16日投開票の第46回衆院選は、自民党が7年前の郵政選挙並みの294議席、民主党は壊滅的な57議席に終わった。県内も全国の結果に呼応し、自民党が4小選挙区独占を回復する一方、民主党はゼロに沈み比例四国ブロックでの復活もならなかった。一方で、日本維新の会は2人が比例で復活当選した。取材記者が選挙戦を総括した。(敬称略、構成・東京支社 山根健一)
【二大政党 民主 逆風と準備不足】
◆小選挙区導入後、自民は前回2009年選挙で1敗し初めて独占を逃したが、今回は全選挙区で勝利した。◆
西山秀和(政治経済部) 有権者の自民への支持がどこまで積極的だったかは不明だ。民主や維新に比べ「相対的に」支持されたということではないか。消去法かもしれない。
加藤太啓(同) 自民前職の一人が「首相野田佳彦がまっとうな政治家なら年内選挙は十二分にあり得る」と準備万端だったのに対し、選挙時期で主導権を握れたはずの民主陣営の方がどたばただった。
西山 自民と公明の協力では公明が最終盤、自民候補の事務所に臨時増設した電話で自民名簿を基に「比例は公明」と呼び掛けた。10年間の連立実績がなせる業かもしれないが、異例だった。
◆マニフェスト(政権公約)で掲げた目玉政策後退などで民主は攻撃を受けた。◆
加藤 「マニフェスト違反などでどれだけ頭を下げて謝罪しても、さらに強い罵声を浴びせられた」と弱り切っていた陣営もあった。「決まらない政治」へのいら立ちや憤りが向けられたと思う。
門田龍二(東宇和支局) 西予で民主前職高橋英行はこまめに回っている印象があった。得票が伸びなかったのは、それほど党への風当たりが強かったのだろう。
【維新 知事肩入れ 県政波紋】
◆第三極で最大の注目は日本維新の会。1区では、知事中村時広が維新新人を強力に支援した。◆
西山 中村と松山市長野志克仁は1区の維新池本俊英に肩入れし、このことに自民は「権力対民主主義の戦い」と敵意をむき出しにしていた。自民が最大与党の県政で、中村と自民の関係が元に戻るかは微妙ではないか。
森田康裕(社会部) 1区の自民前職塩崎恭久の報告会場で来賓の県参与、松山市副市長が紹介された時、「え〜」「おいおい」とあからさまに不満の声が上がった。トップ同士はともかく、現場ではノーサイドとは到底言えない状況だ。
加藤 中村は2〜4区で維新にノータッチだったが、1区池本を支援したことで、有権者は他選挙区でも中村が維新を推しているととらえた人も多かったようだ。
中藤玲(社会部) 2区の首長にとって自民前職村上誠一郎か維新新人西岡新かは悩ましい選択だったが、結果的に全首長が村上を支援。ある首長は双方への配慮から「選挙区は村上、西岡は比例復活で顔が立つ」と話していたが、その通りになった。
清家俊生(同) 池本は最低でも比例に滑り込みたかった。松山維新の会は結成以来、飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、今回の池本出馬で基本理念の「国政自由」が有名無実化した。池本の得票も伸びず「神話崩壊」とみる向きは多い。
武田泰和(同) 松山市議会運営で、最大会派松山維新の会長田坂信一は「(第2会派の)公明にはこれまで以上に(議案などの)説明をして協力を求めたい」と話していた。
西山 県議会でも愛媛維新の会には9〜10月、自民からの合流が2人続いたが、消沈ムードだ。また、1〜3区の維新はあまりにも準備不足。国政に挑戦するのなら、じっくりと地域を回ってほしい。
【政策論争 原発棚上げ批判合戦】
◆与野党の批判合戦が目立ったが、政策論争はどうだったか。◆
加藤 消費税増税、原発、環太平洋連携協定(TPP)などの重要課題が問われたが、今後どうなるのか全く見えない。伊方原発のある4区でさえ、一部の候補を除いて取り上げることはほとんどなかった。特に原発問題は賛否が分かれるだけに、候補は尻込みしたという印象だ。
