笹子トンネルの天井崩落事故の原因は?

 

 

古さで傷み、検査も不十分だった可能性

澄川卓也記者 朝日新聞社会部

 

 ジャン 高速道路のトンネルで天井が落ちる大事故があったね。
 澄川記者 東京と名古屋を結ぶ中央自動車道の山梨県にある「笹子トンネル」上り線(東京方面行き)で今月2日、天井に張ったコンクリート製の板(天井板)が次々にくずれ落ちた。車3台が下敷きになり、9人も亡くなったんだ。
 ケン こわい事故だよ。
 澄川記者 高速道路のトンネルで天井落下による死亡事故は初めてだ。上り線は復旧のめどが立っていない。下り線を対面通行にして年内に通れるように工事しているよ。


 

 

 

コンクリートの天井板が落ちた現場で捜索活動する消防隊員=3日午前2時10分ごろ、山梨県の中央自動車道笹子トンネル上り線で、大月市消防本部提供

 

 

 

 

 

 ――路面から約4.7メートルの高さに天井板がしきつめられていた。空間を上下に仕切り、上の空間に車の排ガスを換気する空気の通り道をつくる役目がある。トンネルの一番高い所から金具(つり金具)でつり下げる「つり天井」という構造だった。一枚の重さは約1トン、厚さ約10センチ。この天井板など約330枚(約360トン)が、約150メートルにわたって道路の中央へ「V字形」に落ちた。


 ジャン 固定されていなかったの?


 ――つり金具とトンネルの最も高い部分とはボルト(ねじ)と接着剤で固定されているが、現場に複数のボルトが抜け落ちていた。となり合う天井板は溶接され、つり金具とともに天井の構造が一体になっている。この構造が災いし、あるボルトの落下を引き金に、つり金具と天井板が落ち、となりの金具にその重さが加わって次々と落下したようだ。


 ケン なんでボルトは抜けたんだろう。


 ――笹子は35年前の開通以来、ボルトを一度も交換しておらず、古くなり傷んでいたことが考えられる。それだけじゃない。高速道路会社の一つで、笹子を管理する中日本高速道路は5年から10年に1回、トンネルをくわしく点検する。ボルトは、ハンマーでたたいた音で傷みの状態を調べる「打音検査」をするのが普通だが、10年あまり前にしただけで、今年9月の点検でも目で確認しただけで済ませていた。


 ポン どうして?


 ――ほかのトンネルでは打音検査を実施していた。笹子は天井板からトンネル最上部までが高いところで5メートルと、ほかのトンネルより高い構造で、はしごをかける手間やお金がかかるために検査がおそまつになった可能性がある。山梨県の警察が中日本高速道路の管理に問題がなかったか捜査している。高速道路会社を監督する国土交通省も専門家による調査委員会を立ち上げ、原因解明を進めているんだ。


 ジャン ほかにも同じ構造のトンネルがあるの?


 ――ここをふくめ全国48か所に61本ある。国土交通省が事故後、つり天井の緊急点検を指示したところ、15本で不具合が見つかった。事故が起きていない笹子の下り線ではボルトのゆるみなどが計670か所もあった。東京を走る首都高速道路では、開通から48年たつ羽田トンネルの天井板を予定を早めて撤去することにした。


 ケン そうなんだ。


 ――国土交通省によると、高速道路会社の大手3社の分だけで、開通後30年以上たつ区間は四割の約3200キロもある。橋なども同じで、これから経験したことがないような傷みが出てくる可能性があるんだ。


 ポン 安全管理をしっかりしてほしいよ。


 ――国や都道府県の財布は豊かではないので、危険性が高く使う人が多いものを優先して修理したり、点検する人や技術を確保したりすることが必要だ。
 国の政治は道路や施設をつくることが優先され、点検や修理が後回しにされがちだった。明日の衆議院議員選挙で選ばれる政治家に目配りしてほしいテーマだね。


過去の記事↓

◆笹子トンネルの天井崩落事故の原因は?(2012年12月15日)

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2012年12月15日付

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