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2007年11月06日

荒木飛呂彦先生講演『損をしない漫画を描くための地図』&イベントレポートリンク集

#追記(12/10):レポート3件追加!

「男には地図が必要だ
 荒野を渡りきる
 心の中の「地図」がな」

『スティール・ボール・ラン』4巻[AA]、グレゴリオのセリフより
11月2日の「東北大学祭」11月3日の『青山祭2007』と、2つの大学祭で行われた、荒木飛呂彦先生の講演。 2つの講演では共通して、『損をしない漫画を描くための地図』と題し、荒木流の漫画の描き方が語られた(ちなみに「東北大学祭」の方では、荒木先生と、カジポンさん、鬼教官さんによるジョジョ立ち講座も開かれたとか!)。今回、幸運にも『青山祭2007』に参加できたので、その内容をここに紹介したい。


『青山祭2007』 荒木飛呂彦先生講演
『損をしない漫画を描くための地図』

  • <「地図」とは>
    雑誌に載ってヒットする漫画を描く為の「地図」。 未開の山を目指すなら、まずその山のふもとに辿り着かなければならない。その為の「地図」。 また、スランプに陥り、道に迷った時に、ちゃんと帰ってくる為の「地図」でもある。
  • <漫画を構成する4つの要素>
    ストーリー漫画でもギャグ漫画でも、どんな漫画にも必ずある、4つの要素。「ストーリー」と「キャラクター」、それを統括する「絵」、ストーリーの背後にある「テーマ」。
  • <絵>
    15メートル先から一目見て、それ(・・)と分かるデザインである事が重要。
    例えばジャンプ漫画なら「リングにかけろ」(車田正美)、「キャプテン翼」(高橋陽一)、「ワンピース」(尾田栄一郎)は、遠くから見ても何を読んでいるのかが分かる。 また、誰が見てもそれと分かる「ピカソ」の絵画や、マル3つだけで分かる「ミッキーマウス」、大スターなら「マイケル・ジャクソン」も、遠くから見ても分かる。絵が上手い・下手ではなく、15メートル先から見て分かる、自分だけの「絵」を持つ事がまず重要。(遠くから見ても分かる絵、という話は、昨年6月のサタデープログラム 荒木飛呂彦講演「漫画家という仕事」でも話されている。)
  • <キャラクター>
    ヒーローとは『孤独』に世の中の悪に立ち向かっていく人の事を言う。 「善」を大きく描き、それに対比して「悪」を描く。 そして2つに必要なのが「読者の共感」。
    ヒーローは仲間がいても、1人。それがカッコイイ。「悪」は自由に描けるので、例えば吉良吉影の性癖を細かく考えたり、DIOは本当は女が好きだけど男でもOK、みたいな設定を考えたり、「悪」を描くのは楽しくて簡単で、作者も読者もスカッとする。反面、「善」は安易に描くと読者に反感を買われやすく、描くのは凄く難しい。だが、悪は善を引き立てるもの。悪ばかり描いていてはむなしいし、「善」は美しい心、正義や勇気を持っていて、時代を超えて愛される。だから、「善」を大きく描き、それに対比して「悪」を描くのがキャラクター基本。 そして、2つに必要なのが、「読者の共感」。 主人公にも、吉良のようなヤバイ奴にも、ただの雑魚キャラにも、読者に好かれる「愛」が必要。
  • <ストーリー>
    (1)主人公を困難な状況に突き落とす
    (2)困難を主人公は乗り越えようとする
    (3)乗り越えようとするが、悪化して絶体絶命
    (4)ハッピーエンド
    絵とキャラクターを動かしていくのが、「ストーリー」。 プロの中には、キャラクターさえいればストーリーは動いていく、と言う作家もいるが、それでは行き詰ってしまう。ストーリーの上で動かしていくと、主人公が成長し、時代や年代を超えて読まれる作品となる。そして、主人公とストーリーは一体化していなくてはならない。 ストーリーの基本は、上の4つのパターン(荒木先生は「黄金の地図」と表現)。困難に立ち向かい、絶体絶命になっても、あくまで最後はハッピーエンド。ここで言うハッピーエンドとは、単純に勝ち残る事ではなく、例え主人公が死んでしまっても、美しい心の為に、誰かの為に死んでいくなら、ハッピーエンド。この構成のバリエーションで、バトルでもギャグでも恋愛でも描ける。
  • <テーマ>
    絶対に読者を説教してはならない。
    テーマは作品の背後に隠す。
    ストーリー、キャラクター、絵を統括するのが「テーマ」。作者の哲学でもある。 重要なのは、絶対に読者を説教してはならない。説教をすると読者は引いてしまうし、反感を買ってしまう。だから、テーマはキャラクターの行動やセリフ、最後のメッセージなど、作品の「背後」に隠す。新人漫画家でよく、「テーマ」をストーリーそのものにしてしまっている人がいるが、それは必ず編集者に没にされる。

