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キーパーソン

(2012.8.6/2012年8・9月号 ojo interview)

水野 学 氏
グッドデザインカンパニー   代表・アートディレクター

三寺雅人 氏

 

  26歳だった1999年にグッドデザインカンパニーという名の会社を作った。幕末の志士・坂本龍馬が新しい国をつくるための構想「船中八策」を起草したが、それに及ばずとも、自分の中では「デザインで社会を良くしたい」との強い意思を示したかったからだ。
  「90年代後半まで、消費者が良いと思って購入したのに、実は環境に悪かったなど、消費者を傷つける商品が多かったように思う」と話す。
  「本物をつくりたいし、本物をつくっている人と一緒にいたいし、本物のコミュニケーションの方法で消費者にアピールしたい」という思いを抱きながら、ブランドづくりの根本から、ロゴやパッケージ、インテリアのデザインなどまで幅広く関わってきた。
  「僕の仕事は広告を作るというより、売り上げを伸ばすことです」と言い切る。
  熊本県のキャラクター「くまモン」は、関連グッズで25億円を売り上げるまでに成長。開発を手がけたブリヂストンの自転車は年間1万台の大ヒット。最近では、ニトムズの文房具ブランド「スタロジー」や、海外の「台湾セブンイレブン」など活動の場を広げている。
  アートディレクターと名乗る以上、企業の志や大義、思いを形にし、アウトプットを含めた最終表現ができるコンサルティングができなければいけないし、経営者のそばにいないといけない職種だ、と考える。
  デザインの世界に進むきっかけは、小学生の時に交通事故に遭い、一生歩けないと言われたこと。自然にベッドで描ける絵に関心が向かった。幸い、手術が成功して、中学から少しずつ歩けるようになり、美術大学では、ラグビー部に所属するまで回復した。
  「たどりついた答えは、必ず言葉にできる」が持論。後進をきちんと育てたいという念願がかない、9月からアートディレクターとして、大学でブランディングの講義を受け持つ。

売れるためには、アウトプットの質を高めることが大切
僕の使命は企業をつくるお手伝いです

──時代を肌で感じるためにどんなことをしていますか。

  新聞は一般紙から専門紙まで何紙も読んでいます。一番読むのは、経済情報です。新聞は、幅広い情報を自分の好きな時間に読むことができるので重宝しています。また、雑誌を月に50冊くらい買っています。テレビも、ネットもかなり見ています。そうすることで、自分はマーケティングをしているんだと思います。

──水野さんの役割は。

  消費者が、良かったと思って買ったけれども、実は環境に悪かったといったようなものが、90年代後半まであふれていたのではないでしょうか。消費者は3.11以降、明日何があるか分からない中で、偽物はいらないと、本物を強く志向するようになりました。これ以上、消費者を傷つけてはいけないことに気付いた企業が、この不況期に売り上げを伸ばしている。つまり、コミュニケーションや、マーケティングに関してきちんとしている企業が売り上げなり、企業イメージが構築されているのではないかと思います。僕は、企業をつくるお手伝いをするのが仕事だと思っています。

──今春に出された新著「アウトプットのスイッチ」では、売れるためには、最終表現が必要だと強調されています。

  「ウソをつかない」「本物である」「シズルがある」というのが、アウトプットのクオリティーを高める手法だと思います。「シズル」とは、食べ物がおいしそうに見える様(現象)のこと。僕は昔から広義に使っていて、そのもの自体が欲しくなること、そのものを見た時に「ああ、それそれ」と思うことと解釈しています。日本という国自体にもシズルがある。勤勉で細かくて、感受性豊か。色々な文化を受け入れていますね。

東京ミッドタウン「MIDTOWN♥SUMMER 2012」ポスター

──売れる要素とは。

  僕は3つしかないと思う。「発明する」「ブームをつくる」「ブランドをつくる」。このうち、「ブランドをつくる」ことは一筋縄ではいきません。ブランドとは、広告はもちろん、社長や社員の言動、オフィスの内装だとか、オフィスのある場所、商品をはじめとしてその会社が出すすべてのものです。良い人材の集まる企業は、良いブランド力を持っている可能性が非常に高いと思います。

──5周年を迎えた東京ミッドタウンにも関わっていらっしゃいますね。

  ミッドタウンは、商品であり商品じゃないですね。街をつくっている。周辺に住む人、そこを訪れた人に何をもたらすことができるかがすごく大切。その場を作るということで、どれだけ喜び、豊かさを受け取ることができるかに尽力しています。

文/小池俊幸  写真/小原啓樹

水野 学(Manabu Mizuno)

1972年東京生まれ。神奈川県茅ヶ崎市育ち。96年、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。ドラフトなどを経て、99年にグッドデザインカンパニーを設立。主な仕事にNTTドコモ「iD」のネーミングや広告、「東京ミッドタウン」や台湾セブンイレブン「7‐SELECT」のリブランディング、熊本県キャラクター「くまモン」企画及びデザインなど。The One Show金賞など受賞多数。新著に「アウトプットのスイッチ」(朝日新聞出版)。

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キーパーソン

三輪友寿 氏
電通 第3CRプランニング局 プランニング・ディレクター