稲田健太(八幡浜支社) 八幡浜が地盤の民主高橋は、伊方原発に関して「雇用がなくなり地域が疲弊している。現状を伝える国会議員が必要だ」と訴える場面が目立った。原発がある地域の候補として、もっと具体的に地域経済をどう活性化させるか、エネルギー政策をどう展開させるかを語ってほしかった。
小田良輔(同) 山本と桜内が今後、原発再稼働の是非やエネルギー問題についてどのような主張をしていくか注目したい。
西山 大きな国家観、国民生活の在り方をもっと聞きたかった。論戦はこぢんまりしていた。
加藤 目についたのは批判合戦。来援した党幹部らも含めてライバル陣営をどれだけけなすかに力を入れていた感があったのは非常に残念だった。積極的に支持しようとする候補や政党を見つけられた有権者がどれだけいただろうか。
【選挙区 自民の組織力衰えも】
◆4区ではみんなの党、参院からくら替えした維新新人桜内文城が比例で復活した。◆
高橋圭太(宇和島支社) 本人が「維新の風はなかった。むしろ逆風だった」と話していたのが印象的だったが、参院任期を残し維新からのくら替え出馬に批判的な有権者も多かったのに、前回より投票率が下がった中で6500票余りも伸ばしたのは、追い風があったといえるのではないか。
白川英樹(南宇和支局) 愛南町では桜内と自民前職山本公一の得票は互角だったが、自民の組織力の衰えが目についた。選挙戦中盤、街頭演説に集まった聴衆の数の差から、桜内と山本との勢いの差を感じた。終盤以降は「ここまで締め付けがあるのは初めて」(漁業関係者)という自民の巻き返しがあった。
◆2区では自民前職が県内最多の9選を決めた。◆
白川亜子(今治支社) 自民村上は今回、地元関係で「高齢者に特化したまちづくり・サンタモニカ構想」を打ち出した。出陣式などには自民議員、地元有力企業関係者らが駆けつけ、終始安定した選挙戦。ただ、地元入りが少ないことに批判が多い。
竹下世成(社会部) 村上陣営は民主に追い風が吹いた前回選挙で失った票を取り返そうと動いたが、過去の得票実績と比べると、勝ったものの票が戻ってきたとは言い難い。
江頭謙(伯方支局) 西岡と日本未来の党新人友近聡朗は地盤のない島しょ部で選挙戦の難しさを感じていたようだ。
雲出浩二(上浮穴支局) 未来小沢一郎が久万高原町に来たが、影響は限定的との声が多かった。「新党乱立で、主義主張が分かりにくかった」との指摘もあった。
◆民主は前回唯一勝った3区を落とした。◆
秀野太俊(新居浜支社) 新居浜市では無投票で新市長が生まれたばかり。自民新人白石徹陣営の中心メンバーが市長選でのまとまりをつくったこともあり、態勢づくりなどにプラスに働いた。
河野茜(同) 白石徹の街頭演説には数百人単位で聴衆が集まり、首相経験者ら弁士に握手を求める人が殺到した。対照的に、民主前職白石洋一に知名度の高い党幹部が来ても盛り上がりに欠けた。
本橋隆太(宇摩支社) 旧市町村ごとに党支部があり支持基盤が比較的強固な白石徹と、基盤が弱い他候補との組織力の違いは明らかだった。
清家香奈恵(同) 白石洋一はミニ集会や街頭演説で地道に3年間の実績を訴えた。ただ「現職なら3年間で四国中央市に強い後援会をつくることもできたのにしなかった」と甘さを指摘する声も出ていた。
和泉太(政治経済部) 公職選挙法はインターネットの選挙運動への使用を禁じているが、交流サイト「フェイスブック」に街宣映像をアップする事例があった。誤解を招く行為は控えるべきだが、ネット利用は有権者の利益最優先に与野党で協議すべきだろう。
公示 | 12月4日(火) |
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投開票 | 12月16日(日) |