現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年12月18日(火)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

惨敗民主党―「責任野党」の姿見せよ

政権を担うということが、いかに難しく、厳しいものか。総選挙で衝撃的な惨敗を喫した民主党は、そのことを身をもって学んだに違いない。衆院に小選挙区比例[記事全文]

維新の会―政策の基本軸を明確に

既成政党ではなく、新しい勢力が閉塞(へいそく)状況に風穴を開けてほしい。そんな期待の受け皿にもなったのだろう。日本維新の会が54議席を獲得し、民主と並ぶ勢力に浮上した。[記事全文]

惨敗民主党―「責任野党」の姿見せよ

 政権を担うということが、いかに難しく、厳しいものか。

 総選挙で衝撃的な惨敗を喫した民主党は、そのことを身をもって学んだに違いない。

 衆院に小選挙区比例代表並立制が導入されて18年。6度目の総選挙の結果は、想定されていた二大政党制の姿とはほど遠い「自民党一人勝ち」の様相となった。

 それでも、野党第1党にふみとどまった民主党の役割はいぜん大きい。

 包括的な政策の体系と全国規模の組織をもち、政権がつまずけばいつでも交代する用意がある。そんな野党の存在が、民主主義には欠かせないからだ。

 落胆している暇はない。この3年間の教訓をふまえ、民主党はみずからの政策と組織を根本から鍛え直してほしい。

 振り返れば、あまりにも未熟だった。

 ことあるごとに党内で内紛が起き、分裂を繰り返す。「ムダの排除などで16.8兆円の新規財源を生み出す」などといった無責任なマニフェストがまかり通る。

 今回の惨敗は、そうした民主党政権に対する民意の「懲罰」の意味合いが濃い。

 一方で、将来世代への責任を果たそうとしたことが、少なくとも二つあった。

 消費増税をふくむ社会保障と税の一体改革と、「2030年代の原発ゼロ」である。

 09年総選挙で、民主党は「増税の前にやるべきことがある」として消費増税を否定した。

 それは、将来世代にツケを回すことにほかならない。それに気付いたからこその増税への転換だったのではないか。

 注目したいのは、今回の総選挙のマニフェストに「将来世代の声なき声に耳を傾ける」という理念を新たに掲げたことだ。

 来夏の参院選に向け、党をあげてこの理念を具体的な政策の体系にまとめてはどうか。

 所属議員は激減した。だがその分、一体感のある議論がしやすくなったとも言える。

 有権者の耳に痛い政策を、いかに説得力をもって打ち出すか。政権を担った経験をそこに生かしてほしい。

 もう一つ、求めたいのは建設的な「責任野党」の姿を今度こそ見せることだ。

 政権が行き過ぎるようなことがあれば、ブレーキ役を果たすのは当然のことだ。同時に、協力すべきは協力する。

 やられたらやり返す。そんな不毛な政治の混迷を乗り越えることは、民主党が政権に復帰したときに必ず生きる。

検索フォーム

維新の会―政策の基本軸を明確に

 既成政党ではなく、新しい勢力が閉塞(へいそく)状況に風穴を開けてほしい。そんな期待の受け皿にもなったのだろう。日本維新の会が54議席を獲得し、民主と並ぶ勢力に浮上した。

 国政の一端を担うことになった以上、その責任は重い。維新が抱える課題を見つめ直したうえで、先に進むべきだろう。

 党内には旧太陽系と維新系の間で不一致が目立つ。代表代行の橋下徹大阪市長は、首相指名投票で「自公政権に乗る」と述べたが、代表の石原慎太郎氏は直後に「論外だ」と否定した。結局、石原代表を推すことになったが、早くも「双頭体制」の弊があらわになった。

 強い個性の2人のどちらが実質的に党を引っ張るのか。市長兼務の橋下氏は「二足のわらじ」で指揮できるのか。まずは司令塔の発言を、責任あるものにしなければならない。

 何をめざす政党なのか、軸足を定めることも急務だろう。

 国と地方の役割を見直し、道州制をめざす。既得権益と戦い、脱原発依存を進める――。こうした結党時の基本軸は太陽との合流で弱まった。今は石原代表が核武装シミュレーションに言及するなど、国家主義的なタカ派の印象さえ強い。

 選挙前、脱原発や環太平洋経済連携協定(TPP)で姿勢がぶれるなど、主張にあいまいさを残しているのも事実だ。大阪では強かったが全国的には票が伸びなかったのも、選挙戦略を優先させて、政策固めを棚上げしたことに、有権者が冷めた目を向けた結果ではないか。党の目標を整理し直すべきだ。

 その際、地域政党の原点に立ち返ってはどうか。

 二重行政のむだをなくし、権限と財源の配分法や地方の役割を根本から考え直す。こうした大阪都構想のねらいを成果として見せてこそ、「大阪の改革を全国へ広げる」という当初からのスローガンが説得力をもつ。

 大阪では都構想に向けた2015年春の新制度移行へ、区割り案の検討が始まったばかりだ。改正が必要な関連法案も多い。国政進出を生かし、改革の歩みを速める戦略がいる。

 「中央集権の打破」に加え、「公共工事拡大路線とは異なる経済成長」も選挙戦で訴えた。安倍政権に対し、維新は与党でも野党でもなく、是々非々でのぞむというが、有権者に約束した以上、行動で示すべきだ。

 維新は来年の参院選でも全国で候補者を擁立する方針だ。これからの評価は、選挙向けの目立つ言説ではなく、文字通り、実績次第である。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介

アンケート・特典情報