田中組合長には、苦い思い出があった。過去に中国で開催された釣り関係の国際見本市を訪れた際、商標出願とは違うが、デザインや銘まで、紀州へら竿がコピーされたケースがあった。当時、紀州製竿組合は中国にどうやって法的に対抗すればいいのか、わからなかったという。
今回、パンフレットのロゴの一部が商標出願された可能性が極めて高い「紀州へら竿」は、ヘラブナ釣り愛好家には「あこがれの品」ともいえる高品質の竿で、明治時代から続く歴史を誇る。
「第2次世界大戦で史料が焼失したため、本当はもっと歴史があるんじゃないかという説もあります」と田中組合長は付け加える。
材料の竹取りから完成まで1人の職人が約1年がかりで仕上げる。しなやかさと頑丈さを兼ね備え、1本約5万円から、高いものでは約80万円の値がつくという。
そんな高品質の竿には根強いファンが多く、職人の個性が加わるため、1本とて同じ竿はないことも魅力の一つだ。ユーザーにとって「この池には小さい魚しかいないから、小さめの竿を使おう」、「おれは、この竿の曲がり具合が好きなんだよ」と竿選びで無限の楽しみ方ができるという。