発信箱:ヒミツの原発「格付け」=青野由利

毎日新聞 2012年12月14日 東京朝刊

 広報活動やメディア対応は基本的にしないと聞いた。ウェブ上の記述もそっけないが、その活動が気になる。アトランタに本部を置く米国の「原子力発電運転協会(INPO)」だ。

 79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに電力業界が作った。訓練や企業間の情報交換に加え、安全性向上のために全米の原発の「格付け」を行ってきた。専門家や関係機関によれば、2年に1回程度、数週間かけて現地調査する。対象は設備や訓練、管理の状況など。評価は最優良の「1」から最低の「5」まで5段階。結果は経営者に直接伝える。外部にはヒミツだという。

 なんだかそれでは効力がなさそうに思えるが、押さえがあった。この評価が原発損害保険の料率に反映されるのだ。スリーマイル島事故以降に取り入れられた仕組みで、低ランクなのに放置すれば、保険料が膨れ上がり、経営が危うい。

 日本では今、原発の活断層調査が進む。敦賀原発の「クロ判定」は、新たな規制に向けた第一歩だ。「会社の経営に影響のない範囲で規制する」というあしき「常識」とは決別したい。

 ただ、原発政策を考える時には、活断層に白黒つけるだけではすまない。運転年数や事故時の地域への影響、組織の体質まで含めて原発のリスクを相対的に評価し、「格付け」する。それを元に原発脱却の道筋を作る。「原発推進」を掲げるのでない限り、考えなくてはならない手続きだ。

 福島の事故を経て、INPOのような格付けが世界に広がるかもしれない。その時、日本の原発のランキングはどうなるか。「ヒミツ」と言われても、こればかりは知りたい。(論説室)

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