社説:衆院選 自民圧勝 謙虚に政治の安定を
毎日新聞 2012年12月17日 03時25分
安定した、着実な政治を望む民意の表れだろう。衆院選が投開票され自民党が単独過半数を大きく上回る議席を得て圧勝、公明党とともに09年の惨敗以来約3年ぶりの政権返り咲きが決まった。民主党は壊滅的惨敗を喫した。
政治の変化を実感させるどころか迷走に終始した民主党政権に失望し、第三極にもかじ取りを委ねきれない中で有権者は自民党に回帰した。「風なき圧勝」を首相となる安倍晋三総裁は謙虚に受け止めるべきだ。衆院で得た多数におごらず、ねじれ国会の合意形成に努め、政治の混乱を終結させることが新政権の責務である。
師走の空の下、民主党に吹いた逆風は容赦なかった。一時は第三極に吹くかに見えた追い風も限定的だった。低投票率が象徴するように12党の候補が乱立する中の悩み深い選択は結局、自民党に傾いた。「郵政選挙」(05年)の自民や「政権交代選挙」(09年)の民主に匹敵する圧勝である。
政権交代から3年、現職閣僚の多くが枕を並べて小選挙区で討ち死にし、岩盤が崩れるような惨敗が民主党に与えた衝撃は郵政選挙以上だろう。有権者がこれほど明確に「ノー」を突きつけたのは歴代3首相の下で政治を変える期待が裏切られ続けた怒りにも似た感情に尽きよう。
財源の裏付けを欠く09年マニフェストは実質破綻し、政治主導は極端な官僚排除から官僚への依存に変質した。ねじれ国会で政治が停滞、近隣諸国との関係も危機的水準に悪化した。東日本大震災後も内紛とお粗末な閣僚交代を繰り返す姿に有権者は政権担当能力への疑念を抱いたに違いない。
◇「風」なき回帰現象
野田佳彦首相が消費増税に取り組んだのは危機的な財政に照らせば正しい選択だった。だが、目指す社会保障のビジョンや社会像までは語れなかった。首相は代表辞任を表明した。政権交代以来党が目的を喪失している状況が根底にあり、再建は容易ではあるまい。
2大政党に対抗し「変化」を訴えた第三極勢も旋風を起こすまでに至らなかった。日本維新の会は確かに大きく勢力を伸ばしたが石原慎太郎代表との合流に橋下徹氏が踏み切り、逆に党の方向がわかりにくくなった。
争点だったエネルギー政策で日本未来の党など「原発ゼロ」を掲げる諸政党も納得いく工程を示したとは言い難い。民主党離党組の新党への駆け込みはご都合主義を印象づけた。
そんな中、変化より回帰を強調し、政党の離合集散と一線を画した自民党に有権者は派閥など古い体質の温存を感じつつも、政党として「よりまし」と安心感を抱いたのかもしれない。