金融庁:S&Pジャパンに業務改善命令、誤った格付け公表などで(2)
12月14日(ブルームバーグ):金融庁は14日、米格付け会社のスタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパンに対し、合成債務担保証券(CDO)などに誤った格付けを付与するなど、業務管理体制に不備(金融商品取引法違反)があったとして、業務改善命令を出した。格付け会社に対する行政処分は初めて。
同庁によると、S&Pは合成CDOの信用格付けに影響を及ぼすクレジットイベント(信用事由)の発生状況など、重要な情報を適切に確認しないまま、長期間にわたり誤った格付けを付与。また、社内決定と異なる信用格付けを公表するなど、投資者保護上重大な問題があったとした。
同庁はS&Pに対し、1月18日までに再発防止策などを盛り込んだ業務改善計画書の提出を求めた。
処分を受けて、S&Pレーティング・ジャパンは「市場関係者の皆様に深くお詫びする」として、張毓宗・代表取締役が月額報酬の50%を3カ月間自主返上すると発表した。関係した役職員を減給処分とするとともに、再発防止策も公表した。
「何を信用したらいいのか」今回の発表を受けて、市場関係者の間では、波紋が広がっている。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは、「CDOなど複雑な証券化商品において投資家は格付け会社の格付けに依存する傾向がある」と指摘。今回、S&Pが処分を受けたことで「何を信用したら良いのか分からなくなる」と述べた。ただ、企業格付けでは「透明性が高く格付け手法などが確立しているので影響は少ないと」とみる。
また、大和証券のチーフクレジットアナリスト、大橋俊安氏は「今回の件にかかわらず、外国の格付け会社は日本での格付けには縮小傾向にあった」とし、「これを機に、S&Pの使い方を見直す投資家が出るひとつのきっかけになってもおかしくない」と指摘した。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 谷口崇子 ttaniguchi4@bloomberg.net
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更新日時: 2012/12/14 19:03 JST