中国では、不動産投資は富裕層の資産運用の主要な手段になっている。富裕層の不動産保有の増加により、住宅価格が上昇する一方である。また、すでに販売された不動産のうち、実際に住んでいない空室の割合は大都市では40%に上ると言われている。中国の不動産バブルはかなり危険な状態に陥っていると言ってよい。
中国経済と中国社会の実情を考えれば、もちろん不動産バブルをこのまま放置すべきではない。問題は、いかなる政策をもって不動産市場の発展をリードするかにある。
バブルを抑え込む対症療法の弊害
温家宝首相の考え方は、景気をある程度犠牲にしていても、不動産バブルをコントロールしなければならないということのようだ。
例えば、2戸目の不動産を購入する者に対して、その頭金の割合を高めに設定するという政策があった。目的は間違っていないが、手段は正しくない。
結局のところ、不動産バブルをコントロールする温家宝首相の強硬姿勢によって、土地を払い下げる地方自治体と不動産開発のデベロッパー、商業銀行は及び腰になり、主要都市で不動産取引が止まってしまった。その結果、鉄鋼、アルミ、セメントなどの建材産業および家具などの住宅関連産業はいずれも成長が減速するようになった。
本来ならば、不動産バブルをコントロールするためには金利を引き上げるなどの引き締め政策を実施すべきだった。また、不動産を大量に保有する富裕層に対して、固定資産税を課税すべきである。
しかし、実際のところ、金利はまったく調整されていない。住宅に対する固定資産税の課税も導入されていない。13億人の中国で土地資源が不足するのは明白である。値段の安いうちにたくさんの物件を保有すれば、いずれ住宅価格が大きく上昇するだろうと期待されているから、不動産市場はオーバーヒートしてしまう。
政権交代を機に再び成長軌道に?
反対に、2012年に入ってから景気が明らかに減速しているにもかかわらず、景気を刺激する金融緩和政策も実施されていない。7月と8月にそれぞれ1回ずつ利下げが実施されたが、景気が下げ止まらず、ついに第3四半期の経済成長率は政府が掲げる7.5%の成長目標を下回ってしまった。
7%台の成長ではとても中国経済が本領を発揮しているとは言えない。世界銀行が試算した中国の潜在成長率は8%台後半と言われている。上で述べた政策の失敗がなければ、中国経済は8%台の成長を持続することができると思われる。
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