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政治
【主張】衆院選あす投票 再生託す担い手はだれか 憲法を軸に国家観見極めよ
日本は再生できるのか、それとも没落への道を歩むのか。その分岐点に立って、国の将来を決める極めて重要な衆院選の投票日を16日に迎える。
直視してほしいのは日本の危機的状況が一段と深刻化し、このままでは国が立ちゆかないことだ。中国機による尖閣諸島の領空侵犯などは、わが国固有の領土がいかに危ういかを示している。
危機克服の力を持った政権を正しく選択することが、いま問われている。再生の先頭に立つ次期指導者が、どのような国家観を持って国難打開に挑もうとしているのかの見極めも求められる。再生への第一歩となるよう、誤りなき一票を投じたい。
≪平和と安全をどう守る≫
最大の眼目は日本をどうするかという国家像である。各党は十分に提示したとはいえないが、内政・外交の主要政策から浮かび上がってくるものも少なくない。
「共生社会」をうたう民主党は経済、社会保障政策で「人」を重視しようとするのが特徴だ。新児童手当の給付に変わった子ども手当など子育て支援の必要性を強調し、社会保障でも「共助」による支え合いの社会に重きを置いている一方、国家観は希薄だ。
これに対し、自民党は外交、経済の立て直しなど国家機能の回復を前面に打ち出している。憲法改正により「国防軍」創設を明示したのも、日本の平和と安全を守る国家の基本的責任を果たそうというものだ。社会保障や社会のあり方については「自助」や「自立心」の確立を重視している。
日本維新の会や、みんなの党に共通しているのは「脱官僚支配」や競争政策の徹底などだ。国家の機能を強化する一方でその役割を絞り込み、地方や民間に委ねるべきだとしている。
注目したいのは、日本維新の会が自主憲法制定を掲げ、みんなの党も改憲を志向していることだ。憲法改正草案をまとめている自民党との連携に道を開く可能性も秘めている。民主党が「憲法を活(い)かし、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を徹底」との一文にとどめたのは情けない。
北朝鮮による長距離弾道ミサイルの発射強行は、日本を取り巻く安保環境の悪化を改めて突き付け、北ミサイルが米国本土を射程に入れる可能性を想起させた。
憲法を改正せず、集団的自衛権の行使も認めない「ことなかれ主義」では、もはや日本を守れない。日米同盟の深化を具体的に実現することが不可欠だ。どんな政権なら対応できるかを真剣に考える必要がある。
再生と没落をはっきりと分ける政策は、原発への対応である。その点で残念なのは、社会経済活動の血液であり再生に不可欠な電力をどう確保するかではなく、「原発ゼロ」までの期間の競い合いに論争が終始したことだ。
≪「電力」の確保が責務だ≫
民主党は2030年代の原発ゼロを目指すことを掲げ、他の多くの政党も「脱原発」や「卒原発」などを唱えた。
停止中の原発の再稼働について明確に道筋を示したといえる党はないが、自民党は必要な再稼働について「3年以内に結論を出す」とし、原発ゼロの時期をめぐる議論とは距離を置いた。
原発事故で故郷を離れた約16万人の避難者への対応、原発の安全性確保に力を尽くすのは当然としても、電力確保が経済成長を通して復興を後押しすることも再認識する必要がある。
社会保障分野では、各党とも有権者向けの拡充策ばかりが目立った。高齢化により社会保障費は急速に膨張する。消費税増税を実施して当面の安定財源確保にめどがついたとしても、支払い能力に応じて負担する仕組みに改めなければ、医療、年金などの制度は早晩維持できなくなる。
年金について自民、公明両党は現行制度を基本にする考えだが、民主党は実現困難とされた最低保障年金にまだこだわっている。社会保障費用の抑制策の議論は不十分だった。すでに始動した社会保障制度改革国民会議の議論を経て、どの政党が制度の見直しを実現できるかを見極めたい。
デフレや財政危機からの脱却には、実効性のある成長戦略を打ち出すとともに、国民に痛みを伴う政策の断行も避けて通れない。聞こえの良い公約などに流されて選択を誤ってはならない。
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