社説[自民大勝・政権奪還]浮かれず懸念払拭せよ

2012年12月17日 09時21分
(29時間49分前に更新)

 民主党にすさまじい逆風が吹き荒れた。元首相や現職閣僚など党の大物議員が軒並み小選挙区で落選し、100議席にも届かない大惨敗を喫した。

 第46回衆院選は16日、投開票され、自民党が単独で「絶対安定多数」(269議席)を上回る議席を獲得し、政権を奪い返した。「絶対安定多数」を獲得すると、国会の常任委員長をすべて独占し、委員も過半数を占めることが可能となる。

 2009年衆院選で民主党が政権交代を実現してから3年3カ月。政治主導は道半ばで挫折し、マニフェスト(政権公約)も総崩れ。社会保障改革を先送りし、公約にない消費増税を強行し党分裂を招いたのだから、このような結果がでることは選挙前からはっきりしていた。

 政権与党が政権運営に失敗したり有権者の期待を裏切ったりすれば、次の国政選挙でお灸(きゅう)をすえる。それが議会制民主主義の鉄則だ。

 民主党は負けるべくして負けたのである。野田佳彦首相が民主党代表を辞任する意向を表明したのは当然だ。

 ただ、選挙期間中、自民党に強烈な追い風が吹いたとは言い難い。自民党に積極的な支持を与えたというよりも、民主党に代わって政権を担う受け皿がほかになかったというべきだろう。

 政党乱立にもかかわらず全国の選挙区で、「投票したい人が見当たらない」との戸惑いの声が相次いだ。その結果、午後11時現在の推定最終投票率は59・52%で、前回の69・28%を大幅に下回った。

 離合集散を繰り返す政党や政治家の節操のなさ、12政党の乱立、政策のわかりにくさ。政党乱立で選択肢が広がったのではなく、選択困難な状況が生まれたのである。

 要するに有権者は、選挙をめぐる政治状況に希望を託すことができず、嫌気がさしたのだ。

 今度の選挙は、最高裁判決で「違憲状態」と指摘された一票の格差が、解消されないまま実施された。それもまた有権者の棄権を招く一因になったのではないか。検証が必要だ。

 選挙期間中、経済・金融対策、消費増税、社会保障、原発、外交・安全保障などの政策論議は深まらなかった。政権奪還確実という情勢になっても高揚感が伝わってこなかったのは、国民の将来不安が解消されなかったからである。

 安倍自民党は、憲法改正による国防軍創設や集団的自衛権の行使を認めることを公約に掲げた。国民生活に直接かかわる課題を後回しにして「イデオロギー過多」の政権運営をするのであれば、しっぺ返しを食らうことになるだろう。懸念を払拭(ふっしょく)する「ブレーキ役」を公明党に期待したい。

 自公連立政権が誕生しても、衆参の「ねじれ」は解消されない。参院では、88人を擁する民主党が第一党で、自民、公明を合わせても過半数に達しないからだ。

 新たな政権に何よりもまず求められるのは「政治への信頼回復」である。新政権には、少数野党の声にも耳を傾ける謙虚な政権運営を要望したい。

 沖縄選挙区は、1区自民新人・国場幸之助氏、2区社民・照屋寛徳氏、3区自民新人・比嘉奈津美氏、4区自民・西銘恒三郎氏が当選した。

 県内の投票率は前回の64・95%から56・02%に落ち込み、過去最低となった。なぜか。

 県内の投票率低下は、民主党に裏切られた上に、自民党が政権に復帰しても基地問題の解決が見込めない、という閉そく状況を反映したものだ。過去最低の投票率そのものが、基地問題に対する「批判的意志の表れ」だと見ることもできる。

 自公政権が成立した場合、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題やオスプレイの強行配備問題がこれまで以上に厳しくなるのは確実だ。

 小選挙区、比例区で当選した議員は、選挙公約の実現のため、「オール沖縄の民意」を携え、歩調を合わせて新政権との交渉を進めてもらいたい。新議員の果たすべき役割はこれまで以上に重い。「結束こそ力」だということを肝に銘じてほしい。

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