女戦士
 
↑海外ではアウトだった表現(ビキニ女戦士)の例。



12月16日に迫ってきた第46回・衆議院議員総選挙。
日本中が選挙モードに入ってきた感じですね。

前回は、「漫画・アニメファンの為の分かりやすい公約要旨」と題し、
経済対策と社会保障を中心に各党の関連マニフェストを見ていきましたが、
 「てゆか表現規制ってどうなってんの?」というお声を多く頂き、
表現の自由に対する関心の高さを伺う事が出来ました。

という事で今回は、漫画・アニメファンと規制問題について、
まじめに考えてみたいと思います。


―――


結論から言いましょう…。

実は…諸々の規制化に関しては選挙の争点にならないんですよ。
なぜなら、社民党以外は公約にすらしていないからです!


 _人人人人人人人人人人人人人人_
 >    な なんだってー!!    <
  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
   (; ・`д・´)   (`・д´・ (`・д´・ ;)


例えば自民党はですね、公約原案の中では表現規制を謳ってます。

【自民党選挙公約案】
 www.jimin.jp/policy/pamphlet/pdf/j_file2012.pdf

 188. 家族の絆を深め、家庭基盤を充実させ、全員参加型社会の実現へ
   → 「青少年健全育成基本法案 」の法整備など総合的な施策を推進 します。


ところがこの一文は、選挙用に作った公約集の中から外してあります。


公明党も同様に、政策集の中に規制に関する文言がありますが、
PDF資料の中では明らかにしていないんです。

【公明党政策集】
 公明党政策集 Policy2012 | 重点政策 manifesto2012 | 公明党 衆院選2012

 ・ 人権が尊重される社会の構築
   → 児童ポルノの所持等を処罰する罰則を新設します。


両党とも、反対や慎重意見が多い事は承知しているはずなので、
文言削除は選挙対策と見て間違いありません。あぁ恐ろし。


問題は、反対を唱える政党の公約の中でも明文化されていない所です。
チルドレンファーストを謳う民主党や、前回の参院選で規制反対を訴えた共産党なども、
デリカシーに触れる文言の一切を公約集に載せていません。

これもまた、それぞれの政党を支える人権団体に配慮しての事だと思われますが、
有権者としては、非常に分かりにくいったらありませんよね。


そこで、各党の表現規制に関する是非を一覧化してみました。
誤りがあれば遠慮なくご指摘下さいませ。



表現規制


基本的に、保守系の宗教団体を支持母体とする政党は賛成で、
リベラル系の労働団体を基盤とする政党は反対と見ていいと思います。



よって、いまいち政党カラーのはっきりしないみんなの党も、
バックにある統一教会が純潔教育を謳い、規制に賛成するデモまでやってますから、
リベラルを旗印に掲げておきたい渡辺さんの本音の部分は賛成だと見ています。

創価学会が母体となる公明党や、神道政治連盟と仲良しな自民党議員の一部も、
表現規制に全面的に賛成してますし、そういう声明も発表してます。
あくまで前提としての話で、もちろん党内には反対意見もありますが、
我が国は政教分離が鉄則なので、こういった声に党が引き摺られる事は、
本来であれば、あってはならないはずなんですけどね。


他を見ていくと、未来の党と維新の会は党内意見が纏まっておらず、
未来の場合は、党首・嘉田さんが規制賛成派の人達とお付き合いがある一方で、
民主党から離党してきた人達はこぞって反対してますし、
維新に至っては、そういう議論すら交わされた事がないと見られ、
今の所はっきりしてるのは、太陽の党からの合流組は規制に賛成しているくらいです。

また、社民党は人権団体の声も反映して、現物(ソフト)規制には賛成しており、
そしてみんなの党は、強固に賛成してた人が参院選で落選しちゃったので、
表現(フォーマット)規制に関しては反対意見の方が多くなりました。

こうなると、表現規制法案不成立のキャスティングボートを握るのは、
未来と維新の党内合意がどうなるかと、みんなの党がどちらに付くかですね。
反対の意志表示をしてる人は多いので、それを応援してあげるのもいいかも知れません。
まぁぶっちゃけ言うと、どっちに付くか分からない政党より、
どっちかはっきりしてるとこに投票しちゃえばいいんでしょうが(爆)。


―――


では、賛成派がここまで規制に躍起になる理由とは何なのか。

有識者の中では「倫理の上で不適切」だからという意見が大半ですし、
そういった暴論なら、漫画・アニメファンが異論を唱えるのは当然でしょう。
この国には、憲法で定められた「表現の自由」があるのです。
どちらの意見が誤りであるかは明白ですしね。

さらに、規制論の大半は、一部の声のでかい保守系の団体によって、
誤った方向に拡張されてきた経緯がありますので、
極めて観念的であり、ゆえに突っ込み所が多いんですが、
そうした声にかき消されてきた、まともな意見というのもあるんですよ。