講演の後半は、荒木先生の生原稿(のコピー)が教科書として使われ、しかも作者自らの解説付き! 原稿がスクリーンに映し出される度に、「うおおおおおおおお!」と地鳴りのような歓声が上がった。

こうして、全員が「ヘブンズ・ドアー」で本にされてもおかしくない濃密世界の講演は、あっという間の1時間で、予定通り閉幕。万雷の拍手に送られ、荒木先生は会場を後にした。ちなみに講演開始までの空き時間は、実行委員の方々によるジョジョ立ち講座やクイズ大会、トークイベントなどが開催され、会場に入ることの出来たファンには、ディ・モールト充実したイベントとなった。講演を引き受けてくださった荒木先生と、今回の講演を企画・運営された方々に、ディ・モールト・グラッツェ!


『漫画を描くための地図』以外の、荒木先生の小ネタを紹介。
  • 壇上に上がった荒木先生、素数を数えていたが、素数が何だったかも分からないくらい緊張(笑)。
  • 好きな食べ物はスパゲティ。好きなアイドルは黒木メイサ
  • 荒木先生の娘さんが来年、青学を受験すると言っていて、その時、「お前の親父、ウチの講演断ったよなー」と嫌みを言われない為に引き受けた。(勿論、荒木流のジョーク(笑))。
  • 用心深い性格で、初めて食べるお菓子は必ず誰かに食べさせてから食べる(笑)。プラズマTVも、もっと安くていいのが出るだろうと待っていたら、未だにブラウン管。用心深くなったキッカケは、子供の頃、「謎」を追求するあまり、魚に見とれて池に落ちたり、ウサギの足跡を追って肥溜めに落ちたりしたことがあるから、らしい。
  • 「ウソをどうやって本当のことのように描くか」。漫画家になってから、そういう事ばかり考えている。だから、あの占い(『脳内メーカー』の結果の事)も、あながち嘘ではない。
  • 「青学祭2007」パンフレットより。
    Q:いまだにインターネットは使ってないのですか?
    A:はい。アナログ派宣言。
    Q:荒木先生ご自身にも超能力・霊感がおありだというお話はよく耳にしますが、近頃も妙な出来事に遭遇されましたか?
    A:”不死身のネコ”に遭遇した。(くわしくは書けないけど)(霊感はないよ)
#他にもイベントレポートを書かれた方がいましたら、是非お知らせ下さい!(荒木先生が秘密にして、と仰っていたアレについては、もう雑誌が発売されたので、多分OK…?)

(ディ・モールト・グラッツェ!<A・Aさん)
2007年11月06日. Posted by @JOJO このエントリーを含むはてなブックマーク
コメント

自分は行けなかったので、@さま、本当に感謝(大泣)

Posted by: ニワトリ・マイケル : 2007年11月06日 08:29

参加組ですが、お話に夢中になってしまいメモしきれなかった内容もこんなに丁寧にレポされているなんて…!当日の感動が蘇るかのようです。本当にご苦労さまです。

Posted by: flat : 2007年11月06日 16:42

私は音声組でした。

講演前に会場の外で聞こえた拍手は、ジョジョ立ち講座やクイズ大会だったんですね。

でも実行委員に言いたいのは、クイズ大会やる暇あったら外の客の対応に力を入れてほしかった。

一応は学生でも大人なんだから、学生課の職員のオッサンにに外の客の対応させるのはどうかと思いました。
にしてもあのオッサンの言い方もひどかったなぁ…。

Posted by: freedom : 2007年11月06日 18:58

「圧迫祭り」は、奥様が「圧迫祭りよ」と言いながら突進してきたことに由来しているとおっしゃってました。

Posted by: ys : 2007年11月06日 23:50

というか荒木さんのいわゆる「ジョジョポーズ」って、
パクリじゃないですか・・・
「いかにマニアックなところから”インスパイア”するか」
というテーマでよろしくお願いしたい。

