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2008年6月25日 (水)

吸血女 洋子 第12章

第12章 崩壊

新しい獲物を狙う気力がない2人、自ずと、お互いが持っている魔力は衰え始めていた。
その事件以来、2回目の満月が訪れようとしていた。
自宅にいた静香は、母親からの電話を受けた。
「俊介の様子が変なのよ。おとうさんと病院に連れて行ったら、即入院って言われて。急になのよ。その前は何かに怯えている様な感じはあったの。わたし、どうしていいか・・・。」
電話の向こうで泣き出す母親。原因は分かっている静香だが、本当の事など話せる訳はなかった。
分かったわ。今からすぐ戻るわ。」
電話を切った静香は、洋子に連絡し、実家へ向かった。
(弟がおかしくなったって、いったいどういう事なの?)
洋子は心配だったが、塾の事もあり、一緒に付いて行かなかった。

実家へ向かう列車の中で、また静香は吸血マスターの声を聞いた。
(わたしの力は及ばなかった。精神が崩壊したようだ。現世とあの世の、中間に位置する精神病患者の脳には、我々の力は届かないのだ。死ぬまでこの状態は続くだろう。)
あなたが洋子を襲ったせいでこうなったのよ。もういや、元に戻して。快楽なんていらないから。)
窓の景色を見る静香の目からは、大粒の涙が流れ落ちていた。
自宅に戻らず、直接病院に行った静香は、病院のロビーで母親と会った。
おかあさん、俊には会うことができるの?
「ええ、先生が立会えば大丈夫よ。」
そんなに悪いの?
「まるで別人よ。訳の分からない言葉を話すし、おとうさんを襲おうとしたのよ。医者の話では幻覚が見えてるのではと言ってたわ。」
そうなの・・・・・。」
主治医に連絡を取り、2人は病室へ向かう。
「ここです。少しお待ちください。」
看護師を引きつれ、ドアの鍵を開け、病室に入っていく。
白衣の2人を見るなり、弟の俊介は暴れだし、激しくベットのきしむ音が狭い病室に鳴り響いている。
俊ちゃん!
静香が先生の後ろで叫んだ時だった。あれだけ暴れていた弟の身体の動きがぴったりと、止まった。
「俊介!」
驚いた母親は静香の腕を掴み、叫んでいた。
「不思議です。入院した時から人を見ると、すぐに暴れだしていたのですが・・・。これなら、拘束具を外しても良さそうだ。ちょっと手伝ってくれ。」
主治医は看護師の手を借りて、両腕を固定してる袋状の布を外していった。
急いで弟の下へ駆け寄った静香は、弟の両手を握り締めた。
(ごめんね。ごめんね。俊。わたしのせいでこんな事に。)
泣きながら弟の手を握る姉の姿に呼応するように、俊介の両目からも涙が溢れ出てきた。
先生。今日からしばらくの間、弟に付き添っていいですか?
しばらく黙っていた主治医だったが、静香にこう伝えた。
「いいでしょう。この状態ですから、自分で点滴を抜いてしまうんです。これなら経口できそうですし、大丈夫でしょう。しかし、異常があった時はすぐに退室してもらいますよ。」
分かりました。ありがとうございます。」
その時、静香はあの親子のように死ぬ事を心に決めていた。
先生たちが巡回する時を除き、2人はお互いの血を吸い続けた。
そして、2日目の夜の事。
俊介の衰弱度合いが気になった医師が看護師に指示を出し、その病室へ行かせた。
消灯時間を過ぎた薄暗い廊下を懐中電灯を持った看護師がその病室に近づいた時だった。
俊介のいる病室からは、女性の官能的な喘ぎ声が聞こえてくる。
そっと近づいて、小さな扉の窓から覗いた看護師は、病室の中を見た途端、金縛りになった。
すぐにでもその行為を止めさせないといけないのに、看護師の身体はその行為に興奮し、自分の意思に反して股間に手を伸ばしていた。
お前が今見た事はすぐに忘れる。案ずるな。今は快楽に身を任せておけばよい。
その声は紛れもなくマスターの声であった。オーガズムを知らない若い女性看護師は、2人の吸血行為を見て、初めて、それを体験した。
その後、マスターより、催眠操作された看護師たちは、異常を主治医に告げることはなかった。
その2日後、姉弟は変わり果てた姿で発見された。

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