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2012年12月15日(土)付

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領空侵す中国―危機を広げたいのか

中国国家海洋局の航空機が、尖閣諸島近くの日本の領空を侵犯した。両国の衝突につながりかねない極めて危険な行為だ。日本政府が尖閣諸島を地主から買って以来、中国の公船が周辺の[記事全文]

総選挙・議員の特権―甘えの姿勢いつまで

総選挙はあす、投開票日を迎える。その結果いかんにかかわらず、もはや利益誘導型の甘い政治は成り立たない。国民に歳出カットや増税といった「負の配分」を求めなければ、新しい政[記事全文]

領空侵す中国―危機を広げたいのか

 中国国家海洋局の航空機が、尖閣諸島近くの日本の領空を侵犯した。両国の衝突につながりかねない極めて危険な行為だ。

 日本政府が尖閣諸島を地主から買って以来、中国の公船が周辺の領海にくり返し入り、領有権を主張している。だが、空への侵犯は初めてだ。

 領空侵犯は、深刻な新たな局面を招く。

 海の警察である海上保安庁が警戒するこれまでと違い、空の場合は軍事組織である自衛隊が侵入を防ぐ。今回も航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した。

 自衛隊機が着いたとき中国機はすでに去っていたが、自衛隊出動という事態は、互いの対立が軍事レベルに拡大しかねない危険をはらむ。

 また、航空機の接近は、接触などの不測の事態もおきかねず、そうなれば直ちに惨事につながる。

 2001年には、中国海南島付近の南シナ海公海上空で、米軍の偵察機に中国軍機が近づいて接触、中国機が墜落する事件があった。

 日中の間で同じようなことがおきれば、国民感情の激化を制御できなくなる恐れもある。そのような事態は、だれの得にもならない。

 中国は尖閣を「中国固有の領土」とし、航空機の活動は「全く通常のもの」と主張した。公船とあわせて「海と空の立体パトロール」だという。

 尖閣諸島は日本が長く実効支配してきた。中国は歴史的な経緯を自国内には伝えず、最近の行動は力で現状を変えようとするものにほかならない。

 侵犯は、日本の総選挙の3日前になされた。

 日本政府は尖閣に「領土問題は存在しない」との立場だが、中国は新政権発足をにらみ、領有権争いの存在をはっきりさせる狙いとも見られる。

 だが、それは新政権の対中不信を招き、政策の選択肢を狭めるだろう。選挙では自衛隊の国防軍化や、憲法改正も論じられている。そうした声がいっそう強まることも考えられる。

 中国は、それを望んでいるとしか思えないようなふるまいだ。

 今回、中国機は低空を飛来したため、自衛隊のレーダーで捕捉できなかった。日本政府は早期警戒機の活用など、監視体制の強化を検討している。備えを万全にするのは当然だ。

 むろん、外交的な解決を探る努力は双方に欠かせない。事態を鎮める環境を整えるためにも、中国は挑発を直ちにやめるべきだ。

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総選挙・議員の特権―甘えの姿勢いつまで

 総選挙はあす、投開票日を迎える。

 その結果いかんにかかわらず、もはや利益誘導型の甘い政治は成り立たない。国民に歳出カットや増税といった「負の配分」を求めなければ、新しい政策にも手をつけられない。

 だからこそ、まず政治家みずからが身を切る姿勢を示さねばならない。でなければ、「苦い政治」への有権者の理解は得られない。

 総選挙を控え、駆け込み的な動きはあった。

 衆院が解散された先月16日、議員歳費を2割削減する法律が成立した。

 衆院議員の定数削減も、民主、自民、公明3党の国対委員長が「次期通常国会終了までに結論を得たうえで必要な法改正を行う」ことで合意した。

 だが、歳費の2割削減は「定数削減が来年の通常国会で実現するまでの間」という期間限定だ。なぜ、永続的に2割削減すると言えないのか。

 一方で、解散のどさくさのなか、国会の常任・特別委員長の日当廃止法案が参院で廃案になった。1日6千円の手当を廃止できない政治家が、国民に負担を強いる。

 これでは、とうてい有権者の納得は得られまい。

 議員定数の削減は、多くの党が公約に掲げた。首相の諮問機関である選挙制度審議会を立ち上げ、衆参の役割分担をふまえた抜本的な議論を望む。

 ただその前に、新たに当選する議員たちにぜひとも実現してほしいことがある。

 まず、年間約320億円の政党交付金の大幅削減である。

 税金を原資とする政党交付金は、共産党と一部の新党を除く各党が受け取っている。

 「企業・団体献金の禁止」が制度導入の前提だった。それがいっこうに進まないまま交付金を受け取っているのでは、二重取りではないか。

 私鉄やバスの「無料パス」は廃止されたが、JRや飛行機に無料で乗れる特権は残っており、衆参両院が毎年約13億円を支出している。

 しかも、国会議員には交通費や郵便代として1人月100万円の「文書通信交通滞在費」も出ている。メールが定着し、ツイッターなどの交流サイトが利用されるいま、時代錯誤の制度ではないか。

 問題は金額の多寡ではない。

 時代にあった国会議員像を描き、活動にかかる費用をみずから厳しく見直す。

 議員バッジは、特権を得るためのものではない。

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