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2012年12月19日(水)付

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補正予算―またも公共事業頼みか

衆院選での大勝を受けて連立政権を発足させる自民、公明両党が、大型の補正予算の編成で一致した。柱は公共事業の積み増しだ。総選挙の公約として、自民党は[記事全文]

猪瀬都政―老いる東京に備えを

東京都知事に選ばれた猪瀬直樹氏は、史上最多の434万票を集めた。人も街も年を取る巨大都市の暮らしが託される。衆院選と重なったこともあって、投票率も前回より少し上がった。[記事全文]

補正予算―またも公共事業頼みか

 衆院選での大勝を受けて連立政権を発足させる自民、公明両党が、大型の補正予算の編成で一致した。

 柱は公共事業の積み増しだ。

 総選挙の公約として、自民党は「国土強靱(きょうじん)化」を、公明党は「防災・減災ニューディール」を掲げていた。

 中央自動車道のトンネルで天井の崩落事故が起き、インフラの老朽化も問題になった。

 確かに重要な課題だ。高度成長期に集中的に建設した社会基盤が、次々と更新期を迎える。

 既存の施設を修繕する「長寿命化」でしのげるものはどれぐらいあるのか。一からの造り直しは、どの分野を優先するのか。人口減や財政難を踏まえ、工程表作りを急ぐ必要がある。

 ところが両党の議論では、こうした検討は置き去りにされ、「いくら増やすか」ばかりが先行している。景気のてこ入れには公共事業が手っ取り早い。そんな旧態依然とした発想だと言わざるをえない。

 わが国の財政悪化の一因は、公共事業を景気対策に使ってきたことだ。当初予算では財政再建を掲げて事業費を抑制しながら、短期間でバタバタと編成する補正予算で増やす手法がまかり通ってきた。残されたのは、必要性に疑問符がつく社会インフラと借金の山である。

 同じ過ちを繰り返さぬよう、自公両党に再考を求める。

 東日本大震災の復興予算をめぐっては、被災地以外へのバラマキが問題となった。被災地限定だった原案から対象を全国へ広げるにあたって、自公両党も民主党との3党協議で深くかかわった。国民の強い批判をもう忘れたのだろうか。

 両党が大型の補正予算編成を急ぐのは、14年4月からの消費増税も念頭にあろう。

 増税の可否を来年秋に最終判断する際、カギになるのは8月に発表される4〜6月期の経済成長率だ。予算成立から実際に資金が流れ出すまでのタイムラグを踏まえ、今回の補正予算に注目が集まる。

 しかし、増税できる環境を整えるために財政支出に頼るのでは本末転倒だ。補正が大規模になれば、剰余金や当初予算の使い残し分では財源が足らず、国債の追加発行を迫られる。財政規律はどこへ行ったのか。

 ましてや来夏の参院選を意識したバラマキなら論外だ。

 公共事業の積み増しで、景気は一定期間、押し上げられる。しかし、規制緩和などの活性化策を欠いたままでは長続きしない。これまでの数々の失敗を通して得た教訓である。

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猪瀬都政―老いる東京に備えを

 東京都知事に選ばれた猪瀬直樹氏は、史上最多の434万票を集めた。人も街も年を取る巨大都市の暮らしが託される。

 衆院選と重なったこともあって、投票率も前回より少し上がった。ただ、そのわりに論戦は盛り上がらなかった。

 主要候補の中で、きっぱり五輪招致に反対した人、原発推進を掲げた人はいなかった。経営難に陥った新銀行東京もすでに事業が縮小されている。いずれも大きな争点にならなかった。

 結局、13年続いた石原都政の継承にイエスかノーかがもっぱら争われた。

 猪瀬氏は副知事として石原慎太郎前知事を5年半支え、高齢化や首都直下地震への備えといった大きな課題を担ってきた。

 石原氏は高い人気の一方で、きわどい言動が物議を醸してもきた。それに比べると、猪瀬氏はより幅広い層が投票しやすかったのかもしれない。

 東京には、高度成長期に地方から働き手が集まった。

 繁栄を支えたその世代が年を取り、10年ほど後には都民の4人に1人が65歳以上という時代が来る。

 急ごしらえで広がった街も住民とともに年を取る。たとえば下水道は、20年後には全体の4割が耐用年数の50年を超える。

 都税収入は4年続けて減り、貯金にあたる基金の残高も4年前の半分に減る見通しだ。財政にかつてほど余裕がない中で街のつくりかえを迫られる。

 選挙戦のさなかに中央道でトンネル天井崩落事故が起きた。首都直下地震への備えも要る。猪瀬氏は街頭演説で「老朽インフラのつくりなおし、補強に取り組む」と訴えた。

 とりわけ難題は、使いはじめてから50年たつ首都高だ。道路のかけ替えなど大がかりな改修が避けられそうもなく、巨額の費用が見込まれる。

 いかに負担が小さく、現実的なプランを提案、実現するか。

 道路公団の民営化に携わった猪瀬氏はこの問題に詳しい。首都高会社の大株主である都のトップになった今、当事者としての実行力が問われる。

 電力の問題については、「古くなった東京湾岸の火力発電所を最新の天然ガス発電所にとりかえる」と強調した。民間の出資を募るという。

 「抽象的なシナリオでただ論争しているだけでは、現実的な対応はできない」。著書「解決する力」で猪瀬氏は、国のエネルギー戦略の議論を批判した。

 住民のための電力改革を実現するには、東京電力や企業と粘り強く交渉する力が要る。

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