PC遠隔操作:4都府県警 捜査の問題点 検証結果の概要
毎日新聞 2012年12月15日 00時51分(最終更新 12月15日 01時34分)
4都府県警が公表したPC遠隔操作事件の捜査に関する問題点の検証結果の概要は次の通り。
■警視庁 逮捕には相当の理由があったと考えられるが、遠隔操作に対する知識を捜査員が十分に有していなかった。今後はより慎重に逮捕の要否を検討・判断するよう指導を徹底することが必要である。
脅迫メールを送信した経緯や動機についての男性の説明には曖昧な点があり、供述にも変遷があった。一時的であっても同居の女性をかばって犯人を装っていたと主張するなど、自白の信用性に疑いが生じる余地も多く見受けられた。
結果的に虚偽自白を見抜けなかったが、説明態度や内容を鑑みれば、徹底した供述の吟味が必要だった。
PC内に証拠が残され、ウイルス検査でも異常が発見されなかったことから、逮捕後も捜査員は犯行が遠隔操作によるとの認識を持つには至らなかった。
ネット空間の犯罪については、民間との協力体制を一層強化すると共に高度な知識を有する捜査員の育成が急務である。虚偽自白を見抜けなかったことを教訓とし裏付け捜査の徹底や供述吟味担当官の活用、犯人性や秘密の暴露の有無を確実に検討するなど、「捜査の基本」を改めて徹底させなければいけない。
■大阪府警 PCの解析結果から得た客観的証拠を犯人性立証の柱としたため、否認供述の掘り下げが不十分で、供述の吟味が足りなかった。高度なネット犯罪は手段・方法が日々変化・複雑化しており、証拠の意味・内容を一層慎重に検討すべきだった。
PC内の全ファイルの解析は、高度な技術力や長期の期間が必要で、1都道府県警察レベルでは困難だった。このためインストールされたソフトウエアなどに対象を絞り込んだが、不正プログラムは発見できなかった。
サイバー犯罪対策部門が不正プログラムの発見、解析を実施していたが、近畿管区警察局大阪府情報通信部や情報管理課と緊密に連携して組織全体としての取り組みを考慮すべきだった。サイバー犯罪対策部門としては、解析能力を有する捜査員を複数投入し、より多角的に解析することも検討したが、解析資機材の数量不足のため実施に至らなかった。