■尖閣領空侵犯、米が中国に直接「懸念」伝達
(読売新聞 - 12月15日 06:30)
【ワシントン＝山口香子】米国務省スポークスマンは１４日の記者会見で、中国機による沖縄・尖閣諸島の領空侵犯について、米政府が中国政府に直接懸念を伝達し、尖閣諸島が対日防衛義務を定めた日米安保条約の適用対象になるとの米政府の立場を改めて伝えたことを明らかにした。
関係筋によると、米政府は、北京の米大使館を通じて中国政府に領空侵犯についての懸念を伝達した。中国側の反応は明らかになっていない。国務省スポークスマンは「尖閣諸島を巡る米政府の長年の政策と約束に変更がないことを明確にした」と述べた。
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１２月１２日に北朝鮮がミサイル発射。
１３日に中国が尖閣領空を侵犯。１９３７年のこの日に南京事件で南京が日本軍の手に陥落していて、中国にとっては日本憎しという感情が高まる日でもある。
北朝鮮は今年４月にはミサイル発射に失敗していたが、今回は成功したもよう。北朝鮮は過去に２回核実験をしていて、２度とも、ミサイル発射をした翌月とか数ヶ月後に核実験をしている。なので来年の早い時期に３度目の核実験をする可能性がある。３度目の核実験に成功すると、技術的に、北朝鮮は実質上の核保有国になることができるという。
だから中国はそれに対して警戒しているはずである。２回目の核実験の時には、中国も北朝鮮への経済制裁を決定した国連安保理決議1874に賛成している。これは国連憲章４１条だが、それでも北朝鮮がやめないのなら、４２条の軍事制裁をするという話になってくる。中国は北朝鮮が核保有国になることには反対だ。北京を直接射程内に収められたら、これまで自由になんでも言うことをきかせられる相手から喉元に刃物をつきつけられるような形になる。
だから、中国は他国との関係をあんまり悪化させずに、ここはみんなと協力して対北朝鮮包囲網を作るのかと思いきや、その翌日に尖閣領空を侵犯である。どういうわけだろう？報道によると、国連安保理の１２日の緊急会合では、
アメリカのライス大使「ミサイル発射は決議違反で、地域の安定を脅かす挑発行為だ」
中国の李保東大使「地域の安定を脅かしてはおらず、非難の必要はない」
ライス大使「ばかげている!」と声を荒らげた。
李大使「言葉を慎むべきだ」と強い口調で言い返した。
と激しい応酬があったという。
なぜ中国はこんな北朝鮮の行動を庇うようなことを言うのか？
中国は胡錦涛から習近平へと政権交代したばかりで、こういう時には体制を安定させるためにあんまり対外的なゴタゴタは起こしたくないと思うのだが、９月の大規模な反日暴動と、１２月１３日の尖閣領空侵犯という今までやったことのない挑発行為を、よりによって北朝鮮ミサイル発射の翌日になぜ行うのか？
これらの行動は、ナショナリズムに駆られてやっているような感じで、あんまり合理的な行動だとも思われない。尖閣領空侵犯でも、中国はかえって日本を非難していたりして、それだって、米国からは懸念を表明されるし、周辺諸国からも警戒が広がっていて、中国に得なことは全然ないようにみえるのに、なぜこういう行動を起こすのだろう？と考えてみた。これは、表面を流れる報道だけ見ているとわけがわからないので、長谷川慶太郎の見方に基づいて考えてみる。
長谷川は、中国には共産党政権と人民解放軍の路線対立が深刻になっていて、両者の対立が決定的になった時点で中国は崩壊する、という見方をしている。
「２０１３長谷川慶太郎の大局を読む」から引用
金正日の先軍政治路線はとりあえず停止された
・・・胡錦涛、温家宝の改革解放路線が、人民解放軍幹部の望んでいる文革路線への復帰を押さえ込むことに成功した・・・
・・・人民解放軍からすると、瀋陽軍区による北朝鮮のコントロールをやめるということであり、矛を収めてしばらくはおとなしくするということにほかならない(p99)
・・・北朝鮮はこれから当分の間、対外的に激しい挑発行動を示す可能性はなくなったと考えられる。
・・・したがって、２０１２年中は朝鮮半島では有事は起こらない。北朝鮮は中国ともども大規模な国際社会との紛争を避けるという路線を取るはずである。人民解放軍としてはしばらくじっとして国内経済がさらに落ち込むときを狙っているし、その時期が確実に来ることを確信しているのだ。
