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カジノパート長すぎました。はい。
あれ?妹がメインキャストになる気がしない。
早くギール王国から出たいのに出られないよーー
そろそろ物語を進めないといけませんね汗
朱美外伝とかも書きたいのにー
ポーカーのルールはテキサスホールデム仕様です。
ドラ視点を追加した方が良いかな。
青年期
第二十一話
王都の前には門番が立っており目的と名前を告げないと入れない。
何度も繰り返した行為。半年程ここを拠点にしていたので、門番とも顔見知りになりフリーパスだ。
「一週間振りくらいですか、今回は少々長かったですねクロノ殿。」
少し年のいった門番の一人が話しかけてくる。これもお決まりの事。
「ええ、少し依頼が長引いたものですから。」
世間話の様なものだ。無難に受け答えしておく。
この門を通る時は大体この門番に話しかけられる。
「ドラ君も久しぶりだね。」
横にいるドラの方を向き子供に話しかけるような口調だ。
「うん!!久しぶりですね、マイクさん。」
対するドラは笑顔で無邪気な子供のようだ。
いつも俺と話す時とは違い、年相応の子供にしか見えない。
ここまでの演技が出来るのは俺も見習わなければいけないと思う。
「はっはっドラ君は相変わらず元気だね。」
この場を見る者が見れば孫と祖父に見えるだろう微笑ましい光景。
「それにしても、クロノ殿はその年で冒険者として生活しているなんて凄いですなぁ。うちの息子にも見習ってもらいたいもんですわ。」
この話は3回目くらいだった気がする。空を仰ぎ息子の不出来を嘆く父。
「いえいえ、私なんて新米ですから。」
手を振りながら謙遜し答える。この人に俺のランク等は教えていない。教えても面倒な事になるだけだ。
「いや本当にすごいですよ。こんな小さな弟と二人でなんて。」
いい加減うんざりしてきた。このペースにはまると中々抜け出せない。
「さて、私は行く所があるのでこれで。」
少し言い方がストレート過ぎたかと思うが大丈夫だろう。
「おっと、引きとめてすいませんでしたな、では。」
そう言って手を振り彼は再び門番の仕事に戻って行った。

「ふぅー、ようやく抜け出せた。」
門から少し離れた所で溜息をつく。
「主はあやつが本当に駄目じゃのぅ。」
呆れたといった調子のドラ。
「嫌いではないんだけどね。なんかあのペースに呑まれるんだよなぁ。」
いつもあそこを通る時はあの人が居る時間帯を避けて通っていたのだが、今日は急いできて失念してしまっていた。毎回あの人に会うと余計な時間を喰ってしまう。
「いつも思うけど、あんなに話していて門番の仕事大丈夫なのか?」
酷い時は昼に着いて夕方まで話し込んでいる事すらある。
「あやつ以外にも門番はおるから大丈夫じゃろ。それよりこれからどうするんじゃ?」
心底どうでもいいといった調子で話題を変える。
「とりあえずギルドでも行くかな。正面からクライス王に会いに行くのはめんどくさいし、いつも通り夜行く予定。」
エテジアの村を出たのは昼頃だがドラに乗って来たのでまだ日は明るい。
色々あって昼間にクライス王に会いに行くわけにもいかない。
「つまり夜まで暇じゃという事か?」
「まあそうだね。」
なにか言いたい事があるのか、急にドラがそわそわし始めた。理由は大体想像つくが。
「じゃ、じゃったら行きたい所があるから夜まで別行動で構わんかの?」
「いいけど、あんまり無駄遣いしないようにね。」
行き先を察し釘を刺しておく。
「儂が負けるわけないじゃろ?」
えっへんと胸を張るドラ。この答えでドラがもう行く先は一か所しかない。
「じゃあ時間になったら迎えにいくから。」
手を振ってドラと別れる。
路地裏に消えていく姿を見送り、ギルドへと向かった。

