第46回衆院選は自民党が公明党とあわせ、総定数の3分の2である320を上回る議席を獲得、地滑り的な勝利を収めた。民主党は解散前勢力を激減させ、歴史的な敗北を喫した。
26日に召集予定の特別国会で安倍晋三自民党総裁が第96代の首相に選出されて再び自公連立政権が発足、3年3カ月に及んだ民主党政権に終止符が打たれる。
民主の失敗に懲罰投票
二大政党下で政権運営に失敗すれば、他党に政権が移る政党政治のかたちが一応できあがった。ただ、投票率が前回(69.28%)よりも大幅に下回ったのは、失敗した政治への有権者の不信のあらわれといえる。
今回の衆院選を一言でいえば、自民党が大勝したというより、民主党が惨敗した選挙だった。有権者が民主党にノーを突きつけた背景には、いくつもの理由がある。
第1は、2009年の前回衆院選のマニフェスト(政権公約)を達成できなかったことだ。
子ども手当をはじめとする目玉政策がことごとく暗礁に乗り上げた。見通しの甘さに加えリーマン・ショック後の税収の落ち込みもあって財源を確保できなかった。
逆に、マニフェストに盛り込んでいなかった消費税引き上げについて民自公3党合意で法案を成立させたが、これに反発する小沢一郎氏らのグループが離党するなど、政策の遂行や党運営をめぐって内紛が絶えなかったのも有権者の民主離れの第2の理由だ。
第3は、統治能力の欠如である。鳩山由紀夫元首相が沖縄の米軍普天間基地の移設で「最低でも県外」と約束、その後、軌道修正するなど発言が迷走し、米側の不信も招いた。菅直人前首相も東日本大震災への対応で官僚組織との関係がギクシャクするなど、政権をうまく運営できなかった。
今回の有権者の投票行動は、民主党政権への業績評価投票だったが、もっと厳しい「懲罰投票」だったといえる。党内の合意形成ができず、政治主導の掛け声倒れで官僚機構を使えず、外交もうまくいかず、未熟さをみせつけ安定性を欠いた民主党政権に不合格点がついたのは当然だ。
前回衆院選での308議席から5分の1以下の勢力になった民主党だが、選挙に向けて離党者が相次ぎ、多くの落選議員を出したことはむしろ再出発への好機だ。選挙のために非自民の一点で集まっていたのを転換、理念を共有する政党に脱皮すべきだ。この失敗を教訓に再起を期してほしい。
それでは、政権に復帰する自民党が有権者から高い評価を得たかというと、決してそうではない。政党乱立の中での消極的な選択で議席を大きく伸ばしたことを自覚すべきだ。
野合批判を招いた日本維新の会と、政党の看板替えとの印象を与えた日本未来の党が、にわか仕立てで、さらに民主党の自滅もあり、行き場に困った有権者が自民党に雨宿りした面があった。
民主党・第三極の候補者がしのぎを削り、自民党が漁夫の利を占めた選挙区が多数あったのも自民党に実力以上の議席を与えた。
制度上の問題として、わずかの得票差が大きな獲得議席差につながる小選挙区選挙の特徴がある。05年の郵政選挙、09年の政権交代選挙と同じ結果で、選挙制度の見直し論議に火がつくのは必至だ。
安定への決戦は参院選
社会的な背景として、尖閣諸島や竹島の領有権をめぐる中国、韓国との対立が保守的な雰囲気をもたらし、それが自民党を利する結果につながった。
内外の課題を速やかに解決していくため、安倍総裁は強力な内閣と党の体制をつくる必要がある。
参院では自公で過半数に届かない中、衆院で3分の2を確保し、参院が法案を否決しても衆院での再可決で成立が可能になるとしても、むずかしい国会運営がつづく。来年4月に任期切れとなる日銀総裁など国会同意人事は衆参両院での承認がそれぞれ必要になる。
自公両党は課題ごとに他党の協力を求めていく方針だが、消費増税でできた自公民の枠組みを生かしながら、案件処理にあたることも求められるだろう。
自民党が政権公約通りに「日本を、取り戻す。」には、決戦となる夏の参院選を経て、どのように衆参両院を通じた多数派を形成するかがカギだ。今の日本に何よりも必要なのは政治の安定である。
「決められない政治」から早く抜け出さないと、政党政治だけでなく国家の将来そのものが危うくなっていることを、新選良たちは肝に銘じるべきだ。
小沢一郎、安倍晋三、鳩山由紀夫、菅直人、自民党、民主党、日銀
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