ソードアート・オンライン ―黒白する思い― (縦横夢人)
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 書き終わって思ったけど、長いかな?

 けどこれさすがに第一話で主人公を少しでも出さないとやばいですし。
 もし長いと思った、または短く継続的にして欲しい人は感想でお願いします。



編集(済)



1.はじまりの色

 SAO≪ソードアート・オンライン≫


 それは2022年5月に発売された、流線型のヘッドギアをインターフェースとした≪ナーヴギア≫によって動かし、仮想現実(バーチャルリアリティ)によるフルダイブが可能になったVRMMORPG(仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム)である。

 ≪ナーヴギア≫はモニタ装置と手で握るコントローラーという二つの旧インターフェースとは違い、頭に取り付けることによって使用者の脳そのものと電気信号によって直接接続する。 それによって目や耳ではなく、脳の視覚や聴覚、さらには触覚や味覚嗅覚にダイレクトに送られる情報を見て、聴き、食べ物をにおい、味わい、そして触り、動くことができる。つまり、五感全てにアクセスすることができる。

 これにより従来のゲームとは全く異なったものへと進化し、そして≪ソードアート・オンライン≫というまさしくもう一つの世界を作り上げた。

 それは様々な人間に衝撃を与えた。
 ゲーマーのみならず、ゲームに興味を持たなかった者もその世界に魅了され、一万本製作されたそれは瞬く間に完売を果たした。




 運命の2022年11月6日日曜午後一時――――≪ソードアート・オンライン≫の正式サービスが始まる日







 そして終わりと始まりの日だった







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 木に囲まれた森の中


 目の前には青いイノシシが興奮しているのか鼻息を荒くし、こちらを睨んでいた。
右脚を踏み鳴らし、こちらを攻撃しようと今か今かと狙いを定めて待っている。

 対してこちらも負けじと相手を睨み、踏み込めるように腰を落として――――


「ったぁーーー!!」


 かけ声とともに前に一歩踏み出し、右手にある短刀≪ダガー≫を相手に振るった


「ーーーーぁぁぁ、あれ?」


 ――――と思ったら相手に当たっておらず、それどころか相手とはまだ五メートルも離れていた。
 どうやら怖くて目をつぶってしまい本当に一歩しか踏み出せておらず、相手の青色のイノシシ≪フレンジーボア≫も何が起こったのかわからないのか、先程の興奮もどこへやら首を傾げていた。


「い、今の無し! もう一度・・・」


 そうしてまた相手を見つめ、今度は目をつむらないように気を付けて飛び出した――――


「っやぁぁぁーーーーーーーーふぎゃっ!?」


 ――――途中で石につまづき、顔から地面にぶつかってしまった。

 辺り一帯が時がとまったように静かになり、葉や枝同士がこすれあう音だけが響く。





「・・・・・・ブルゥ」


 十秒か、はたまた一分経っただろうか。
 相手の≪フレンジーボア≫は何も見なかったように後ろを振り向き、そのまま去っていった。


「・・・・・・うぅ」


 何故かそれが切なくて、思わず涙目になってしまう。









 ―――――≪ソードアート・オンライン≫が始まったあの日


 私≪シリカ≫、本名“綾野珪子(あやの けいこ)”は友達から薦められこの≪ソードアート・オンライン≫に手を伸ばした。
 いや、友達に薦められたのは確かだが、本当はその前からSAOには興味を持っていた。
 ある日買い物に出かけた帰りの途中に立ち寄った、広告用のテレビに映ったSAOのCM。その中に広がる青い空、白い雲、風が揺らす草木や花、そして空を飛ぶ巨大な城・・・その全ての景色に魅せられ、憧れた。
 例え仮想現実だとしても、この世界とはまた違った新たな世界。それがまた思春期真っ只中の私を刺激した。
 両親に頼み込んで誕生日を返上し、ナーヴギアとSAOのハードを徹夜して一緒に並んで買ってもらった。
 それからは≪ナーヴギア≫の基本操作を頭に叩き込み、SAOの世界をひたすら想像していた。

