江戸時代に紀州3大陶窯の一つに数えられた瑞芝焼(ずいしやき)の継承者で6代目の阪上重次郎さんが有用微生物として知られるEM菌を練り込んだ陶製のアクセサリー作りを試みている。阪上さんは「生きたまま菌を閉じ込めた身体にいいアクセサリーをめざします」と話している。
江戸時代に紀州藩の10代藩主徳川治宝が岡崎屋阪上重次郎に徳川家のご用窯として緑色青磁を焼かせたことに始まる瑞芝焼。美しい緑色が特徴で、浮き彫りと線彫りと2つの彫りの技を駆使した陶器は落ち着きと気品を備えている。当時は偕楽園焼、男山焼と紀州3大窯の1つに数えられたが、明治期に入り、紀州藩の廃藩とともに廃窯となり、一度は途絶えた。
しかし、1970年代に阪上さんは妻の父である先代と2人で陶芸家の故加藤唐九郎さんの協力を得て10年近くかけ瑞芝焼の技を 再興した。この後、全国で個展を行うとともに近年は和歌山市善明寺に構えた瑞芝堂に作品を展示し、弟子の育成を図る。瑞芝堂には徳島、奈良、京都などから作品を一目見ようと訪れる陶芸ファンは多い。
阪上さんが最近力を入れているのがEM菌を練り込んだ新趣向のアクセサリーだ。EM菌は乳酸菌や酵母菌、光合成菌などで作られ、有機物の発酵を促進させる作用があり、稲作や野菜作り、また消臭やヘドロの分解に使われている。
阪上さんはこれを粘土の中に練り込みアクセサリーにすれば、菌を生きたまま肌身に付けられ、人間の身体にもいい作用をするのではと発想。作っているのは携帯電話用のアートストラップで、EM菌を粘土に練り込み、朝鮮の茶碗などに使われる象嵌(ぞうがん)装飾をヒントにしたデザインで仕上げた。
阪上さんは「EM菌は花粉症に効果があるとの説もありますが、残念ながら実証データがありません」と前置きしたうえで、「ただ微生物は生きています。試しに作った陶製のメガネをかけると疲れ目にいいと個人的に感じています。いろんなものを試みたい。もし研究で効果を実証してくれる所があればうれしいですね」と話している。
写真=新趣向のストラップ(下)を作った阪上さん(上)
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