Posted by: んんー : 2007年11月07日 18:47

"不死身のネコ"がディモールト気になります(笑)
首に矢が刺さったような穴でも空いてたんでしょうか?

Posted by: 大使 : 2007年11月07日 19:47

ひ、秘密のアレってなんなんスかぁ〜〜〜〜っ!!超気になる!
・・・でもそれをばらしちゃわない管理人さんにシビれてあこがれますわ

Posted by: スエキー : 2007年11月07日 23:49

東北大での公演参加組ですが、ネコは不死身なのではなく、どーやら死んだことに気づいてないネコらしいです。
興奮のあまりメモも取ってないのでうろ覚えですが、荒木先生が家の近くでネコがひかれただったかな?なんかで死んでもおかしくないのに、ネコがそのまま歩いていったのを目撃したらしいです。
で、それをYJで連載してる嘘喰いの迫 稔雄先生に言ったら、それは不死身じゃなくて、死んだことに気づいてないんだと。

Posted by: ジャガー : 2007年11月08日 01:33

この講義こそ
全編集部は聞いた方が良いのでは?

方向性が見失う物も多いし

被害者?は鳥山氏の連載恐怖症

もしミーハーなファンがいたら言いたい「尊敬し敬え〜」

Posted by: 炎の魔術使順平 : 2007年11月08日 17:37

青学、前日に友人が問い合わせまでしてくれて、整理券の可能性は低いって話だったので、安心して10時にいったらちょうど整理券配布終了という張り紙が・・・。
覚悟が・・・足りなかったのかッ!?とディモールト涙。
音声があるなんて初めて聞いたよ・・・orz

他の友人が参加できたらしいのだけど、ジョジョお宝自慢のコーナーで2番目の整理券を持ってる人が自慢げに「夜の9時から並んだ」とか言ってたらしい。あれ・・・徹夜は禁止じゃないんですかーッ!!

Posted by:   : 2007年11月08日 17:43

青山音声組です。

先生に対して「スランプの時は…」っていう質問が出たんですけど、そこでマイク途切れて音声組は全く聞き取れなかったんです(´・ω・`)
誰か、何て答えてたかご存じの方はいらっしゃいませんか?

Posted by: : 2007年11月09日 04:21

会場の出入口に殺到してた人たちの悔しそうな顔が忘れられません(;´Д`)

先生の娘さんがご入学されたら青学がらみのイベントが多くなるかもしれないので、青学スタッフにはまじで成長してほしいですね。。

もちろん今回の講演には大感謝してますけれども。

Posted by: DJシーザー : 2007年11月09日 17:27

「スランプの時は〜」の質問は確か「スランプとかになったことがありますか」的な質問だったと思います。
荒木先生は「そういった極限状態になったことはある。特にストーンオーシャンの時はまさにそれで、だから宇宙を一巡させたのだ。」と答えていました。(講演会場内のマイクも雑音交じりだったので、間違っていたら指摘してください)

私が会場から出たときにも同じ質問をされてきた方がいましたが、そういう理由だったのですね…。

Posted by: フィウス : 2007年11月10日 21:53

>フィウスさん
あぁぁ、ちょっと見過ごしてた間にまさかのお返事がきてる…!!
正直、聞こえた組の方が数が圧倒的に少ないから望み薄だと思ってたのに…!


お礼を申し上げるのが1ヶ月も経った後なので、もう見ていらっしゃらないかとは思いますが、それでもお礼を言わせてください!
そういう話だったのですね、ありがとうございました!!><*

Posted by: 質問者 : 2007年12月12日 03:09
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