木製のドアを開けると中には厳つい顔した荒くれ者共がギルド内にちらほらと見える。
内部自体の造りは豪華な事もあり、荒くれ者共の存在が異質を放っているがいつもの事だ。
冒険者の多くはこうした男たちばかりである。肉体労働が多いため女性の冒険者は圧倒的に少ない。
俺自体黒い外套に黒いフードを被り、なんとも怪しい格好をしているので人の事は言えないが。
ギルド内を進み受付カウンターに行く。そこには門番と同じくまたしても見た事のある顔があった。
「あれー?クロノちゃんじゃない。今日はどしたの?」
明るい調子の女性。
「依頼の達成報告に来ましたシェリーさん。」
「この前受けてたあれかー。流石ね。」
彼女とは新人の時からの付き合いだ。最初かーさんと別れた時に初めて依頼を受けたのがここだった。
その時の俺はまだ新米冒険者で出会って以来ちゃんづけで呼ばれている。
「討伐は達成したんですが、討伐証明部位が明記されていなかったので放置してきました。ですからギルドで確認していただきたいのですが。」
「うーん…。今人手が足りないのよねぇ…。でもジャイアント・ワームクラスの討伐はでかいし……。」
人指し指を口に当てなにやら考えているようだ。話している間に背中に痛い程の視線が突き刺さっているのが感じられる。正体は分かっている他の冒険者からの視線だ。
毎度毎度感じるこの視線。不思議に思って以前当の本人に聞いてみたこともある。
曰く「私はギルドのアイドルなのよ。」との事らしい。
男たちの呪殺されそうな視線を背中に受けていると、シェリーさんはなにか思いついたように手を叩いた。
「そうだ、あの依頼は依頼主がアレだったじゃない。」
シェリーさんがいうアレは何となく察しがつく。
俺が依頼を受けた時は依頼主が明記されていなかった。
基本的にギルドは依頼主が依頼を持ってくるのが一般的で、依頼書には依頼を達成した後の未払いを防ぐため依頼主の名前が明記されている。
増えすぎた魔物討伐等はギルドが判断して依頼を出す事もあるが、その場合はギルド依頼と明記される。
依頼主の名前が載っていない依頼など本来ギルドが載せるはずがないのだ。
それでもあの依頼が貼られていた理由は
「依頼主が国なんですね。」

ギルドとは国営ではなく各国に配置されており、国とは本来なんのつながりもない。
それでも各国が国内に配置するのは面倒な事をこなしてくれ、人も集まるからである。
王都にギルドがあるのは一種のステータスであり、国の力を見せるためにギルドの豪華さを競っていたりさえする。国は基本的に依頼等には不干渉で、国から依頼を出す事もない。
国から依頼を出すとそこが国の弱い所だと思われてしまうからだ。
しかし例外はある。それは戦争の時と手に負えない魔物が現れた時だ。
戦争の時は確かにいくら人手があっても足りないので当然であろう。
この時は大々的に国の名前を出し人を集める。戦争時に人手を募集するのは別に恥でも何でもない。
ではもう一つ、手に負えない魔物の時はどうか。
魔物一つ倒せない貧弱な国家だと思われてしまうのだ。
どの国もAランクくらいの魔物であれば倒せるが、それより上となるとなかなか厳しい。
そもそもそんなに強い魔物は人里には来ない。魔物同士の生存競争に敗れでもしない限りは。
そのため各国が想定していないのだ。そこまでの強敵の登場を。
だがごく稀に現れることもある。国ではどうしようもない、冒険者ギルドに依頼せざる負えない。
しかし国の名前は出せない。そんな時に国のギルドの責任者と話し合って名前を出さずに依頼するのだ。
ちなみにこの事実知っているのはギルドの職員とクロノや一部冒険者くらいのものだ。
大体国が手に負えないという事はSランク以上の魔物であり、そんな魔物を討伐できるのは今現在はクロノくらいしかいない。SランクくらいならAランクパーティーが討伐に行く事もあるが成功率はあまり高くない。まあそんな事を多くの冒険者に知られては無記名の意味が無くなるので、多くのパーティーが受けるよりも少ない少数精鋭でこなしてもらうのが一番なのだが。

「さーて、そろそろドラでも迎えにいきますか。」
背伸びをし宿を出る。
空はすっかり暗くなっており星の明かりがちらほらと見える。
あれから結局国に伝えて国の兵士に確認させようという事になり、その後の事をシェリーさんに任せてギルドを出た。その後は宿を取り夜になるまでベッドでずっと寝ころんでいた。
朝と違い身体の痛みも徐々に取れてきている。
流石王都というべきか、街はこの時間帯でも人が多く人々が酒等を楽しんでいた。
そんな喧騒を離れ路地裏へと進む。一気に暗くなった道を暫く歩くと一軒の酒場が見えてくる。
アノニマスとかかれた看板。俺の目的地はここだ。
安っぽい扉を開け中に入るとそこは一見場末の酒場。内装はお世辞にも綺麗とはいえない。
人はあまり入っていない筈なのにどこかから歓声が聞こえてくる。
奥にある階段を下りて行くとそこには

