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2006/09/21

安倍晋三と統一教会(2)

 9月20日(水)ジムで泳ぎながら単行本『X』のことを考えていた。至福の時間だ。1週間に400字10枚を書き、1年で約500枚。その合間に推敲と再取材、再々取材を行い、完成原稿は来年の末。2008年の1月に出版社に原稿を渡し、発売は木村久夫さん生誕90年の4月9日の奥付にしたい。そんなスケジュールで進めようと思ったが、さてどうなることやら。自民党総裁に戦後生れの安倍晋三が就任した。「ザ・ワイド」では、携帯メールを駆使するはじめての総裁であること、問題は何をしようとしているかであって、戦後の総裁ではじめて憲法改正を前面に出していること、アメリカの『Newsweek』、『TIME』では、危険なナショナリスト、国家主義者などと評価されていること、それは対アジア外交への危惧だということなどを語った。安倍晋三は26日に総理大臣に就任する。その直前に行ったのが北朝鮮への金融制裁だった。小泉政権のもとでの制裁発動だが、この方針は安倍主導だ。「北朝鮮のミサイル又は大量破壊兵器に関連する資金の移転を防止する等の措置について」という案件を総裁選前日に閣議了解したのは、制裁発動が総裁選の国会議員票に影響すると読んだからであった。アメリカでは12企業1個人に資産凍結などの制裁が発動されたが、日本では15企業、1個人が指定された。そこで注目すべきことは、「朝鮮リョンボン総合会社」が制裁リストにあげられていることである。マスコミは書かないが、この会社は統一教会系企業である「平和自動車」と北朝鮮の「朝鮮民興総会社」が資本比率70対30で設立した「平和自動車総合会社」の提携先なのだ。

 「平和自動車総合会社」は2002年4月から北朝鮮の南浦工業団地で自動車の組み立てを行っており、宣伝用看板は平壌市内でも見ることができる。社長の朴相権は、1952年生まれで「2075双」と統一内部で呼ばれる合同結婚式に参加した。この指定がなぜ重要かといえば、統一教会から北朝鮮への送金ルートとして「平和自動車総合会社」が最大の比重を占めているからである。送金責任者のHは、慶応大学文学部を卒業し(卒論テーマは「紫式部」)、1975年の合同結婚式に出席(「1800双」)した古参幹部で、1982年から香港で暮らしている。北朝鮮への送金のための会社は「GBL」といい、北朝鮮への振込口座は中国の瀋陽にある「平和自動車」だ。日本からの送金は韓国第一銀行を通して行っている。そこに「朝鮮リョンボン総合会社」が複雑に関わっている。統一教会から北朝鮮への送金ルートはほかにも2つある。ひとつは平壌で経営するポトンガンホテルで働いている従業員の人数を水増しして「給与」を送る方法であり、もうひとつは信者の定州ツアーである。それらに比べて「平和自動車総合会社」を通じての送金が比較にならないほど大きい。金融制裁はそこにくさびを打ちこむものである。安倍晋三は北朝鮮への強行姿勢ゆえに、祖父の岸信介や父の安倍晋太郎が親密だった統一教会に対し、距離を置くだけではなく厳しい対応を取っているのである。

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コメント

安倍さんがその任期のあいだに何をするか、何ができるか、今の時点では誰にも不確定であり未知数である。いまわれわれが持っているのは「感じ」に過ぎない。その感じについて言えば、その軽さと軽さゆえの怖さということか。軽さをなぜ感じるか。自民党のこれまでの指導者は、少なくとも二つの重荷を背負っていた。それは戦前の日本歴史であり、戦後の対米従属である。もちろんその時々でいろんな言い方や言い逃れをしてきたが、それは政治家の重さになり逃れられない荷として背負わされていた。安倍さんはどうだろう。戦前の歴史の評価については、そんなことは一旦クリアにしてもかまわないんじゃない、というスタンスのようだ。これだけ深い対米従属体質についてもなんら為政者の課題という意識は薄いらしい。そういう意識はネット右翼の無邪気な言論にも通じる軽さと言える。そしてそれはアジア諸国との深い段差を生んでいるものだ。そういう軽さを持った権力の登場ということか。そういえば、安倍総理誕生の日が転機だったなあ、などと後から思い出されることがあるのだろうか。

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