現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年12月14日(金)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

総選挙・憲法改正―リセットボタンではない

今回の総選挙で、見過ごせない争点がある。憲法改正の是非である。かねて改正を唱える自民党に加え、日本維新の会、みんなの党、国民新党、新党改革も改正を提起している。[記事全文]

総選挙・くらし―公約の先にあるもの

社会保障や雇用など、くらしに密着した政策で政党や候補者を選びたい――。そう考えている有権者も多いだろう。3年前、政権をうかがう民主党が年金や高齢者[記事全文]

総選挙・憲法改正―リセットボタンではない

 今回の総選挙で、見過ごせない争点がある。憲法改正の是非である。

 かねて改正を唱える自民党に加え、日本維新の会、みんなの党、国民新党、新党改革も改正を提起している。

 戦後、改憲が争点となった選挙はいくどもあるが、これだけ多くの政党が正面から憲法を取りあげるのは異例だ。

 もっとも論点は、自民党の国防軍設置から維新の会の自主憲法制定、首相公選制など多岐にわたる。スローガンの域を出ていないものも多い。

 それが、日本の抱える課題の解決につながるのか。大いに疑問と言わざるを得ない。

 そもそも憲法とは、国のかたちの大枠を定めるものだ。個別の政策を憲法に書き込めば、ただちにそれが実現するというものではない。

 憲法改正が、世界にどのようなメッセージを発するかについても慎重な配慮が必要だ。

 自衛隊を国防軍に改めることについて、アジアの一部には中国への牽制(けんせい)として理解を示す向きもある。だが、大半の国は、戦前の反省から抑制的な防衛力に徹してきた戦後日本の路線転換と受け取るのではないか。米国から日本の「右傾化」への懸念が出ているのも気がかりだ。

 歴史認識や領土問題で近隣諸国との摩擦が高まるなか、それが日本の安全を高める結果をもたらすとは思えない。

 自民党などが主張する集団的自衛権の行使を認めるか否かでも、こうした観点が不可欠だ。

 しかも、改正には、衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票の過半数の賛成が必要だ。総選挙後、衆院がどのような勢力比になろうと、このハードルを乗り越えるにはたいへんな時間とエネルギーが要る。

 内外の難題を抱えるなか、そんな政治コストを払ってまで優先すべき憲法改正の課題があるだろうか。まして、土台から作り直す自主憲法論は、気が遠くなるような作業になる。

 改憲論の広がりは、国民の間に中国の大国化や北朝鮮の核・ミサイル開発に対する不安、さらに混迷を続ける日本政治への不満が強まっていることと無縁ではあるまい。

 内外の環境が大きく揺れ動くなか、国のあり方を根本から議論することには意味がある。だが、すべてをリセットできる便利なボタンなど存在しない。

 こんなときこそ、じっくり腰をすえ、現実の課題にひとつひとつ取り組む。それが政治の王道ではないか。

検索フォーム

総選挙・くらし―公約の先にあるもの

 社会保障や雇用など、くらしに密着した政策で政党や候補者を選びたい――。

 そう考えている有権者も多いだろう。

 3年前、政権をうかがう民主党が年金や高齢者医療の抜本改革、子ども手当といった大仕掛けの政策を打ち出したのに比べると、今回は大きな争点にはなっていない。

 しかし、各党の公約を子細に読んでいけば、文言の先にある社会像と課題が浮かんでくるはずだ。

 自民党や日本維新の会は、自助を重視する。社会保障を抑制し、雇用規制は緩和の方向性が色濃い。

 たとえば、自民は「生活保護の見直し(国費ベース8千億円)」で歳出削減を図る。

 素直に読めば、生活保護に投じられる年間の国費2兆8千億円を、4分の1以上カットすることになる。不正受給への厳格な対処でどうにかなるレベルの額ではない。

 生活保護が増えているといっても、絶対数では60歳以上が過半数を占める。自民は「給付水準の原則1割カット」を掲げるが、仕事につくのが難しい年齢層の人たちをどうするか。

 給付カットは、生活保護を受けず、懸命に働いてぎりぎりの生活を送る人々にも影響することにも思いを巡らしたい。

 就学援助や国民健康保険の窓口負担の減免といった基準も、生活保護と連動して厳しくなる可能性が高いからだ。

 雇用では、維新が「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」を主張する(当初は「最低賃金制の廃止」)。

 雇用創出が目的だが、どんな仕事が生まれるだろう。かつて外国人研修生は最初の1年間、最低賃金制の対象外で、低賃金・単純労働が横行した。

 あわせて掲げる「税による最低所得保障」で、どこまで賃金を補えるだろうか。

 維新と同じく競争を重視しながら、最低賃金の段階的なアップを求めるみんなの党と比べるのも参考になろう。

 一方、民主、未来、公明、共産、社民の各党は濃淡はあれ、共助や公助を重視する。

 ただ、社会保障は手厚く、負担は小さくという図式は成り立たないのに、魔法の杖でもあるかのような公約が目立つ。

 手厚い給付には負担増が避けられないと、有権者自ら公約を読み替えて、その社会をイメージしてはどうだろう。

 自分たちのくらしが政治でどう変わるのか。有権者の想像力も、また問われている。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介

アンケート・特典情報