ということだが、北朝鮮は再び国際社会に挑戦しはじめたようだ。長谷川の見方で考えると、これは人民解放軍が共産党政権に揺さぶりをかけ始めたと考えられるし、そう考えれば中国の非合理的な行動もすっきり説明できるように思う。つまり中国共産党政権は、好き好んでトラブルを起こしたいんじゃなくて、背後から人民解放軍の暴走に煽られて、国際社会との板挟みになってのたうち回っているのではないか。つまり、軍が勝手に尖閣に行って飛んだ。中国政府としては、なんてことをしてくれたんだということになるが、対外的に「いやこれは軍が政府の命令とは関係なしにとった行動なんです」って言った時点で、それはもうまともに秩序が維持されている国ではないということになる。だから、次々に軍がする嫌がらせのような暴走を、泣く泣く次々に正当化しているだけではないか？それで日本に尖閣の上を飛ぶな！と言われれば、ヤケクソになって「日本のほうが悪い！」とか。中国は今までそこまで無茶はしたことがなかった。それを、北朝鮮ミサイルとセットでやることで、これは中国が日本に挑んでるというよりは、人民解放軍が共産党政権に挑んでいる可能性があるのではないか？
長谷川の見方によると、北朝鮮はすでに主体的な存在ではなく、中国の傀儡国家になっている。ことに、人民解放軍の瀋陽軍区のコントロール下につい最近まであった。それが、中国国内の権力闘争で、中国共産党が人民解放軍を押さえ込むことに最近成功していたという。北朝鮮の窓口も瀋陽軍区ではなく、中国共産党がするようになったと。そしてそういう状態が続く限りは、北朝鮮は軍事的に挑発する行動をとらないだろう、と。
しかし今回、北朝鮮がミサイル発射をしたということは、そういう状態が崩れた可能性がある。そして北朝鮮を再び瀋陽軍区がコントロールし出した可能性。
僕が考えたのは、１２月１３日南京陥落の前日に、人民解放軍が、北朝鮮にミサイル発射をやらせた。その翌日の尖閣領空侵犯とセットにして。そうすることで、中国政府は、日本と協調して北朝鮮包囲網を敷くことが困難になる。北朝鮮が核兵器を持つということは、これは間接的に瀋陽軍区が核兵器を持つことになる。これは人民解放軍が北京政府に対する優位さにつながる。人民解放軍は、この日に上記２つの行動を起こすことを当初から計画していたのではないだろうか？何よりも政権交代期にある北京政府に揺さぶりをかける目的で。
推測だけど、そう見ると物事がスッキリ見える気がする。
もしこの見方が正しければ、北朝鮮の行動はエスカレートして、来年の早い時期に核実験をするし、それに合わせて尖閣や南シナ海での行動も攻撃的になる。それに煽られて中国政府も無茶苦茶を言い出す。それで日本など相手国が態度を軟化させればしめたもので、付け込んでくる。もし相手の態度が硬化した場合、共産党政権が追い詰められるだけで、背後にいる人民解放軍はざまあみろとしか思わない。
僕はしばらくはそういう見方で中国と北朝鮮をウォッチしていこうと思う。
（１２月１６日 上記のこの色の部分の文章を付け足しました。書き忘れていたので。）
(読売新聞 - 12月15日 06:30)
【ワシントン＝山口香子】米国務省スポークスマンは１４日の記者会見で、中国機による沖縄・尖閣諸島の領空侵犯について、米政府が中国政府に直接懸念を伝達し、尖閣諸島が対日防衛義務を定めた日米安保条約の適用対象になるとの米政府の立場を改めて伝えたことを明らかにした。
関係筋によると、米政府は、北京の米大使館を通じて中国政府に領空侵犯についての懸念を伝達した。中国側の反応は明らかになっていない。国務省スポークスマンは「尖閣諸島を巡る米政府の長年の政策と約束に変更がないことを明確にした」と述べた。
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１２月１２日に北朝鮮がミサイル発射。
１３日に中国が尖閣領空を侵犯。１９３７年のこの日に南京事件で南京が日本軍の手に陥落していて、中国にとっては日本憎しという感情が高まる日でもある。
北朝鮮は今年４月にはミサイル発射に失敗していたが、今回は成功したもよう。北朝鮮は過去に２回核実験をしていて、２度とも、ミサイル発射をした翌月とか数ヶ月後に核実験をしている。なので来年の早い時期に３度目の核実験をする可能性がある。３度目の核実験に成功すると、技術的に、北朝鮮は実質上の核保有国になることができるという。
だから中国はそれに対して警戒しているはずである。２回目の核実験の時には、中国も北朝鮮への経済制裁を決定した国連安保理決議1874に賛成している。これは国連憲章４１条だが、それでも北朝鮮がやめないのなら、４２条の軍事制裁をするという話になってくる。中国は北朝鮮が核保有国になることには反対だ。北京を直接射程内に収められたら、これまで自由になんでも言うことをきかせられる相手から喉元に刃物をつきつけられるような形になる。
だから、中国は他国との関係をあんまり悪化させずに、ここはみんなと協力して対北朝鮮包囲網を作るのかと思いきや、その翌日に尖閣領空を侵犯である。どういうわけだろう？報道によると、国連安保理の１２日の緊急会合では、
アメリカのライス大使「ミサイル発射は決議違反で、地域の安定を脅かす挑発行為だ」
中国の李保東大使「地域の安定を脅かしてはおらず、非難の必要はない」
ライス大使「ばかげている!」と声を荒らげた。
李大使「言葉を慎むべきだ」と強い口調で言い返した。
と激しい応酬があったという。
なぜ中国はこんな北朝鮮の行動を庇うようなことを言うのか？