眩しい程に照らされた煌びやかなステージ。その上で踊る踊り子たち。
ルーレットの出目に一喜一憂する女性。難しい顔してトランプを握る老人。
人々が人生を賭け勝負する。そんな娯楽や欲望が詰め込まれているここはカジノ。
ギール王国が誇る最大級のギャンブル場だ。

ギール王国ではギャンブルは特に禁止されていないが、子供の教育に悪いからとひっそり路地裏に造られている。国営カジノでありギール王国はここの収入で潤っているとかいないとか。
ポーカーにブラックジャックやバカラ、ルーレット等の賭けごとだけではなく、ステージショーも毎日行っており連日人が押し寄せる大人気観光地である。
地下とは思えない程に広いホール内。
人でごった返すホール内を抜けとあるテーブルへ向かう。
三つほど置かれたテーブルの内にギャラリーが多いテーブルがあった。
「まーたドラ君の一人勝ちかよ。」
歓声が上がる。ギャラリーの多いテーブルにはチップが山積みになっているドラの姿。
「そろそろ時間みたいですね。」
ドラもこちらに気づいたようだ。こちらを向き子供らしい口調で周囲に聞こえるように言った。
ギャラリーからは「もう終わりかよ。」「ドラちゃん次はいつ来るの?」等の声が聞こえる。
ドラはここの人気者だ。以前ドラと街を見物していてここを見つけ、試しにポーカーを少しやってみた。
数回俺がやっているのを見てルールを覚えたらしく、ドラは勝ちまくった。
以来ポーカーにはまった様子で暇になるとここに来ては連戦連勝である。
人の心を読むのが上手いようで、運が強いわけではないのだが不思議と損はしない。
大体資金を三倍にして帰ってくるのだ。
正直子供がこんな所に一人で居たら目立つので、最初は止めてほしかったのだがドラにとっての唯一の娯楽を奪うのも忍びなく放置しておいたらいつの間にかカジノの人気者になっていた。
ドラが席から立ち上がりその場から離れようとした時
「なぁ少年。俺と勝負しねぇか?」
別のテーブルから声が聞こえてきた。
「すいません。そろそろお兄ちゃんとの約束があるので。」
丁重に断ろうとするドラ。
「おいおい逃げんのかよ?」
あからさまな挑発。ギャラリーは一斉に男へ非難の視線を向ける。
これに対しドラは目線で俺にやってもいいかと聞いてくる。
ドラにもギャンブラーとしてのプライドがあるようだ。ドラゴンがギャンブラーのプライドを持つのはどうかと思うが、ここでやらせないと今日一日中愚痴られるだろう。
仕方なく無言でうなずく。
「いいじゃ…。いいですよ、じゃあやりましょうか。」
「オッケーそうじゃなくっちゃな。」
ギャラリーから歓声が上がる。
男はテーブルを移動しドラのいるテーブルに座る。年は20代前半くらいか、格好いい部類に入る程には顔立ちが整っている。背は俺と同じくらいだろう。
「さーて、上限はなしで構わないか?」
「ええ、構いませんよ。見たところあなたのチップも私と同額くらいのようですし。」
二人の持つチップは確かに同じくらいだ。金額に直すと70万コル程か。
「んじゃあ適当に誰か座ってくれや。二人だけっつうのも味気ねぇしな。」
座るようにギャラリーに促す。周りに押されるように四人がテーブルに着く。
ここで座るとは中々の勇者だ。
ディーラーが2枚のカードを各プレイヤーに配りゲームスタート。
カジノのポーカーは通常とは違いプレイヤーには2枚の手札しか配られない。
自分の手札と後から公開される共通のカードで役を作るのだ。
最初から手札を見てゲームから降りる事も可能である。
とはいっても最初の2枚を見ただけで判断するなどあまり出来る事ではないが。
ゲームは進む。一戦目は見知らぬオッサンが勝った。手札はフルハウスなので運だろう。
ドラは一戦目は相手を見る試合と割り切っている節があるので、大体早めに降りる。
今回も一巡目ですぐさま降りたので損失はかなり少ない。
一方の男は最後まで残っていたのでドラより損失は多い。
賭け金自体が低かったので損失はそれほどでもないが。
ゲームは全く滞りなく進む。人々の欲望を渦巻いて。
二戦目も大きく動いた様子はなく、どこかの貴族かと思うほどに豪華なドレスに着られているおばさんが勝った。その様は正にドレスに着られているという表現がぴったりだ。
両者は依然動かず。今回は互いに最初からゲームに乗らなかった。静か過ぎて不気味なくらいだ。
じっと戦況を見つめていると
「あの~~」
間延びした声が背後から聞こえてくる。声質から察するに女性か。
別の人を呼んでいるのだろうと思い無視するが、声は止まない。
