探偵小説 vs. 推理小説。 - 葉仮名raycy - KliologY
甲賀三郎『音と幻想』(紫文閣、昭和17年1月) 、目次に書いてあった「推理小説」
推理小説叢書の発刊 | yasuokaの日記 | スラッシュドット・ジャパン
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yasuokaの日記 2011 年 06 月 10 日 PM 02:59
(PHP新書、平成21年7月)を読んでいたところ、探偵小説と推理小説に関する妙な記述を見つけた。(p.203)
探偵小説と推理小説 | yasuokaの日記 | スラッシュドット・ジャパン推理小説というのは、昭和二十一年に初めて用いられた名称で、戦前は探偵小説と呼ばれていた。なぜ戦後急に名称が変えられたかというと、昭和二十一年に発表された「当用漢字表」の中に、「偵」の字が入っていなかったので、探偵と書けなくなったからである
清水義範の言いたいことは、文脈全体を知らないので どうか分からぬが、
私が この話の流れから 見てみたいことを挙げれば、
百歩ぐらい譲って、
「当用漢字表」内表現という強い囚われが働き、「偵察」の「偵」の字を使いづらい“表現の不自由”期があり、そのために 曲げて 「探偵小説」を使わなかった時期があったことが認められれば、 それでも いいかもと思う。
そのような仮定に立って 検証を試みてはどうか?
具体的には
戦前 | 戦後のある時期 | 戦後直後からしばらくたって |
探偵小説 探偵小説 探偵小説 探偵小説 探偵小説 探偵小説 推理小説 推理小説 | 推理小説 推理小説 推理小説 | 探偵小説 推理小説 推理小説 推理小説 推理小説 推理小説 |
推理小説と探偵小説の勢力分布の年次推移を見て 終戦直後、当用漢字表公布後 ごく初期に “探偵小説”の使用量の顕著な落ち込みがあるかどうかを見るのである。
甲賀三郎の『音と幻想』
探偵小説と推理小説 | yasuokaの日記 | スラッシュドット・ジャパン
推理小説という区分立ては、著者 甲賀三郎が為したことか?あるいは 編集者の仕業か?
自己紹介日本酒・ミステリ・パワーポップ〜Timothy James Baldwin’s Home!
Timothy James Baldwin’s Page● 本格とは何か?
1、「本格」という言葉の起こり
島田荘司氏は『本格ミステリー宣言』(単行本 - 1989/12)中の「本格ミステリー論」の中でこう述べている。
2、「本格」という概念
以下、島田氏の文を要約する形ですすめていく。
「探偵小説」とかいう言葉は英語でいう detective story の翻訳語である。この「探偵小説」という言葉が生れたのは明治23年2月 黒岩涙香氏の『無惨』@amazonの序文にて梅廼家かほる氏なる人物が使った表現からであるという。
大正13年、佐藤春夫氏が論理的な推理と合理的な解決を持つものを「純粋な探偵小説」と呼び、14年に甲賀三郎氏が「純粋探偵小説」という言葉を世に提示したらしい。これは「探偵小説」同様英語の pure detective を翻訳した語である。
甲賀氏は翌15年、異常心理や病的な事柄を扱う探偵小説を「変格」、純粋な論理的興味を重んじる探偵小説を「本格」と命名する。ここで大正15年にして日本語「本格」が登場する。
一方“探偵”ではなく、「“推理”小説」という言葉に関してだが、この語がこの世に登場したのは戦前の昭和17年と言われている。しかし甲賀三郎氏はこの言葉を「本格探偵小説」とは全く解釈の重なるものと定義したらしく、特に世に定着させようという意図はなかったようだ。
しかし、戦後になり、木々高太郎氏があえてこの呼称を提唱した。これが昭和21年7月のことである。この提唱の意図は、単に「本格探偵小説」をそう呼び換えようというものではなく、「推理と思索を基調とした小説」“全般”をこう呼ぶことを意図、つまり広く文学の領域に含まれるものをも取込んで探偵小説事体も文学たらしめようという意図が見える。江戸川乱歩氏や大坪砂男氏も「推理小説」という言葉を提唱したが、これはむしろ甲賀三郎氏寄りで、「探偵小説」にあまりに同居者が多い為、エドガー・アラン・ポーの流れを汲む「本格探偵小説」をより一層明確に区別するために「推理小説」と別称で呼ぼうというものであった。
しかし、ここでそんな議論をよそにとんでもないことが起こる。昭和21年11月、「当用漢字表」なる怪しいものが内閣訓令で告示公布される。昔から変わらぬ日本のジャーナリズムはそれに意味もなく自主的に従った。しかししかし、なんとそこに「偵」の字が含まれていなかったのである。そこで「探偵小説」は「探てい小説」と表記するしかなくなった。・・・・・・この事件を契機に全く意図とは関係なく「推理小説」という言葉は代用語として定着するにいたる。「偵」の字が補正で加わっても既に「探偵小説」を一世代前の低俗なものというイメージが定着し、二度とこの「探偵小説」という言葉が復活することは起こっていない。
“本格”ミステリとは?
1977 Jan. No.26
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No.26掲載
中井英夫のことば
ひところ私は、推理小説という名称をたいへんに憎んだ。それまでの探偵小説の「偵」の字が当用漢字にないという、それだけの愚かな理由によって、やすやすと昔の名を棄てる風潮ががまんならなかった。東京の由緒ある町名を片っ端から変更して恬然としている住民たちが決して東京っ子ではないと同じに、お上がそうと決めれば翌日から寸だの尺だのという日常に生きている呼び名を平気で棄ててしまう神経は、よそ者だけの持つ恥知らずな感触に思われた。市民の気概、土地っ子の誇りはどこにあるのだろう。推理小説という、いかにも明快でスマートで、その代わり肝心な翳の部分をどこかにすっかり落としてきたような名を喜んでいられるのは、美しい小東京を大事に育てあげる代りに、やたら区画を広げて大東京だ首都圏だと悦に入っている手合と同じにしか思われなかった。なんで八丈島までを東京と呼ばなければならないのだろう。
いまの私にとってその問題はもうどうでもよく、好きなように呼んでくれという気持しか持てないが、土地っ子の憤懣だけはまだ時折くすぶらないでもない。少なくとも、読むという点に関する限り、私は探偵小説の土地っ子だったからである。
「黒い水脈」より
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year | 探偵小説 | 純/純粋・健全派/不健全派・本格/変格 | 推理小説 | 当用漢字の影響 |
明治23年2月 | 梅廼家かほる。黒岩涙香への前書きだか?「探偵小説」とかいう言葉は英語でいう detective story の翻訳語 | |||
大正13年 | 佐藤春夫氏が論理的な推理と合理的な解決を持つものを「純粋な探偵小説」と呼び、 | |||
大正14年 | 甲賀三郎氏が「純粋探偵小説」という言葉を世に提示したらしい 英語の pure detective を翻訳した語 | |||
大正15年 | 異常心理や病的な事柄を扱う探偵小説を「変格」、純粋な論理的興味を重んじる探偵小説を「本格」と命名する。 | |||
昭和17年 | ||||
昭和21年4月? | 常用漢字1295字ぐらいだっけか | |||
昭和21年7月 | ||||
昭和21年11月 | ||||
1973年 | ||||
1977年 | ||||
1992年だっけか | ||||
平成21年7月 |