もう既にご存知の方も多いかと思いますが、1月19日に放送されたTBS系ドラマ「ガチバカ!」にてHAWAIIAN6 の楽曲が本人たちの直接の許諾なく、劇中BGMとして3曲も使用される出来事がありました。自分達の曲が望まない形でTVで使用されたことに、バンドメンバーは激しく憤りを感じています。 PIZZA OF DEATH の基本的な姿勢として、民放では「音楽チャートを紹介する際にPVを使う」など、音楽自体を尊重する形で以外、ピザバンドの音楽・映像などが使われることは通常お断りしています。このことを踏まえて、以下の文章を読んでみてください。途中、堅っ苦しい専門用語も出てきますが付いて来てください。出来るだけみんなが理解し易いようにしますんで...。 今回、HAWAIIAN6の曲がTVドラマの中で使われているという話は、放送開始直後にあったPIZZA OF DEATH の関係者からの報告で知りました。劇中、彼らの曲は計3曲、そのうちの1曲に至ってはフルコーラス使われていて、一瞬「もしかしたら、事前に番組の制作スタッフから連絡があって、誰かがOK 出したのかな?」と思ってしまうほど、いや、そう思わなければ頭の中で話のつじつまが合わないほど、さもHAWAIIAN6が自分たちの曲を挿入歌としてドラマに提供しているような印象を与えるものでした。 すぐにバンドとも連絡を取り、バンド・レーベル共に誰も番組サイドから事前に楽曲使用許可を求める連絡を受けていないことが判明。そのことが分かった頃には、番組を観た多くの方からの報告や苦情がバンドやレーベル宛に届き始め、一時、僕たちは非常に混乱しました。 後日、PIZZA OF DEATH は今回の出来事の経緯を確認するため、番組プロデューサーの方と局の編成部の方とじっくり話し合う機会を設けました。番組サイドの説明を簡単にまとめると、「楽曲使用料をJASRACに支払いさえすればバンド(著作者)に直接許諾を得ることなく放送で曲を使用できる」という、日本民間放送連盟(民放連)とJASRACとの間での取り決めに従ってHAWAIIAN6の曲を使用しただけで、悪意は全くないとのことでした。 ちなみに、この民放連とは、「放送倫理水準の向上をはかり、放送事業を通じて公共の福祉を増進し、その進歩発展を期するとともに、一般放送事業者共通の問題を処理し、あわせて相互の親ぼくと融和をはかることを目的とする」(民放連公式HPより引用)団体。一方、JASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)は「国内の作詞家(Author)、作曲家(Composer)、音楽出版者(Publisher)などの権利者から著作権の管理委託を受けるとともに、海外の著作権管理団体とお互いのレパートリーを管理し合」い、「膨大な数の管理楽曲をデータベース化し、演奏、放送、録音、ネット配信などさまざまな形で利用される音楽について、利用者の方が簡単な手続きと適正な料金で著作権の権利処理ができる窓口」(以上、JASRAC公式HPより引用)として活動している団体です。PIZZA OF DEATH から現在リリースされている楽曲の管理はこのJASRAC にお願いしています。 上で言っている取り決めというのをもう少し詳しく説明すると、これは「テレビ局が日頃、様々な番組で大量にBGMとして使っている曲の使用許可をいちいち曲の権利者に仰ぐのも大変だから、そういう手続き上の手間を省いてもらう代わりに、一定の期間内に使う曲の使用料をまとめてJASRACに支払いますよ」というもの。「ああ、なんだ。それならちゃんと今回使ったHAWAIIAN の曲の使用料もゆくゆくはちゃんと本人たちに支払われるんじゃん。問題ないじゃん。」っていう話になりますよね。はい、そうなんです。そこに関しては何の問題もないんです、「自分たちの曲を使われるバンド自身が気分を害さない」んなら。ん?と思った方、次の説明に進みますね。 音楽に関わっていると耳にすることの多い「著作権」という言葉...ここからまたややこしい話になるけど準備はいいですか?この著作権っていう権利、実は2つに分かれているんです。ひとつは「著作財産権」。これは、著作者(今回の場合、HAWAIIAN6)の作品が無断で使われることで著作者の利益が損なわれることを防ぐ権利。そして、もうひとつは「著作者人格権」。これもその名の通り、著作者の人格が損なわれるのを防ぐ権利。簡単に言えば、著作者の気持ちを無視してその人の作品を使っちゃだめですよ、ということです。例えば、大の嫌煙家の人の曲をタバコのCMで勝手に使ったりしたら、いくら使用料を支払うからって言っても著作者人格権の侵害になります。 ちょっと回りくどい説明をしてしまってすみません。何でこんなお話をしたかというと、作詞・作曲者、そして音楽出版社がJASRACに管理をお願い出来るのは著作権のうち「財産権」だけであって、「人格権」は著作者だけしか持てない権利なんだってことを伝えたかったからなんです。 さあ、それでは話を戻しましょう!最初の方で話した民放連とJASRACとの間の取り決め、その細かい部分まではよくわかりませんが、どうであれ「著作者人格権」がJASRAC のみならず、著作者以外の誰もが管理が出来ない権利である以上、放送局の選曲担当の人は著作者の人格に十分に気を払ってBGM 選びをしなければいけないんです。多くの放送関係者はこの点を完全に見落としているようです。今回のドラマのように、より音楽が前面に来るような使われ方をするならなおさら注意が必要なんです。使った側は「善意」でHAWAIIAN6の曲を挿入歌としてピックアップしたんだろうけど、地上波番組の影響力の上にあぐらをかいた「善意」なんてクソ食らえ。バンドの創作意図を無視して、誰の曲でもいくらでもBGMとして使用して構わないなんていう考えがそう簡単に許されるわけがありません。 ということで、「JASRACとの取り決めに従って曲を使っただけ」という番組サイドの主張は、バンドがそのことを不快に感じている以上、認められません。バンドの活動方針に対してまで、多くの人の誤解を招く結果になってしまったんですから。ちょっと話はずれるけど、今現在バンドからの許諾を直接得ることなく、JASRACとの取り決め「だけ」に従って着メロ、カラオケを制作販売している業者の方々にも同じことが言えます。このことに対してもPIZZA OF DEATH の多くのバンドは不快に感じています。百歩譲って、今まではしょうがないとしても、バンドが不快に感じていると分かったからには今後どうするべきか分かりますよね? ということで、「今回のHAWAIIANの曲の使用はバンドから直接許可されていたのか?いないのか?もしされていないのなら、それは違法なのか?合法なのか?」ということを気にしている人達が多いようだったので、その部分をクリアにするために小難しい話を延々としてしまいましたが、そんなことは置いといて、今回の件で僕たちが最も残念に思っているのは、使用許可をする・しないは別として、「人として、なんで事前に一言ぐらい声をかけてくれなかったの?」ということなんです。 番組サイドには、以上の主張を含めたバンド・レーベルの姿勢に対してご理解頂きました。ようやくこうやって皆さんにも事の顛末をお話しすることが出来たし、あとは全て番組サイドの今後の対応にお任せするつもりです。まあ、どうなるか見ていましょう。 長々とお付き合い頂きありがとうございました。 ピザオブデスレコーズ |