 そして待ち望んでいたサービス開始日の当日。サービス開始10分前から準備し、そして13;00ちょうどに期待と興奮を胸に「リンクスタート」のかけ声でダイブした。

 そこは私が想像した以上の景色が待っていた。どこまでも広がる空、中世を模した家、そして外に出れば風が草木や花を揺らし、香りを運ぶ。
 違う世界に来た。まさにその一言に尽きた。
 その世界の景色を堪能した後友達との待ち合わせの場所に行き、そこでまた友達と盛り上がった。




 そしてその時が遂に訪れてしまった。

 始まりから約四時間後の夕方頃に突如起こった転移により、≪はじまりの街≫中央広場に全てであろう私たちユーザーは集められた。
 時間も時間だしと友達と別れてログアウトしようとログアウトボタンを探したがどこにも見当たらず、迷っている時に≪はじまりの街≫から鐘の音が鳴り、強制転移させられたのだ。周りの人も突如として起こった事態に困惑していた。
 そして周りから転移の光が止まったすぐ後、空の一点に“WARNING”と書かれた赤いパネルが出現し、それが無数に広がり空を赤色に覆う。さらにはそのパネル同士の隙間から血のような液状の物体が滴り落ち、空中に集まっていく。そしてそれが一つになると、ある一人の人物を形どった。
 このSAOの総責任者、GM(ゲームマスター)だった。いや、その人物は≪茅場晶彦≫(かやば あきひこ)と名乗った。≪茅場晶彦≫――――それはナーヴギアの開発者であり、このSAOの開発者でもあったと思う。

 そして話される内容に始めは何を言っているのかわからなかった。ログアウトボタンの消失。ナーヴギアの電気信号による脳の破壊。HPと自分の命が直結していて、0になると現実の自分も死ぬということ。現実味が無い夢物語のような話。
 しかしそれもGMから送られたアイテム:手鏡を見て変わった。持ったとたんに体全体が光に包まれ、もう一度手鏡を見ると先程までのアバター≪シリカ≫の姿は無く、そこには現実と同じ“綾野珪子”の姿があった。
 それはナーヴギアによって測り、撮られたものをそのままアバターに照らし合わせたものだった。それによって体の奥から何かが押し上げてきて、急に現実味を帯びてきた。

 後のことは余り覚えてあらず、ただただ泣き叫んだだけだった。




 その後は友達に会い、話合えばこれがさらに現実を突きつけてきた。
始め二週間程はやはり現実との区別がつかず、死という概念が体を縛り、≪はじまりの街≫から出ることができなかった。
 しかし何もしなければおなかが減る。食べ物を買うにはお金≪コル≫が必要だ。宿に泊まるのにもお金が必要になる。必然的にコルは減り、お金が必要になってくる。コルを稼ぐにはモンスターを倒すか、スキルを鍛えて職業を覚え、プレイヤー相手に商売をするしかない。
 しかしどちらにしてもレベルを上げるしかないので、初めはモンスターを倒すしかない。友達と共に必死に操作を覚えるのに一週間。そしてそれを一週間続けているが、≪はじまりの街≫の周りはほとんどのプレイヤーによって狩られてしまい、遠くの場所へ行くしかなかった。

 私は友達と常に一緒に行動している。他の人と組むのいいかもしれないけど、女のプレイヤーは少なくてあまり安心できない。
 SAOには女性用にハラスメント規制があるけど、やはり男性と行動するのは抵抗がある。




 そして始まりの日から約一ヶ月・・・・・・未だに第一層は攻略されていなかった。




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「うぅ・・・・・・モンスターに見なかったことにされるなんてぇ・・・・・・」