表現規制の真の問題は、生産リソースが制限される事で、
漫画・アニメの市場規模の減少に繋がりかねない所
にあります。
実際に、ゲーム業界ではいち早く暴力・性表現への規制を実施した結果、
いわゆるZ指定の市場を海外企業に根こそぎ奪われてしまいました。

リソースの話をすると、そもそもなぜ生産者人口の少ない日本で、
漫画やアニメがこれほどまでに高度化したのかと言えば、
野球と同じく、アマチュア市場での技術水準がぶっちぎりで世界一だからです。
プロ並みの絵が描ける人が、アマチュアレベルでごろごろ居る。
そういった状況の中で、例えば「萌え」のような絵がけしからんからと、
「萌え」に通じる全ての表現を禁じたらどうなるか?
当然、プロになる人材が減り、従って生産供給力も落ちます。

要するに、倫理上の理由を挙げて表現規制に賛成してる人達は、
「炎天下での素振り練習を禁じよ」と言ってる高校野球の父兄さん方と同じで、
それをやると生産性が落ちてしまう事を考慮に入れてないのです。
特に表現力は、商品で言う付加価値に当たる部分ですので、
規制化を進めるなら、商品力を高めるそれなりの対案を示す必要があります。


そして実はその対案こそが、クールジャパンなのです。

ここまで見てきたのは、あくまで国内市場での話であり、
日本では付加価値として認められる表現が、海外市場に目を向けると、
嫌悪の対象として輸出の障害になるケースが多々あります。
あのアメリカですら『ドラクエ3』のビキニ姿の女戦士に服を着せてますし、
日本で一般的な表現方法は、海外では一般的ではありません。
「萌え」の扱われ方なんて、絵を見せたら顔をそむけられるほどです。


女戦士・改

   ↑ 女戦士(日本)         ↑ 女戦士(海外)


大方はソフトをローカライズする際に修正されていますが、
問題が表現方法に根ざしている場合だと、全部にモザイクをかけるとか、
馬鹿げた修正を加えなくちゃいけなくなるので、それなら初めっから、
日本から輸入しなくていいや、という事になりかねません。

そこで考えられたのが、ソフトではなく、フォーマットを規制する事。
「デザインに起こす段階で女戦士のビキニの着用を止めさせる」という発想です。
純粋教育という実に都合の良い賛成論も転がってましたから、
そうした保守系の団体に規制化の旗振りを任せる事になったんですが、
結果として議論がおかしな方向に進んでいっただけで、
本当は経済事情を根拠とした、海外に市場展開する為の増収政策なのです。
クールジャパンと表現規制は、もともと1セットだったんですよ。

つまり今回の衆院選は、国内の市場を伸ばして内需を高めるか、
海外に市場を広げて外需を獲得するかの二択選挙であり、
表現規制に対する是非は、TPPの問題と非常によく似ているという訳ですね。


―――


しかしながら、漫画・アニメの市場は8割が内需で占められており、
残り2割の外需シェアを拡大する為だけに、国内市場を犠牲にするような政策は、
あまりにも短絡的と言わざるをえないでしょう。


貯蓄残高

↑日本の銀行の預金超過額の推移(単位:十億円)。水色に注目。

引用: 第81回 法人税引き下げと泥縄式対策(2/3)


日本の銀行預金の貯蓄残高は、何と160兆円あります。過剰貯蓄の国です。
クールジャパンが本当に増収を目的とした政策であるのなら、
これだけ巨大な内需の掘り起こしを真っ先にやるべきなんです。

つまり今必要なのは、国内需要を喚起する為の政策であり、
それを阻害する安易な規制には断固として反対していかなければなりません。


嫌消費世代と言われて久しい若年世代ではありますが、
実際はただの消費傾向の変化に過ぎず、中でも漫画・アニメファンは、
新しい消費の中心となって、日本経済を影から支えてきました。
『エヴァ』の新作が発表されればこぞって映画館に足を運び、
テレビで『ラピュタ』をやれば視聴率20%越え、みんなで「バルス!」と叫びます。
アニメの主題歌がオリコン1位を獲得する時代において、
オタクはもはや少数派ではなく、多数派になっているんですよ。

その為にも、今度の衆院選では、我らが漫画・アニメファンが1つになって、
数で圧倒しようとする規制賛成派に負けない声を上げていくべきだと思っています。
若年世代の投票率が上がらないのはDQNのせいにでもして、
私達オタクこそがマジョリティである事を証明しようじゃありませんか。

…だんだん選挙演説みたいになってきましたね。


ともあれ、審判の日まであと1週間。
今週末には、いよいよ日本の行く末が決まります。

当日はもちろん、ゲームの発売日並みに迷わず投票所へゴーです。
時間を作れない人は期日前投票を済ませておきましょう。
夜の8時にはテレビを付け、落選議員をプゲラする準備もお忘れずに。

皆さんの一票でこの国の未来が少しでも良くなる事を祈り、
この記事を終えたいと思います。


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