中国が安倍自民党の政権奪還を望んでいる(山口一臣)
今回の領空侵犯について中国外務省の洪磊(こう・らい)副報道局長は「釣魚島とその付属の島は中国固有の領土で、中国の海洋監視機がその空域を飛ぶことはまったく正常なことだ」と記者会見で強調した。中国では、これがごく当たり前の考えで、安倍が拙速に動こうとすればするほど、野田の“思いつき”国有化と同じく、必ず中国に付け入る隙を与えることになる。安倍には「デフレ脱却のためには日銀にも国債を買ってもらう」などと単純で乱暴なことを口にする癖があり、複雑な駆け引きはできそうもない。中国政府は、それに“期待”しているようなのだ。
問題は国際社会がどう動くかだ。
安倍に象徴される保陣営の多くは、米政府高官がたびたび「尖閣諸島は日米安保の範囲内だ」と発言していることを根拠に尖閣諸島で日中が対立すれば米国が助けてくれると本気で信じている。だが、世の中、そんなに甘くはない。
確かに、日本が実効支配している以上、尖閣諸島は日米安保条約の範囲内だが、領有権については米国はあくまでも中立との立場を崩しておらず、日本にも中国にもいい顔をしている。米国は表向きは対中包囲網などと言っているが、中国と本気で対立する気などない。中国は米国債を買い支えてくれているし、米企業は中国を最大の市場と見ているからだ。
日中の対立激化で日本の自動車メーカーの対中輸出が激減したと伝えられているが、その穴を埋めているのが米国や韓国の自動車メーカーだ。日米韓の軍事同盟を構成する各国が、実は中国市場ではライバル関係にあるという事実を忘れてはいけない。「中国は社会主義国家で体制が違うから、米韓は日本の味方だ」などという単純な話ではないのである。
中国はこの間、米議会やシンクタンクなどに対しても積極的なロビー活動を行ってきた。その結果、安倍・石原らが掲げる“右寄り”路線が、国際社会から警戒され始めていることも自覚したほうがいい。米誌『タイム』の最新号が「Japan Moves Right(日本は右傾化する)/なぜこの国のムードは数十年来で最もナショナリステックなのか、なぜそれは危ないのか」というカバーストーリーを掲載したこともそのひとつだ。国際社会に影響力のある欧米のメディアに最近、こうした論調の記事が目立ち始めた。タカ派の安倍政権が誕生すれば、こうした危機感がより現実味を帯び、国際社会で中国の主張が通りやすくなる。
こうなると、たとえ安倍が政権をとったとしても、本当に選挙中主張していたような対中強硬路線を取れるのかどうかが怪しくなる。それにしても、安倍が自らの思想信条に忠実であればあるほど、中国を利することになるというのは、なんとも皮肉な話ではないか。実際に政権を取れたとして、この問題にどう対処していくのか、我々はしっかり見守る必要がありそうだ。(敬称略)
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