中国は胡錦涛から習近平へと政権交代したばかりで、こういう時には体制を安定させるためにあんまり対外的なゴタゴタは起こしたくないと思うのだが、９月の大規模な反日暴動と、１２月１３日の尖閣領空侵犯という今までやったことのない挑発行為を、よりによって北朝鮮ミサイル発射の翌日になぜ行うのか？
これらの行動は、ナショナリズムに駆られてやっているような感じで、あんまり合理的な行動だとも思われない。尖閣領空侵犯でも、中国はかえって日本を非難していたりして、それだって、米国からは懸念を表明されるし、周辺諸国からも警戒が広がっていて、中国に得なことは全然ないようにみえるのに、なぜこういう行動を起こすのだろう？と考えてみた。これは、表面を流れる報道だけ見ているとわけがわからないので、長谷川慶太郎の見方に基づいて考えてみる。
長谷川は、中国には共産党政権と人民解放軍の路線対立が深刻になっていて、両者の対立が決定的になった時点で中国は崩壊する、という見方をしている。
「２０１３長谷川慶太郎の大局を読む」から引用
金正日の先軍政治路線はとりあえず停止された
・・・胡錦涛、温家宝の改革解放路線が、人民解放軍幹部の望んでいる文革路線への復帰を押さえ込むことに成功した・・・
・・・人民解放軍からすると、瀋陽軍区による北朝鮮のコントロールをやめるということであり、矛を収めてしばらくはおとなしくするということにほかならない(p99)
・・・北朝鮮はこれから当分の間、対外的に激しい挑発行動を示す可能性はなくなったと考えられる。
・・・したがって、２０１２年中は朝鮮半島では有事は起こらない。北朝鮮は中国ともども大規模な国際社会との紛争を避けるという路線を取るはずである。人民解放軍としてはしばらくじっとして国内経済がさらに落ち込むときを狙っているし、その時期が確実に来ることを確信しているのだ。
ということだが、北朝鮮は再び国際社会に挑戦しはじめたようだ。長谷川の見方で考えると、これは人民解放軍が共産党政権に揺さぶりをかけ始めたと考えられるし、そう考えれば中国の非合理的な行動もすっきり説明できるように思う。つまり中国共産党政権は、好き好んでトラブルを起こしたいんじゃなくて、背後から人民解放軍の暴走に煽られて、国際社会との板挟みになってのたうち回っているのではないか。つまり、軍が勝手に尖閣に行って飛んだ。中国政府としては、なんてことをしてくれたんだということになるが、対外的に「いやこれは軍が政府の命令とは関係なしにとった行動なんです」って言った時点で、それはもうまともに秩序が維持されている国ではないということになる。だから、次々に軍がする嫌がらせのような暴走を、泣く泣く次々に正当化しているだけではないか？それで日本に尖閣の上を飛ぶな！と言われれば、ヤケクソになって「日本のほうが悪い！」とか。中国は今までそこまで無茶はしたことがなかった。それを、北朝鮮ミサイルとセットでやることで、これは中国が日本に挑んでるというよりは、人民解放軍が共産党政権に挑んでいる可能性があるのではないか？
長谷川の見方によると、北朝鮮はすでに主体的な存在ではなく、中国の傀儡国家になっている。ことに、人民解放軍の瀋陽軍区のコントロール下につい最近まであった。それが、中国国内の権力闘争で、中国共産党が人民解放軍を押さえ込むことに最近成功していたという。北朝鮮の窓口も瀋陽軍区ではなく、中国共産党がするようになったと。そしてそういう状態が続く限りは、北朝鮮は軍事的に挑発する行動をとらないだろう、と。
しかし今回、北朝鮮がミサイル発射をしたということは、そういう状態が崩れた可能性がある。そして北朝鮮を再び瀋陽軍区がコントロールし出した可能性。
僕が考えたのは、１２月１３日南京陥落の前日に、人民解放軍が、北朝鮮にミサイル発射をやらせた。その翌日の尖閣領空侵犯とセットにして。そうすることで、中国政府は、日本と協調して北朝鮮包囲網を敷くことが困難になる。北朝鮮が核兵器を持つということは、これは間接的に瀋陽軍区が核兵器を持つことになる。これは人民解放軍が北京政府に対する優位さにつながる。人民解放軍は、この日に上記２つの行動を起こすことを当初から計画していたのではないだろうか？何よりも政権交代期にある北京政府に揺さぶりをかける目的で。
推測だけど、そう見ると物事がスッキリ見える気がする。
もしこの見方が正しければ、北朝鮮の行動はエスカレートして、来年の早い時期に核実験をするし、それに合わせて尖閣や南シナ海での行動も攻撃的になる。それに煽られて中国政府も無茶苦茶を言い出す。それで日本など相手国が態度を軟化させればしめたもので、付け込んでくる。もし相手の態度が硬化した場合、共産党政権が追い詰められるだけで、背後にいる人民解放軍はざまあみろとしか思わない。
僕はしばらくはそういう見方で中国と北朝鮮をウォッチしていこうと思う。
（１２月１６日 上記のこの色の部分の文章を付け足しました。書き忘れていたので。）