「私は幸い戦争で死なず、今も生きている。(日本が極右化する中)私が何もせずにこのまま死んだら、戦友たちに対する罪を犯すことになる」
16日に投開票を迎える衆議院議員選挙に、参戦経験のある94歳の男性が自身の葬儀費用をつぎ込み、無所属で立候補した。AFP通信が14日報じた。今回の立候補者のうち最高齢で、戦争を禁じる平和憲法を守るために出馬したという。
立候補したのは埼玉県在住の川島良吉氏。葬儀費用に充てようと長い間ためていた年金300万円を切り崩して立候補の届け出を行った。川島氏が立候補を決意したのは、自民党の安倍晋三総裁や、日本維新の会の石原慎太郎代表ら極右政治家たちが、戦争を禁じる平和憲法の改正を主張し、軍隊保有や再武装の動きを見せているからだ。
川島氏は第1次世界大戦の終わった1918年に生まれ、日中戦争が始まった1937年、19歳で招集されて中国で7年間戦った。仲間が目の前で死んでいく場面も見守ったという。同氏は戦争を禁止した憲法第9条について、当時戦死した日本人300万人の犠牲を基につくられたと主張する。
川島氏は「私たちはあの戦争で無条件降伏した。それなのに日本はどうなってしまったのかと心配だ」と語った。選挙公約は「憲法第9条順守」と「原発反対」。同氏は「(安倍総裁らが)これ以上政局を混乱させることのないようにしなければ。安倍氏らは『武装』という言葉を安易に使い『国防軍』という単語もやたらと口にする」と話した。
川島氏は立候補に先立ち、親族に出馬することを伝えたが、誰も反対しなかったという。同氏は「親戚は心の中では反対していたと思うが、やりたいことをやれと言ってくれた」と語った。結婚している娘も、選挙運動を支援するために駆け付けた。
川島氏はこれまで、かまど販売業、金融証券業などさまざまな仕事に従事した。同氏は「正直言って選挙で勝てるとは思わないが(こうした状況を見て)黙っているわけにはいかなかった」と語った。16日に行われる衆議院議員選挙には、480議席に対し1504人が立候補している。