参院にも大きな問題がある。

 4増4減の後でも、格差はなお5倍近くある。法の下の平等にほど遠いこの状態で、来年の参院選にのぞむというのか。

 都道府県の枠をこえたブロック制の導入などが間に合わないなら、今回だけの措置として、総定数を増やして都市部にまわし、格差を縮める方法も考えられる。経費は政党交付金や歳費を削ってあてればいい。

 違憲判決から逃れるぎりぎりの線を模索するだけで、肝心な有権者の権利を守る姿勢を見せない。そんな政治とは決別しなければならない。

 正統性を欠く制度で選ばれた議員が国の針路を語っても説得力はない。一票の格差の解消は政治を進める大前提である。

検索フォーム

PR情報

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介

アンケート・特典情報