国際エネルギー機関(IEA)は、米国が2017年までにサウジアラビアを抜いて世界最大の原油生産国になるとの見通しをまとめた。天然ガスの生産量も15年までにロシアを抜き最大となる。
シェールオイルやシェールガスと呼ぶ新型資源の生産が急増しているためだ。大資源国としての米国の台頭は、世界の原油やガス供給の構図を一変させつつある。日本はこの変化に向き合い、資源の安定調達に生かしていかなければならない。
米国は世界最大の石油・ガス消費国だ。原油は消費量の45%、天然ガスは1割弱を輸入している。35年までにこれが不要になり、輸出も可能になるという。日本は官民が協力し、米国からの輸入に道筋をつけることが重要だ。
日本の電力・ガス会社や商社が液化天然ガス(LNG)輸入に向けた準備を始めている。米国の割安なガスを使って生産するLNGを輸入できれば、調達費を3~4割下げられる可能性がある。
だが輸入には米政府の許可が必要だ。米国内には国内消費を優先すべきだとの反対意見もある。
こうした中で、米エネルギー省が「LNGの輸出拡大は米国の利益にかなう」とする報告書を公表した。報告書は委託を受けた専門機関がまとめた。米政府は来春にも輸出の可否を判断する。報告書はこれに前向きな影響を与えるものとして歓迎したい。日本政府は確実に輸入の許可を得られるよう働きかけを続けてもらいたい。
米国発の「シェール革命」は、日本がエネルギー資源の調達先を広げる好機でもある。米国が輸入を減らす分、原油・ガス生産国は需要が見込めるアジアへ輸出の軸足を移しつつあるからだ。
九州電力が今月、ロシア企業から購入したLNGは、ノルウェーから冬の北極海を通って運ばれてきた。北極海経由でのLNG輸送は初めてだ。地中海やインド洋を通る従来ルートに比べ、輸送の日数を大幅に短縮できるという。
ガボン産の原油やナイジェリア産のLNGなど、アフリカからの輸入も増えている。
日本では年間3兆円規模で発電向けの燃料費が増え、国富流出の原因になっている。調達先の多様化は売り手に価格を競わせ、契約条件の見直しを迫るためにも重要だ。シェール革命をてこにエネルギーの調達戦略を変えていく工夫が欠かせない。
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