韓国人は、北欧諸国の充実した社会保障や、それらの国で大きな社会的不平等が存在していないことに惹きつけられている。韓国社会では、平等主義を求める風潮が強い。そのため大多数の韓国人は、冷酷な米国の資本主義を、不道徳で受け入れがたいものとして感じている。
韓国人は、社会の分極化は韓国の大きな問題であると捉えている。統計によると、韓国では所得格差が十分に少ないものの、多くの韓国人は、社会プログラムを拡大しなければならないと考えている。驚くことに、左派だけでなく右派でさえも、社会支出の増加を強く支持している。それは説明がつく。最近まで韓国を「福祉国家」と考えるのは難しかった。社会支出はそれほど多くはなく、各家庭の負担額は大きかった。一方で、高齢化社会と核家族の増加により、古いモデルは発展性がなくなってしまった。
だが北欧の「社会福祉国家」モデルは、多くの長所もあるかわりに、大きなデメリットも持っている。韓国人はそれを理解することなく、このモデルにあまりにも期待しすぎているように思われる。「福祉国家」の主なデメリットは、極めて高い税金だ。もちろん、国が高齢者に年金を給付したり、大学に補助金を交付して授業料が無償となるのはいいことだ。だがそれらの資金はどこかから調達しなければならない。そして多くの場合、それらは納税者から集められる。また、社会プログラムや平等主義が経済成長を停滞させることも珍しくはない。まさにその原因によって欧州では最近10年間、政治家たちが社会プログラムの削減を目指している。
だが韓国の政治家らは、社会の完全な支持のもとで、北欧をモデルにした「福祉国家」の建設を始めようとしている。専門家らはすでに起こりうる問題について警告している。課税問題研究所の専門家たちによると、もし左派の野党が選挙公約を完全な形で実施した場合、韓国の政府債務のGDP比率は、2050年までに114・8パーセントに達する可能性がある。なお、右派が勝利した場合も、政府債務のGDP比率は102.6パーセント(現在のGDP比率は33パーセント)となり、それほど大きな差はない。しかしこれは楽観的な評価だ。中には政府債務のGDP比率が150パーセントに達すると考える悲観的な専門家たちもいる。これはギリシャや現在ユーロ圏で財政危機に陥っている国のレベルに近い。
危機を回避する唯一の方法は、税金の著しい引き上げだ。だが韓国人は高額な税に慣れていない。韓国の現在の平均所得税率は 14パーセント。国民はこれを標準的だと考えている。だが欧州の先進国の平均所得税率は25パーセント。韓国人が北欧レベルの社会保障を得たいならば、所得税を少なくとも2倍に引き上げなくてはならない。
一方で、北欧をモデルにした「福祉国家」への移行を破滅的だと主張するのも軽率だ。スウェーデン人は、所得税およそ50パーセントを負担しているが、不満を持っていないばかりでなく、自国のシステムを誇りに思っており、それを拒否する意向はない。
韓国人も時の経過と共に、高額な税ならびに比較的ゆっくりとした経済成長を、安定した社会のために受け入れる可能性も除外できない。だが、最初から全てに対して支払う覚悟を持つ必要がある。