高輝度光科学研究センターの湯本博勝研究員らの研究チームは、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」(兵庫県佐用郡)で、世界で最高強度のX線レーザーを実現した。XFELを集光する光学素子を開発し、ビームサイズをマイクロスケール(マイクロは100万分の1)に絞って強度を4万倍にした。たんぱく質1分子の構造を瞬時に捉えられる超高分解能顕微鏡の実現につながるという。
今回達成した強度は、これまで最高強度を誇っていた米国のXFEL施設の1・5倍。原子レベルで凹凸を制御した集光鏡を開発し、1マイクロメートルのビームサイズを実現した。集光鏡の材料は石英ガラスで表面をカーボンで覆ったもの。集光鏡は1年前に設置されており、すでに単細胞生物や複合たんぱく質を対象にした研究が行われている。
今後、1分子サイズの現象を捉えられるようにするために、さらに集光してビームをナノサイズ(ナノは10億分の1)にする研究を進める。
XFELは強度が大きく、虫眼鏡のような屈折レンズでは破壊されてしまう。XFELに当たっても安定して集光できる光学素子が求められていた。