「ナウル」という国を知っている人は日本では少ないでしょう。
注意しているとたまにニュースで取り上げられたりもするのですが、なかなか目に止まるのは希なようです。
でも私は高校生の頃からナウルに行ってみたい、と強く願っていました。
そんなに行きたいとあこがれるのは一体どんな国なのか、
そして実際行ってみてどうだったのか、その辺を詳しくお話していきたいと思います。
まずは地理のお勉強
位置
国旗が示しているように、ナウルは太平洋のど真ん中、赤道からほんのちょっと南に
位置する島国です。(黄色の横線が赤道、星みたいなのがナウル島ですね。
島を表す部分のトゲトゲ?は12個あるんですが、これが12の部族から成る国で
ある事を示しています)
周りは珊瑚礁の海に囲まれ一番近い陸まで350km以上ある
というからとにかく海がきれい。珊瑚礁は思いっきり遠浅の海岸をなし、
ある所から急に深くなるので浜辺から見る海は奇麗に2色に塗り分けられています。
その急に深さが変わるところでハデに波が砕けるんで波打ち際は本当にさざ波程度
にしかならないんですね。目の前に広がる2色の海の真ん中で砕けゆく波。
珊瑚の浜辺にデッキチェアでも持ち出してのんびり静かな午後...
ロマンチックですぜぇ。男1人で来てるのがもったいないくらい。
...話がそれちゃいましたね。えーとそうそう、ナウルは島国なんですけど この島ってのがムチャクチャ小さく丸い島で、直径2kmもない。 独立国としてはバチカン市国の次に小さい国なんです。でも国連にも加盟してるし
アトランタオリンピックにも出場してました。 (重量挙げに3人だけで、さすがにメダルは取れなかったけど)
Revised!! 外務省の「世界いろいろ雑学ランキング」
によると、ナウルはバチカン・モナコに続いて3番目に小さい国だそうです。私の記憶違いでした。
人口 約8,000人。ほとんどがミクロネシア系の人ですが、 純粋なナウル人の数は年々減っていて今は3,000人前後といわれています。
代わりに増えているのが中国系の人達です。(これには理由があります)
産業
ナウルは小さな島ですが、その島全体が世界でもトップレベルの品質を誇る「燐」
なんです。イギリス・オーストラリア・ニュージーランドの3国による採掘が
100年ほど前から活発化し、今や国民1人あたりでは日本なんかより
ずっと金持ちな国になっています...と言ってもピンときませんよね。
例を挙げましょう。
- 国民に納税の義務はありません。
- 燐鉱業で十分儲けているので国民は税金を納めなくていいばかりか
年金をもらえます。
- 国民に就労の必要はありません。
- なんせ燐鉱業で儲けてますから海外からの出稼ぎ労働者が
あとを絶ちません。そういう人達に任せておけば十分なくらい
潤っているのです。
- 国民に就労の意志はありません。
- なんせ出稼ぎ労働者に任せっぱなしの生活を何十年も続けてますから
国民は働く事を知りません。
そう、出稼ぎ労働者に任せているのは燐鉱業だけではないのです。
島国というからには漁業が成り立つはずですが、
魚はオーストラリアから輸入しています。しかも
その魚はオーストラリアの漁船がナウル近海で漁ってきたものです。
ホテルの従業員はほとんどキリバスやサモアあたりから来た人達ばかり。
レストランや雑貨屋はほとんどが中国系の人達が経営しています。
(ナウル人は自分で料理もしないのです)
学校の教師もオーストラリアから派遣してもらってますし、
政府の役人だって外国人です。
「ナウル航空」という航空会社もありますが、URLは「..com.au」ですし、サーバーの所在地はメルボルンです。
ナウル人で働くのは16人の国会議員
だけであとはみぃんな出稼ぎ。マジで。ナウル語を教わりに
文部省に行ってみたら「私はソロモンからの移民でナウル語は
分からない」って言われたくらいなんだから。
どうです、金持ちの方向性が違うでしょ?
