(本)糸井重里「インターネット的」—ネット社会の予言書的一冊

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2012/12/15


Kindleでちょっと安かったので買ってみました。これはすごい本ですねー…。2001年出版の本とは思えない。


「インターネット的」

・”人とつながれる”"乱反射的につながる”"ソフトや距離を無限に圧縮できる”"考えたことを熟成させずに出せる”などなど、人の思いが楽々と自由に無限に開放されていく空間。こういった「情報社会」に生きているぼくたちの身体や考え方、生き方は、どんどん、このようなインターネット的なものになっていると思います。

・インターネット的という考えからしたら、たとえば企業が市場を「独占する」ということなどは、ちっともカッコ良くないのですね。誰も、うれしくない。誰もうれしくないということを推し進める企業が、市場の主役である人々から嫌われ知恵区であろうことは、これkらの社会の動向を見ていかなければ結論づけられないとは思うのですが、予感的には、ぼくはそうなっていくだろうと考えています。

・価値観も、もちろんフラットになっていくでしょう。いままでの社会での価値体系は、誰にでも納得されるものではなくなっています。さらに、これからは、個人の価値観に合わせて個人のプライオリティが自由に組み替えられていくでしょう。

・考えたこと、やっていたいことを惜しみなく出し続ける。枯渇するのではないかとか、後でもっといい使い道があるとかを考えずに、出して出して出し尽くして枯れたらそれでしかたない、というくらいの気持ちがないと、日刊で曲がりなりにも「新聞」を出すことなどできません。おそろしいけれど、なかなか楽しいことでもありました。

・ぼく自身、インターネットに文章を書くようになって、あきらかに文体も変わりました。何とか早く伝えたいということを大事にして、文章の完成度を犠牲にするようになったのです。

・たくさん出す人、いっぱいサービスをする人のところに、いい情報が集まってくるのですから、みんなによろこんでもらうことを、完成形など待たずにひっきりなしに提供していくことが、いい情報を集める方法でもあるのですね。

・勢い、という価値はほんとうに不安定です。「飛ぶ鳥を落とす勢いですね」と寄ってきた人たちは、飛ぶ鳥を落とせなくなってきたら、価値を認めなくなります。こんどは、「落ち目だろ」と当然のことのように言い放つだけです。それは実力主義の法則とは違うものでしょう。「勢い」だけに価値をおいた世の中というのは、高速で勢いを生み出しては高速で消費しつくしていく仕組みなのです。

・文章がヘタなのに面白い、ということが成り立つのがネット社会なんです。チョーでも何でも、その書き手が楽しくイキイキとした生活をしていれば、書いたものは面白い。逆に文章に自身のある人が書いたものでも、イキイキと生きていない人の文章は、つまらないんです。

・どうも、人の心というのは、きれいにまとまってものよりも、まとまりきれない何かに震えるのではないでしょうか。

・わかりにくいことを、わかりにくいままに伝えることなら、そんなに難しいことではないでしょう。わかりにくいことを、できるかぎりわかりやすく伝えようとすると、言っている自分がちゃんとわかってないと無理です。ですから、簡単に言えるようになるまでは、ぼくは、そのことについて言わないようにしています。時々は見栄を張って言うこともあるのですが。

・インターネットが発達して便利になったのですから、「インターネットでできた余暇を、これからどう使う?」というふうになってもおかしくないのに、現実はまったく逆で「インターネットができて、ますます忙しい」ということになってしまっています。

・素人玄人が集まってつくった「脳作物」の数々を、インターネットの路上売店に並べているという感じでしょうか。ITビジネスの先達のみなさん、「これからは、コンテンツの時代ですから」とか、口で言うのは簡単ですが、脳作物は、いつでもどこでもカネさえあれば買ってこられるというものでもないんですよ。情報農家のおらたちは、けっこう肉体仕事をしているというのが現実ですだよ。

・人々は、作者やチーム、企業の提示する「世界」の住民になりたいと感じるから、共感してくれるのだと思うのです。そういう意味では、あらゆる表現や行動には「世界観」のベースがあるはずです。幸せって何だっけ何だっけ?ということんついても、ばくぜんとでもいいから、「わたしは、こうだと思います」というものを提示できなければ、受け手の思うままにサービスいたしますという、例の「お客様は神様です」思想になってしまう。

・これからの時代は、大きさは別にして、あらゆる場面で立候補しないで生きていくことが、困難になるのではないでしょうか。どっちの道に行きたいのか、何やいやで何がしたいのか、何を美しいと感じ何をみにくいと思うのか、そういったことを自分なりに生きるための「軸」として持っていないと、他人とリンクしたり、他人の協力を得られたりができないでしょう。

コンテンツのあり方から人生論まで、「インターネット的」なるものについて、予言のごとく示唆がまとめられた一冊。冒頭にも書きましたが、これ10年前に書かれた本とは思えない。2012年に書きました、といわれても普通に納得しますし、楽しめる内容です。流石糸井重里さん…。


Kindleだと514円。Amazonだと送料込みで古本は480円くらいなので、電子の方がお得感ありますね。ぜひ。