「もしも~し」
今度は右肩に手を置かれた。ここまでされては無視出来ない。俺を呼んでいるのは決定的だ。
背後を振り向くと柔和な笑みを浮かべた女性が立っていた。髪を腰まで伸ばしており、先ほど勝ったおばさんのドレスをこの人に着せたら貴族に見えるのではないか?と思う程には美しい。
「何か用か?」
不愛想に答える。頭の中で記憶を探るが思い当たる節は無い。
「えっと~~、あの子のお兄さんなんですよね~~?周りの人が言ってました~~」
女性が指さした方向には淡々とポーカーに臨むドラ。
「そうだが。」
ここのカジノでは何度か足を踏み入れているので俺がドラの兄だと知る者は多い。実際は違うが。
「用事があったみたいなのに~うちの人が引き留めちゃってすいません~~。」
丁寧なお辞儀。うちの人とはあの男の事だろうか。妻なのか?
失礼だがあの男とこのおっとりした女性が似合うようには見えない。
「話しに乗ったアイツも悪いんだから気にするな。」
やれやれと首を振って見せる。
「私アンナと言います~~あっちがアレクです~~。」
ゆっくりとした動作で指をドラからそらし男へと向ける。
「俺はクロノだ。あそこに座ってるのがドラ。」
相も変わらず不愛想に首でドラの方を向き答える。
「ドラ君っていうんですか~~、あの人が勝負を挑むなんて相当強いんでしょうね~~。」
どうもペースが掴みにくい喋り方だ。
「どういう事だ?」
「「人生はギャンブルだ」なんて言うほどあの人はギャンブルが好きなんですよ~~。」
こちらの問いに答えになっていない答えを返すアンナ。
人の話を聞かないのか?と疑う俺を気にした様子もなく続ける。
「自分の好きなギャンブルで~~強い人を見ると毎回ああやって挑むんです~~。最近はなかったんですけど~~ドラ君に挑んでるって事はあの子も相当強いんだろうな~~。」
ここまで話し終わるのに1ゲームは終わってる気がする。
なぜだか、マイクさんと同じ気配を感じる。
話し始めたら終わらないタイプか。
そんな俺の考えを大きく首を縦に振り肯定するかのように、アンナは喋り続ける。
「あの人は~~……」「あの人が~~……」
出てくる言葉はアレクの性格に関する事ばかり、他人からすれば惚気にしか聞こえない。
心底うんざりしながらも、適当に相槌を打っておく。
いつ終わるとも分からない無間地獄に陥ってしまった俺を救ったのは観客の空気の変化だった。
騒いでいたギャラリーが静まり返る。アンナも気づいたようで話しを止めテーブルに視線を向けていた。
俺もテーブルを見ると既に4人の姿はなくドラとアレクしかテーブルには残っていない。
2人のチップは始める前に比べて明らかに増えており、他の4人が既に消えている事から早々に負けて消えていったのであろう。
「さーてあっという間に一騎打ちだなぁおい。」
アレクは楽しそうにケラケラと笑う。それに答えることなくドラは手札を見つめている。
何戦目かは分からないが、共通カードは1枚も表になっていないためまだ開始前だろう。
両者とも無言で何事か考えているようだ。
ポーカーでは言葉で相手を惑わすのも戦術とされているが、ドラはそういう事を一切しない。
ドラ曰く言葉で揺さぶるのは二流だそうだ。そんなものに屈しはしない。
アレクのベッドラウンドがやってくる。
「んじゃあ俺の番か、全チップオールイン。」
ふざけた様子もなく冷静に全てのチップをベッドした。
観客からどよめきが聞こえる。
アレクの現在のチップ数開始前と比べて30万コル程増えている。金額にして100万コル。
中々ポンと出せる金額ではない。
「でもあの男さっきも20万コルかけてたけど、手札は2ペアだったぜ。金額にビビって他のプレイヤーが降りて勝っただけだし。」「共通が見えない状態でオールインとか正気じゃねぇ。俺だったらオールインは出来ねぇな。」「俺が見た感じアイツの強気はブラフだな。アイツの今日最高2ペアだぜ?ここで勝負賭けてきたんだろうよ。」「いや何か絶対的自信があるのかもしれませんよ。」
観客から様々な見解が聞こえてくる。
対するドラは落ち着き払って何事か考えている様子だ。
ここでオールインは正攻法ならばありえない。
素人の俺でも分かる簡単なことだ。
勝つかどうかなど全く分からない危険な賭け。
単純に考えれば勝つ確立は2分の1なので乗っても悪くはない。
テーブルにはオープンされていない3枚のカード。
あのカードたちに命運を賭けたのか。
アレクの方を見ると目を瞑りじっと決着の時を待ち望んでいるようだ。