商才さえあればアラブの富豪みたいにもなれたんだろうに、
ナウル人はお金に執着しないためこんな風になったのです。
この、お金に対する価値観の違いこそが私をナウルへの旅に駆り立てる
理由の一つだったのです。
今そこにある危機
このちょっと変わった金持ち国・ナウル、近年重大な危機に面しているのです。
それは...「今世紀中に燐が掘り尽くされてしまう」という事なのです。
右の写真はナウル島の中心部で撮影したものですが、燐を掘り尽くした残りカス
(珊瑚ですね)が1面に広がり、とても人間が住めるような状況ではありません。
昔はこのあたりにも人は住んでいたらしいのですが、採掘作業の邪魔になるから、
と強制立ち退きさせられてしまったのです。今はナウルは海岸沿いの
メインストリート沿いにしか住めない土地になっているのです。
ちょっと話がそれてしまいましたが、金持ち国であるナウルの唯一の産業が
底をついてしまっては国民が食べていけなくなってしまいます。
「働けよ」って思うでしょ? でも働かない生活を何十年も
続けてきたためになぜかそこへアタマが回らない。
16人の国会議員が必死になって考えた結果、
メルボルンに高層ビルを建てた。
オーストラリアで最も活気にあふれる街・メルボルンの中心部(よりはちょっと東)
に52階のビルを建てました。その名も「Nauru
House」。 地下1階はナウル航空のオフィス、 最上階はナウル大使館になっています(当然大使館員はオーストラリア人です)。 つまり、そこにテナントを一杯入れて家賃を稼ごう、ってハラな訳ですな。
「おいおい、そうまでして働きたくないか」って思うでしょ? でもこの計画、 うまく行かなかったんですね。私がNauru Houseへ行ったときはテナントなんて
ガラガラでした。
これにも理由があります。実はNauru Houseはテナントを稼ぐ以外にもうひとつ
別の計画があったのです。それは、「もしナウル本国が掘り尽くされてどうしても
人が住めない状況になったら、ナウル国民全員をNauru Houseへ移住させる」という
とてつもなく壮大で、とてつもなく馬鹿馬鹿しい(けど当事者達はおお真面目)な
ものなのです。さて、テナントを借りる側からみたら今世紀中にナウル国民が
移住してくるかもしれない、数年しかいられない可能性が大という場所を
誰が借りるでしょう。そこで16人の国会議員は再度知恵を絞りました。
グアムに5つ星のホテルを建てた
オフィスとしてビジネスマンを定住させるのに無理を感じた彼等は今度は
定住しない観光客に目を向けたのです。でも当然ながらナウル人達に
5つ星のホテルなんて経営できません。いや、できたとしてもやらないでしょう。
なんせナウル国民が働かずに済むようにするための策なんですから。
で、そのホテルの経営を、あろうことか日本企業にやらせてるんですね。
そりゃ日本にとってみればグアムなんて超メジャーな観光地の高級ホテルが
タダで使える、とあれば売り上げの何割かを渡す条件でもホイホイ
引き受けるでしょう。この目の付け所はさすがですね。
働きたくない一心でここまでできりゃ、見上げたもんです。
グアムに行かれる方、全日空ホテルに泊まったらどこかにナウルのものが
置いてないか、調べてきてください。m(_ _)m
芸術の都?
さて、ナウルの人達の「お金に対する考え方」「仕事に対する考え方」は
日本とは大分違いますね。これだけでも十分興味は湧くんですが
絶対行こう、という決定打になったのは
「お金があって時間がある→独特の芸術がある」という私の想像でした。
絵か彫刻か音楽か踊りか、何があるのか分からないけど
生きてくだけで精一杯の国じゃないんだから
なにか今まで見たこともないようなものがあるんだろう、
そりゃ個人的には独特の音楽があれば非常に面白いけど。
不思議な音の出る楽器とか買ってこれないかなぁ、というのが夢として
大きく膨らんでいったんですね。
で、行ってみた。...何もない。民芸品も民族音楽も何もない。
仕事も家事もしないでいるのに他の事に興味も示さない。
みんな本当に遊んで暮らしてるだけなんだ。
生活に余裕があるからといって芸術に走る人はいないんだ。
これはなかなかショックでした。
似たようなカルチャーショックをオーストラリアでも体験していますが、
ナウルの人達は酒に溺れていないだけアボリジニよりはマシなのかもしれません。
ちなみにいうと、ナウルにはディスコもゴルフ場もなんだってあります。
ただそれらはみんなナウル独自のものではない、という事です。
海外から移住してきた人達が一緒に持ち込んできた文化なのです。
ナウル在住の外国人達は活気にあふれているのです。
で、ナウル人は日本以上に「島国根性」が強く、外の人間に対して非常に内向的です。
ナウル人と友達になるにはゆっくりと時間をかける余裕を持っている必要があります。
ナウルへの行き方
さぁ、ここまでの話でナウルに行きたくなってきた人もいるでしょう(?)
