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格納容器の調査に5年、燃料棒の片づけに11年

スリーマイルからフクシマへの伝言(その1)

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【廃炉と燃料棒抜き取り】

 4月上旬、ようやく事態の悪化は止まった。

 メルトダウン事故が沈静化したあと、まずやらなくてはいけなかったのは、格納容器や原子炉の中がどう破壊されたのか、調べることだった。しかし、格納容器の中はクリプトン85(核分裂で発生した希ガス。半減期10.76年 )が充満していた。放射線量が高すぎて、人が入れない。中がどうなっているのかも分からないのだ。この放射性ガスを抜かないと廃炉作業が始まらない。しかし、それは大気に放射能ガスを放出することを意味した。

(注)TMI2号機は圧力容器(原子炉)の外側にコンクリート製の格納容器が一重あるのみ。福島第一原発1~4号機は圧力容器の外側に鋼鉄製の格納容器があり、さらにコンクリート製の建屋がある。

 この状況は福島第一原発2号機に似ている。福島第一原発1号機、3号機は建屋が水素爆発して中にたまっていた放射性物質が拡散した。しかし2号機は建屋がそのまま残っている。中の格納容器が破損した可能性が高い(線量が高すぎて近づけないので確認できないが、2号機から衝撃音がした3月15日に周辺線量が急上昇した)。すると建屋内部はTMI2号機格納容器内部と同じように放射性物質が充満していることになる。

 TMIの運転会社メトロポリタン・エディソン社(ME)は原子力規制委員会(NRC)にこの放射性ガスを抜く(vent:ベント)する許可を求めた。しかしメルトダウン事故で高まっていた住民の不信感が一気に爆発した。地元公聴会は荒れた。原発立地自治体であるミドルタウンの公聴会には、約9000人の住民のうち500人が詰めかけた。電力会社・行政側は「ケダモノ」と罵声を浴びた。退場するのに警官隊のエスコートが必要だった。ベント中止も仮処分申請も裁判所に起こされた。仮処分が却下されベントが始まったのは1980年6月末である。

 いざ燃料棒の抜き取りの作業にかかる前に、費用負担の問題が浮上した。TMI原発が止まっている間、電力を調達する費用だけでも1日70万ドルかかる。それは電力会社にとっては即倒産を意味した。結局州政府、連邦政府(エネルギー省)、原発所有会社(General Public Utilities)のほかペンシルベニアと隣のニュージャージーの電力消費者の間で分担するプランができた。

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