ドラは考えていた。全チップオールインした理由が分からない。
今のところ対決はほぼ互角。最初はお互い様子見して大きな勝負はしない。ここまではセオリー通り。
男の癖を考える。ここまでのゲームで見た相手の手札はAとKのツーペアと2のワンペア、他は全てブタだった。最後のショーダウンまで行かなければ手札を見せる必要はないので全ての手札を見たわけではないが、見た感じ運は良いとは思えない。最後の最後まで強気でいき相手を降ろさせるタイプ。
堅実に勝てる勝負をレイズで少しづつ上げ取りにいく自分とは正反対。
通常であれば乗っても良い賭け。だが不思議と乗る気にはなれない。
手はじっとりと汗ばんでいた。手札はQとK。比較的強いカードなので勝算はある。
テーブルにはまだオープンされていない3枚のカード。
瞬間悪寒を感じる。死が待ち構えているような感覚。何度か戦闘で経験した事がある。
それは攻撃が来る時と同じ。避けなければ死んでしまうそんな感覚。
視線を再び手元のカードに移すと絵札が恐ろしく小さく見えた――

「……降ります。」
短く小さく消えるような声だったが、それははっきりと聞こえた。
オリル?ダレガ?観客は理解が追いつかないようで静まり返っている。
ドラがチップを片づけ席から立ち上がったところで、徐々に観客から声が聞こえてくる。
俺の元にドラが着くころには状況を理解したようで、大きなどよめきが上がった。
「行くぞクロノよ。」
そういうドラの眼は獲物を仕留め損ねた猛獣のように見える。
盛大などよめき声を背に俺たちはカジノを後にした―――

どよめきの収まったポーカーテーブルでアレクは思う。
(あそこで降りるとかよく読めてんじゃねぇか。)
場に残された3枚のカードをめくる。
ハートのAダイヤのJハートのJ
アレクの手元には残されたクラブとクローバーのJ
(あーあ勝つ時以外は手札伏せて運無いように見せかけてたんだがな。)
実際アレクは手札を公開せずにゲームを終わらせる事が多かった。
全員に公開した手札は最強で2ペアだが、途中で降りなければフルハウスもあった。
そこまでして隠し通したのは最後の一勝負までドラを油断させる為である。
(最後のは完全に運の流れが俺向きだったんだが、あのガキにそこまで見透かされるとはなぁ。)
カードが配られた時に確信した、これは最強の手札だと。
ポーカーには流れというものが存在するとアレクは思っている。
それは何千何万とギャンブルをしてきて何度も感じた事だ。
背中がぞわっとするような感覚。それは得てして勝負を決める時である事が多い。
(これだからギャンブルは止めらんねぇーな。カードの切り方一つこんなにも変わるんだからよ。)
思わず笑みがこぼれてしまう。
「ねぇ~~終わった~~?早く仕事いこ~~よ~~。」
雰囲気をブチ壊しにするような間延びした声が聞こえる。
もう何年も聞いてきた声。
「わーったよ。なんかやるやつはあんのか?」
「え~~っとね~~、シュガー神聖国行きの商隊護衛かな~~。」
「んじゃあ、それにすっか。」
いつもこの調子の相方に呆れながらアレクはカジノを立ち去った……























































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