ではナウルへはどうやっていくか、私の体験談を交えてご説明致しましょう。
ルートを決めよう
ナウルまで飛んでいる飛行機は「ナウル航空」以外にありません。
これは土地柄、ナウル空港が小さいためにジャンボ機には滑走路が短すぎるんですね。
で、ナウル航空なんですが、以前は福岡・那覇から直行便が出ていました。
虎ノ門にナウル航空のオフィスがあり、そこでチケットも買えたのですが、
バブルの地価高騰の折に撤退してしまったのです。
今は日本からの直行便はありません。どこに行けば乗れるでしょう?
ナウル近辺の小さな国々(キリバス・ツバル等)を除けば、こんな所からナウル行きの
便があります。
- オーストラリア(シドニー・メルボルン)
- ニュージーランド(オークランド・ウェリントン)
- パプアニューギニア
- フィジー
- フィリピン
- グアム
日本から行くのであればグアムかフィリピンがいいでしょう。まずグアムに行って
ナウル所有の全日空ホテルに泊まって、ナウルへ飛ぶってのがベストコースかな?
ビザを取ろう
ビザ申請には往復の航空券が必要です。
前述の中継点からナウルへの往復航空券を手配してから申請してください。
以前は虎ノ門(ナウル航空と同じ所)にナウル共和国領事館があって、そこでビザを取得できたのですが
ナウル航空のオフィスと同様、バブルの地価高騰の折に撤退してしまったのです。
じゃ、どうやってビザを取るか、
外務省に電話をかけて聞いてみたら意外な答が返ってきました。
- 「ナウル本国の入国管理局にFAXを送ってください。
で、折り返し送られてきたFaxをもってビザと致します。」
おぉ、自宅にいながらにしてビザが取れる?もしかしたらナウルってムチャクチャ
考え方の進んでいる国なんか?
- 最初に送るFaxには住所・氏名・パスポート番号と有効期限・
入国日と出国日・滞在目的・滞在先を明記してください。」
ん? その割には随分条件がうるさいな。まぁいいや。Fax送ればいいんだな。
で、Faxしてみるんだけど全然送信できない。通信事情が悪すぎるのだ。
軟弱にも私はここで日本でビザを取得する事を諦めてNauru Houseへ行ったのですが、
申請から発給まで3日かかりました。
以上の点を踏まえて、例えばグアムを中継点に決めた場合のビザ取得の手順はこうなります。
- 取りあえず成田←→グアムの往復チケットを買ってグアムへ行く。
- グアムにあるナウル航空へ行ってグアム←→ナウルの往復航空券を買う。
- グアムにあるナウルの領事館へ行ってビザを申請する。
- ビザが発給されるまではグアムを満喫する。
というわけで、日程には余裕を持っていきましょう。
...とまぁ、ビザの取り方を長々と書いてきましたが、実は観光客の場合、
往復の航空券を持っていて、滞在日数が4泊以内の場合は入国審査時にビザを
発給してもらえます(あくまでノービザでないところがポイント)。
でもナウルに行ったら4泊以内で帰ってくるなんてもったいないですよ。
もっとノンビリするところです、ナウルって。
管理者註:
ナウル旅行記を公開してもう何年も経つにも関わらず未だにナウルに関する情報を提供している日本語サイトが少ないからでしょうか、「ナウルへ行きたいけどどうすればいいのか」というお問い合わせが少なくありません。ところがナウル渡航に関する情報は変わっていくので、「ナウル渡航情報のページ」を作りました。私が知り得た範囲でしかできませんがみなさんのお役に立てば幸いです。また、新しい情報がありましたらお教えいただけるとありがたいです。
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