サーカス(ハーゲンベック・サーカスの印象)
Circus(Impression of the Hagenbeg Circus)
1933(昭和8)年頃
木版、紙
woodcut on paper
1933(昭和8)年3月、ドイツからハーゲンベック・サーカス団が来日しました。団員ら総勢約150人、動物182頭。東京・芝浦をはじめ、名古屋、神戸、福岡など各地で公演し、圧倒的なスケールと、おそらくは日本人が初めて見る本格的な猛獣ショーで、当時の新聞は「開国以来の大騒ぎ」と伝えたそうです。
孝四郎はそんな賑わいを、アシカやゾウ、太鼓をたたく道化師、空中ブランコ、大きくしなる鞭など、いくつものモチーフをひとつの画面に詰め込んで版画にしました。
これは「モンタージュ」といわれる手法です。
当時、ダダからシュルレアリスムにいたる海外の芸術思潮が日本へもほぼ同時に紹介され、「新興芸術」と呼ばれていましたが、その中で写真や映画といった映像表現におけるモンタージュも盛んに取り上げられていました。画像を切り貼りして構成し、スピード感のある機械的な美や混沌とした幻想的な画面を生み出すこの表現は、当時もっとも先鋭的なものと捉えられていたのです。
孝四郎はそのような手法を木版画にも持ち込みました。もとより映像のもつ清新さと木版の持ち味は相反するものですが、ここでは木版独特の雰囲気を強調しながらひとつの画面にねじ伏せた感があります。現代感覚を取り入れた力作です。