 操作を必死に覚えても実際に戦ったことが少ないのでまだモンスターに対して恐怖心があり、今回のように倒せずに逃げられることもたまに、
 そうたまに(・・・)あるのだ。決してこれが19回目とかではない。運動神経が悪いのでなく、まだ慣れていないだけなのだ。
 そうして私は立ち上がり、辺りを見回す。


「それにしても、ここどこだろ?」

 この森は≪はじまりの街≫から遠くにあり、まだ他のプレイヤーに狩られていない場所だ。
友達と共に訪れてモンスターと戦っていたのだが、その友達は私と違って戦闘に慣れており、私を残してどんどん先に進んで行ってしまった。
 そのせいではぐれてしまい、別の道に反れてしまったようだ。一人になってしまった不安と恐怖が私に押し寄せる。


(何が「大丈夫、ここら辺弱いからシリカでも(・・)勝てるよ! だからこの先見てくるね。キラッ☆」よ!! 私まだ全然慣れてないのに~!?)


 ざわざわと草木の擦れる音がさらに不安を煽り、自然と身体が硬くなる。そして突如風が止み、嫌な静けさが辺りを覆う。


(な、何か出そうな・・・・・・まさか・・・・・・ね)


 ガサッ


 と、その時後ろの草むらから音とともに気配がして思わずビクッと硬直してしまう。そしてゆっくり振り向き、気配がした場所を見つめる。


 ガサガサッ


(や、やっぱり何かいる!!)


 右手をダガーに伸ばしていつでも抜けるようにはしておき、相手の様子を伺う。緊張で思わず唾を飲み込んでしまう。


 ガサガサガサッ


「来るッ!!?」









「プギュッ!」 ヒョコ




「へ?」 


 そこには現れたのは一匹の小さいブタだった。いや、一応口の端に小さい牙があるのでイノシシだろうか。それに青い体をしていて、
 それは先ほど相手にした――――


「≪フレンジーボア≫の・・・・・・子供?」


 それは≪フレンジーボア≫の子供、またはレア種だと思わせた。
 だけどそれよりも私は・・・・・・


(つぶらな瞳、丸い鼻、音が鳴りそうに歩く姿・・・・・・


 何あれかわいすぎ!!!!)


 ・・・・・・その姿に魅了されていた。


 思わずダガーを仕舞い、じりじりと手を伸ばしながら歩み寄ってしまう。
 そして――――


「キャーーーーッッッチ!!!」 ガバッ

「プィギュッ!!??」


 両手で体を掴み、ゲットしてしまった。


「や~~ん、何これかわいいぃぃ! なんであんなになっちゃうのぉ!!?」

「プっ、プギュ~~~~~~!!??」 



 ≪プチボア≫は私に気付いていなかったのか驚き、逃げようと鳴き声を上げジタバタと動くが、そのしぐさもまた私の心をときめかせ、顔を近づけて頬ずりする。

 少し現実から離れしばらく続けていたのだが、この後私はそれを後悔する。


 ブルゥフゥゥゥン


「わっ! ・・・・・・へ?」


 突如後頭部を生暖かい風が撫でる。それにより現実に戻ってきた私は後ろに振り向き、思わず≪プチボア≫を離し固まってしまった。
 そして気付く。

 ――――先ほどの≪プチボア≫の声はまさしく“泣き”声であり、仲間を呼ぶためのものだったんだと。
 それにより≪フレンジーボア≫が十匹ほどの群れとして現れ、さらにその後ろには≪フレンジーボア≫を一回り大きく上回るイノシシ、≪ヘビーボア≫も現れた。その目からAIにないはずの感情が読めた気がした。



