'12/12/15
投票所減で高齢者に負担 締め切り繰り上げ、投票率影響の懸念も
衆院選で、島根県内の投票所が減少を続けている。投開票を16日に控えた今回は、2009年の前回より178カ所(20・3%)減の698カ所となった。市町村選管は業務の効率化を理由に挙げるが、高齢化率が秋田に次いで全国2位の県で、有権者の自宅から投票所までの距離は遠くなった。前回衆院選まで14回連続で全国1位の投票率の低下も懸念される。
日本海を臨む松江市美保関町の雲津地区。「投票したくてもできない近所のお年寄りが多い」。主婦石倉由美子さん(77)は話す。今回、有権者119人の同地区の投票所は2キロ離れた諸喰(もろくい)地区の投票所に統合された。
対策として市選管は、雲津地区を含む周辺17地区に13日か14日の1〜2時間、臨時の期日前投票所を開設。13日の雲津地区では約4割の48人が訪れた。
「役所の都合で投票を強いられるのは不満。当日まで考えたい人も多いはず」。同町法田(ほうだ)地区で投票した寺本陽一さん(71)は漏らした。
投票所数は前回選と比べ全19市町村のうち5市2町で減った。減少数は雲南市65▽松江市37▽浜田市26▽奥出雲町26▽邑南町15▽益田市7▽安来市2―と続く。
加えて、今回は全投票所の約8割の568カ所で投票締め切り時間を4〜1時間繰り上げる。対象は選挙人名簿登録者の51・4%と初めて5割を超えた。
背景には、職員削減の影響で人手を抑えたい選管側の事情に加え、国政選挙の費用を負担する国が、選挙経費の削減を検討していることも影を落とす。
国は人件費など投開票所の運営経費(10万〜90万円台)を10〜15%削減する改正法案を2度国会に提出しており「次期国会にも提出する」(総務省)意向。来夏の参院選から適用される可能性もある。「これ以上削れない所まで削り、国の方針に備えた」(松江市選管)との声も聞かれる。
島根大法文学部の毎熊浩一教授(行政学)は「効率化は必要」とした上で「選挙は民主主義の維持に必要なコスト。有権者に負担を強いることなく、全員が公平に投票できる環境を整えることが重要」と指摘する。(樋口浩二、川上裕)
【写真説明】1日だけの臨時投票所で期日前投票をするお年寄り(13日、松江市美保関町)