2008-01-11(金)
■[日記][東京]おいどんはただ生きてるだけよ 
十代の終わり頃は、ほんとうにあちこちウロウロしていて、趣味、野宿です!というくらいに高速道路下や駅のベンチ、駐車場、公園、色んな場所でそのまま寝っ転がって、夜の長い時間を過ごしていた。高田渡が好きだったので、いつもウイスキーの小瓶をリュックに入れていた。
その頃、北九州のある公園で、夜いつものように寝っ転がって目を閉じていたら、人の気配がし、薄目あけると親子連れ(父と子)だったのだけど、ああ親子だなぁ…などと呑気なことを思っていたぼくから、少し距離が離れたところで、父親が子に向かい「絶対にあんな人間になったら駄目だ」というような事を諭していた。
この場合まわりを見渡して「あんな人間」というのは自分しかいないので、ぼくはどうやらあの父親にとっての「なったら駄目」に分類される人間なのだなあ、というような事を考えながら、その時は腹が立つよりもいささか悲しくなったりもしたのだけど、たしかに当時の自分は穴のあいたボロボロの服やズボンを着ていたし、見るからに不審者然としていたので(今でもそうですが)、
まあどう考えて本人(ぼく)に近い場所から大きな声で、いともカンタンに他人の存在を規定してしまうようなそんな言葉を、幼い子供に向かって発する事の出来る無邪気な精神性というのは自分にはあまり理解できないけれど、まあでも確かに、夜公園でする事もなく寝っ転がっているような人間に「なったら駄目だ」と子に諭す、父親としての気持ちは当たり前ながら理解できる気がした。そしてそれが理解できるだけに、その時のぼくはなんともやりきれない気分になった。
勝ち組、とか、負け組、とか、そのようにカンタンに人の人生を嫌な意味で(イヤ、というのは主観でしかないけれど)分類してしまう乱暴な言葉、というのが、ぼくは本当に苦手で苦手で仕方がないのだけれど、苦手な言葉を表明しそれを使わずに生きていくだけでメシが食えれば苦労はない。いやだなー、なんて思いながらも仕方なく使っている人もいるかもしれない。で、そーは言っても実際、あきらかに世の中には「負け組」と分類する他ない人たちが多数存在するじゃないか、と現実的な指摘をされるかもしれない。分類するための言葉が発明されたと同時に、そこに分類される多数の人たちも誕生する。
ぼくが今まで目にしてきた人間、つきあってきた人間というのは、みなどこかで、明確に負けていた。ヨメを車に轢き殺されたショックで頭がおかしくなり、ついでにアルコール依存症となり、あげく自分もまた人殺しとなり、刑務所から出てき、ホームレスとなり、施設に収容され、施設を追い出され、今では上野の山で寝起きする老人が、ある時ぼくに、手作りのパイプをプレゼントしてくれた事がある。ぼくが、彼が普段から持っているパイプを見て「かっこいいなー」と言ったそのひとことで、老人はどこからか盗み出した庭木と竹箒を加工し、丸四日かけてぼくのために同じパイプを作ってくれたのだ。それを受け取った時、なんだかほんとにやりきれない気持ちになり、ぼくは少し泣いてしまった。
別に何をどう分類しようが、暮らす世の中や人々をどう見ようが、それは誰が言うまでもなく個人の自由に決まっているし、あまり大文字の言葉を使いたくないのだけれど、結局のところ、今がそういうきびしい時代なのだ、と言えてしまうのかもしれない。ただ、ぼくにはどうしても、他者に対して持ちたくない視点、というかある方向への視線、があって、それがどういった視線なのかというと、それはなかなかひとことで言えないし、きっと言葉にして発する事はないと思う。やさしくありたい、とかそういう風に思ったことは一度もないけれど、自分の持っている残酷さには徹頭徹尾自覚的でありたい。
前に一度、少し書いたのだけど、かつて若くして子供三人残し、自殺した女がいた。一度だけ、彼女を海に連れていった事がある。海がきれいだ、海がきれいだ、と同じ言葉を何度も繰り返す彼女は、ぼくの袖をつかみ、もっと色んな楽しい景色が見たいと笑って、その数ヵ月後に自分の体を切りきざんだあげく死んだ。彼女は何かに負けていたのだろうか、と今でもたまに思ったりするけれど、彼女は別に何かに負けたわけではなく、ただ死んだだけだ。そして何かに負けたわけでもなく、勝ったわけでもない、ただ生きている、それだけのことよ、という当たり前の事実を受けとめて、ぼくは口笛でも吹きながら、これからものんびりと楽しい景色を見ていきたいと思う。
長々と失礼しました。何が言いたいのかよくわからず文章もめちゃくちゃですが、結局のところ何が言いたかったかというと、やっぱりよくわかりません。次はもう少し楽しい感じの日記を書こうと思います。
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