| | 高齢化、人口減少が進む黄島。衆院選期間中、候補者が足を踏み入れることはなかった=五島市
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衆院選最終日の15日。五島市福江島の沖に浮かぶ黄島では、島民が一足早く1票を投じた。選挙期間中、黄島に足を踏み入れた候補者は1人もいない。候補者の「生の声」を聞くことができなかった島民は国政に何を託したのか−。島内を巡り話を聞いた。
島はあいにくの曇り空だった。うっすらと朝霧がかかる中、島民は港近くの黄島住民センターへと投票に向かっていた。手押し車を押しながら来場する高齢者の姿も多い。黄島など県内31の投票所では、悪天候などに備え繰り上げ投票が行われる。投票箱はその前日に運ぶが、14日は海が荒れて定期船が欠航し、五島海上保安署の巡視艇で運んだ。
黄島は福江港から南南東約18キロ、周囲約4キロの小島。人口は51人。この20年で半減したという。漁業を営む人もわずかにいるが、多くは年金暮らしの高齢者。一人暮らし世帯が多く「4人家族は"大票田"」とされる。
今回、1陣営の運動員が来島した以外は島内では選挙運動は見られなかった。「離島振興を公約に掲げるのであれば、少しだけでも顔を見せてほしかった」。投票に訪れた男性(63)は政見放送などを参考に投票先を決めたが、候補者が現れなかったことを残念そうに話した。国政選挙で候補者本人が来ないのは今回に限ったことではない。近年、選挙期間中に候補者が訪れたことはないという。ある女性(57)は「(候補者は)誰もこないが、選挙の時だけ票をくださいと言うのもおかしな話だ」とつぶやいた。
島に若者はいない。最年少でも39歳。高台には小中学校の跡が残るが、グラウンドには雑草が生い茂り、台風の被害なのか囲いのフェンスは内側に傾いている。学校は10年ほど休校が続き昨年廃校になった。町内会長の山下雅真さん(52)は「お年寄りばかりの島だが、島民は生活が少しでもよくなるよう望んでいる」と話す。
今回の選挙では環太平洋連携協定(TPP)への対応や第三極の台頭などが話題になっているが、島民たちは「政策はよく分からない」「同じような政党ばかりだ」と話し、島の生活とかかわりが薄いこうした話題には関心を示さなかった。「何を望んでも変わらない」という女性(90)は「だんだんと人は減ってしまい島外との格差は広がるばかりだが、島でゆっくりと過ごす生活も悪くない」と話した。