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被災地と世界

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[Part1]海と魚の放射能汚染、国際調査で解明目指す

東京】 福島第一原発事故は太平洋の海水や魚にどのような影響を与えるのか。「過去にない海洋の放射能汚染」に対して、日米などの研究者による共同作業が続く。


11月半ば、米ウッズホール海洋研究所や東京大学大気海洋研究所などが「フクシマと海」と名付けた会合を東京で開催した。「放射能汚染がどの程度海に広がったか」「その情報を市民にどう伝えるか」といった課題について、日米を中心とした約90人の海洋研究者らが2日にわたって意見を交わした。最終日に市民に討論が公開されると200人近くが集まり、この問題への関心の高さをうかがわせた。

photo: Ken Kostel©Woods Hole
Oceanographic Institution

発端は、昨年の事故発生からまだ1週間たらずのころ。福島県沖の放射線や、魚への影響などを調べようと、ウッズホール海洋研究所の上席研究員ケン・ベッセラーらが各国の研究者に呼びかけた。ハワイ大学が船を提供。日米とスペインから参加した20人近くが、その年の6月初旬から2週間かけて調査を実施した。原発沖の30~600キロの海域で、水面から水深2000メートルまで30カ所以上の海水をサンプルとして採取。モナコ、スロバキアなども含む7カ国の16研究所に送って分析した。東京の会合は、この調査を受けて開かれた。


ベッセラーによると、一般的に海に出た放射性物質は流れに乗ってすぐに拡散し、海底へと沈んで行く。今回の調査で、その濃度は黒潮と親潮の複雑な流れと関係しており、潮の渦ができる海域では高くなることが分かったという。


調査に参加した東京大学大気海洋研究所助教の西川淳によると、海水中のセシウム134と137は、ともに最大濃度が1立方メートルあたり約3900ベクレル。その地点は原発近くではなく、南東沖合の沿岸性渦のできる場所だった。また、調査をした場所でのセシウムの濃度は、事故以前の10~1000倍だった。


ベッセラーは「魚の体内にセシウムがどのように蓄積されるか、研究は不十分だ。今後も監視を続ける必要がある」と指摘する。東京海洋大教授の神田穣太は2日間の研究者の議論をまとめ、「魚の種類によってセシウムの取り込みには差があり、海水中の放射性物質濃度が薄まっても、一部の魚からは今も規制値を超える値が検出されている」と話した。また、実験でセシウム134をカレイに与えたところ「稚魚では取り込みが早く多いが、成魚では取り込みが遅い」との結果も紹介した。


ベッセラーは「今回の事故は、一国で可能な研究の範囲を超えている。様々な国の研究機関が集まり、日本政府から独立した形で調査をすることは、日本の市民の期待にも添うはずだ」と話した。


(宮地ゆう)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)

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