くらしの明日:私の社会保障論 精神病棟から町に出る=大熊由紀子
毎日新聞 2012年12月14日 東京朝刊
「日本の精神病床は、人口あたり諸外国の3〜10倍と圧倒的に多く、海外から奇異の目でみられています。諸外国なら退院可能な人々が精神科病院への長期入院を余儀なくされ、認知症の人々が精神科病院に多数入院しているからです」。こんな文章で始まる質問状に、各党がどう答えるか。認知症になっても心を病んでも、住み慣れた土地で安心して暮らせる社会にしていくつもりがあるのかどうか。それが問われています。
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■ことば
◇政治とメディアと精神保健
精神保健改革の父、F・バザーリアは、イタリアのNHKにあたる放送局と協力し、精神科病院の現実を明るみに出した。トリエステ県知事のM・ザネッティは保守系のキリスト教民主党だったが、理論と実践を兼ね備えた社会主義者のバザーリアに県立精神科病院を任せた。ここがモデルとなり、78年に「脱精神科病院」を定めた法律が、極右を除く事実上の超党派で成立した。
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「くらしの明日」は毎週金曜日掲載。次回は湯浅誠さんです