政権交代・私はこう見る:中国・清華大学現代国際関係研究院、劉江永副院長
毎日新聞 2012年12月19日 東京朝刊
◇日中関係、改善の機会−−劉江永副院長(59)
政権交代は民主党に対する国民の失望の表れであり、風向きの変化による政治の大きな揺れを感じた。自民党の大勝といっても政権が安定するわけではなく、今後も変化が続く可能性がある。
憲法改正問題に関し、安倍晋三氏は参院選までは我慢するだろうが、参院でも3分の2以上の勢力を確保した場合にどう出るかだ。周辺国との摩擦を利用しながら集団的自衛権の行使容認に向けたムードづくりをする可能性もあり、そうなると平和憲法に基づいた日本の発展モデルが揺らぐことになる。近隣諸国は心配している。
ただ、日中関係に関しては別の一面もあると個人的には考えている。釣魚島(尖閣諸島の中国名)の国有化などで関係を悪化させたのは民主党政権であり、安倍氏には関係改善の機会がある。06年の首相就任後に「氷を砕く旅」として訪中し、戦略的互恵関係の構築で中国側と合意したのは彼であり、その精神と枠組みの中で対話を続けるべきだろう。
靖国神社参拝に関しては厳しく見守っていく必要がある。島の問題が解決しないまま、靖国に参拝すれば中国と日本の関係は危険な状況となる。中日間の「政冷経冷」は、米国にとっては政治的な、韓国にとっては経済的な恩恵があるが、日本にとっては景気回復が遅れ、国益に反するはずだ。参院選にも影響が及ぶだろう。米国との関係を固め、中国との関係を改善し、日本経済にとってよい環境をつくっていくことが安倍政権の使命だと思う。【聞き手・成沢健一】