船の操縦室は船橋またはブリッジと呼ばれており、ブリッジデッキは見張りの場である操舵室、海図を取り扱う海図室、通信を行う無線室に分かれているのが一般的です。ブリッジは立直が原則ですが、最近では写真のように各計器を統合してコックピット化したものも欧州を中心に広がっています。統合化したブリッジは特にIBS(Integrated Bridge System/総合ブリッジシステム)と呼称し、座ったままでほぼ総ての航海計器を手にすることができ、各種航海情報がCRT上で集中監視できます。
マグネットコンパス | ジャイロコンパス | 音響測深儀 |
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方位磁石と同様、磁力で方位を知るのがマグネットコンパスです。しかし地球の磁北は北極点と一致していないうえ磁力線の傾きが地域によって異なるため精度の高い航海を行うことが難しいことから、大型船ではジャイロコンパスが使用されます。舶用マグネットコンパスは船体磁気の影響を受けるため、図の1のような仮想磁気体を用いて船体磁気による誤差を取り除きます。 | コマのように高速回転する物体は、その姿勢を維持する力が発生します。この力を利用して、地球の真北を知ることができるのがジャイロコンパスです。地球の自転による影響が特殊な北極点、南極点以外の世界中どの地域でも真北を指すため、高精度な航海が可能なことから大型船を中心に導入されています。但し機械式のため故障の恐れがあることから、マグネットコンパスの設置も義務づけられています。コマを回すシステムの違いから、大きく分けてスペリー式とアンシューツ式の2種類があります。 | 音波を利用して水深を測る航海計器です。音の水中での速さは秒速約1500メートルですので、海底に反射して戻ってくる時間を計測することで深さを知ることができます。最近は3次元で海底を映し出す高度な水深計もありますが、基本的なシステムは同様です。このような水深計が普及する以前には、グリスを塗布した鉛塊にロープをつけた測深儀と呼ばれる道具を使用していました。 |
レーダ | 六分儀 | ログ |
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3〜9ギガヘルツのマイクロ波を利用して他船を遠方からキャッチできるがこのレーダで、まさに船の電子の眼といえます。第2次世界大戦の頃から普及してゆきました。送信機高さや出力にも左右されますが、大体25マイル(約45キロ)程度から他船を捕捉できます。最近のレーダは物標をコンピュータで電子処理することができ、他船の速力、針路、最接近までの時間と距離が計算できるものが主流です。レーダの弱点は雨や雲による障害物で探知能力が低下することです。 | 2つ以上の天体の高度とその時間を測定し、天測歴と呼ばれる天体位置パラメータ一覧を利用して計算処理することにより、自船の位置を求めることができます。その際に高度を測るのに用いられるのがこの六分儀と呼ばれる角度計です。近年の電子航法装置の発達によりその活躍の場が失われつつありますが、船乗りの基本ということで練習船では未だ健在です。 | 船のスピードは船ことばでログといいます。現在、船速を測る手段として、音波が海底もしくは水中の層に反射する際に発生するドップラー効果を利用した<ドップラーログ>、海水の導電性を利用してローレンツ力を応用した<電磁ログ>が一般的です。特に精度の高いドップラーログはセンサーの数を増やすことにより、横方向のスピードを測ることもできます。 |
操舵スタンド/オートパイロット | フィンスタビライザ | クロノメータ |
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舵輪といえば木製の大型のものが想像されますが、現在の大型船の舵は自動車のパワーステアリング同様油圧で操作するため、舵輪は自動車のハンドルほどです。図はかなり古いタイプですが、最近は飛行機の操縦桿のようなものやジョイスティックタイプのものが採用されている船もあります。またこの舵輪には、コンパスと連動して針路を自動的に保持するオートパイロットが組み込まれているのが一般的です。 | 船の動揺を抑える手段の1つとして有名なのがフィンスタビライザーです。水中内に張り出した小さな翼が揚力を生むことにより動揺を低減させます。しかし水中抵抗が増えることから、船速が低下するのが弱点です。主にカーフェリーや豪華客船、空母などに使われています。 | 船の時計はクロノメータと呼ばれ、水晶発振器式(クオーツ式)の中でも特に精度の高いものが使用されています。図のように2つの時計がありますが、1つは航海の基本となるグリニッジ世界標準時に常時合わせられており、もう1つは現地時間に合わせて適宜時刻改正します。船内各所の時計はこの現地時間を指示する時計の方に連動しています。 |
サイドスラスタ | エンジンテレグラフ | 電波航法計器 |
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横方向に移動できるよう、船体横にプロペラを付けた船もあります。この補助プロペラのことをサイドスラスタと言い、船首側につけられたものをバウスラスタ、船尾側のものをスターンスラスタと呼んでいます。カーフェリーやコンテナ船、小型貨物船に装備されています。また、ケーブル敷設船や海洋観測船にはコンピュータ制御のより高機能なものが使用されています。 | 船橋からエンジンの指示を行うのがエンジンテレグラフです。写真のような船橋に設けられた指示器からの命令を受けて、エンジンルームに待機する機関士がスロットルレバーを操作して回転調整を行います。しかし現在は装置の電子化により、このようなシステムを採用する船は皆無となり、船橋からオートマティック車さながら遠く離れたエンジンを遠隔操作することができます。 | 電波と電子技術を利用して船の位置を求めるのが電波航法計器です。現在、もっとも主流なのが人工衛星を利用したGPSですが、他に陸上電波塔からの信号を利用したデッカシステムやロランCシステムがあります。最近は電波航法計器を応用して、カーナビゲーションシステムのように電子海図上に自船の位置と航路線を表示する装置も導入されつつあります。 |