 ブルゥゥゥ、グラァアッ!!!!
『うちの子になにしてんだ、ぁあっ!!!!』 


「・・・・・・え・・・・・・と、その・・・・・・あはは」


 苦笑いしながらすぐに立ち上がり、その群れに背を向けないように後ろにゆっくり後退する。

 が、


 グルゥ ブグゥラァァァァッ!!!!
『いてまえ、おまえらぁっ!!!!』

 ブルアアアァァァァ!!!!
『おおおおぉぉぉぉ!!!!』



「ご、ご、ごめんなさぁぁぁぁいっ!!!?」


 急いで身体を反転させ、全力で脚を動かし駆ける。


 いま少し現実に戻れていなかったが、冷静になればかなり危険な状態である。囲まれてしまえば自分のレベルでは瞬く間にHPを削られ、
 そして――――


「≪死≫・・・・・・!!!」


 考えたとたんに指や足先から徐々に身体の芯へと冷たいものが伝わり、凍りそうになる身体を全身を使って無理やり動かす。
 しかし相手は待ってくれず、だんだんと近づいてくるのを音で感じる。友達はどこへ行ったのか近くには全く見あたらず、出会えない。

 まさに絶体絶命である。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!!」


 走りながら、同時に頭の中には走馬灯のように様々な景色が流れていく。瞳には涙も溜まり、こぼれていく。


『死にたくない』


 その思いが身体を動かす。

 涙を拭い前を向いて踏み出す。と、


「・・・・・・あれ? てっ、きゃぁぁぁあぁぁっ!!??」


 道がなくなった。と思ったが坂になっていたようで、思わず足を踏み外して転んでしまう。その勢いは止まらず頭を抱えて転がり落ちる。
 そして止まった。いや止まってしまった。慌てて起き上がり後ろを確認する。

 が、


「あれ? ・・・・・・いない?」


 先ほどまでこちらを言葉通りに猪突猛進して追いかけてきたボアの群れが、見あたらなかった。
 いや、よく見れば坂の頂点で止まっている。追いかける気が無くなったのか、と一安心したけど、どうやら違ったみたいだ。
 顔を見ると、目を細め威嚇していた。しかしそれ以上前に進もうとせず、まるで見えない何かに阻まれているようだ。
 しばらくすると頭である≪ヘビーボア≫が森に引き返すと、周りの群れも引き返して行った。
 助かったと思ったが、それ以上に何故引き返したのかが気になった。


「何で? あ、もしかして安全エリアに入ったのかな?」


 けど、と辺りを見回す。そこは未だに森の中で、目印である銅像が無いのでまだダンジョンの中だろう。しかしモンスターの声や気配が全くせず、
 異常な場所としか言い様がなかった。





 と、そこでひときわまぶしい光を見つけた。晴れているとはいえここは巨大な木に囲まれた森の中。
 暗いということは無いが直接太陽の日が当たる場所は珍しいのだ。
 もしかしたら何かあるかもしれないと、どの道すぐには引き返せないので進んでみる。



「っと、わっ!?」



 その場所に着くとひときわ大きな風が吹き、私は思わず顔を覆う。風が治まると徐々に目を開いていく。





 するとそこには――――
















 サァァァ・・・




「・・・・・・」







 そこは今まで見てきたSAOの景色の中で、一番の衝撃を私に与えた。





 “花畑”だった。





 しかしただの“花畑”ではない。






 赤、青、黄、緑、オレンジ、紫、水色、ピンク、黄緑、etc、・・・・・







 全ての色をつぎ込んだんじゃないかという数多くの種類の花が咲いていた。



















 そしてその中央に見える色。











      ≪白≫











 様々な色がある中で私はこの≪白≫に吸い込まれるように魅せられていた。





 周りの花の色も見ているはずなのに、この≪白≫以外は認識していない。





 むしろ周りの様々な色の花自身がその≪白≫を見せようと飾っていた。






 太陽でさえその≪白≫を際立たせる要素に過ぎず、≪白≫に輝きを与える。




 導かれるようにその≪白≫に近づくとそこには―――――――




















「スゥ、スゥ・・・・・・」












 ≪白い≫髪をした少年が寝ていた。
























 これが私と≪彼≫初めての出会いであり、始まりだった




















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