【TRPGリプレイ連載056】「大賢者と混沌の塔」第六話

 
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【TRPGリプレイ連載056】「大賢者と混沌の塔」第六話

2012.12.10
「TRPGリプレイ」インデックス

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前回までのあらすじ】
 穢れた聖剣の浄化のため、賢者の塔の解放任務を請け負ったパーティたち。ミノタウロスとの戦闘を切り抜け、なんとか塔の3階にたどり着いた彼らでしたが、しかし扉に手をかけた瞬間、ゲームマスターは全員のキャラクターシートを回収してしまいます。


■■俺がお前であいつが以下略

GM:(全員のキャラクターシートをマスタースクリーンの裏に隠しつつ)じゃあこれから全員にダイスを振ってもらいたいんですが、最初に振りたい人~?

さりあん:むー。よくわからないけどそれなら最初にやってみる。1D6でいいのね? (ダイスを振る)2。

ギネス:(全員の人数を数えて)6人いるってことは、これは……。

ロコ:シャッフルか!?

クレド:きっとそうですね。

 実はこれは今回のセッションの目玉イベント。いわゆる中の人の入れ替わり現象です。回収したキャラシートを重ねてダイス目で入れ替わりキャラを決定。今回は全員が必ず入れ替わることを想定しているので、自分のキャラシートを引き当てた場合には振り直しとなります。

 プレイヤーはそろそろ戦闘にも慣れてきた頃なので、この機会に別の職業で戦闘を体験してもらおうという仕掛けなのですが、慣れないキャラを使って戦闘で死亡してしまうと問題です。この塔ならば死亡する前に塔の外に放り出されるという保険があるため、致命的なミスをしても他プレイヤーのキャラを死亡させてしまうというリスクは避けられるというワケです。

 なお、筆者としても、キャラの入れ替わりはシティアドベンチャーシナリオで使うことはあるのですが、戦闘シナリオで使うのは初めてだったりします。

GM:というわけで、気付くとそれぞれの身体と心が入れ替わっております。

ロコ:ええと、クレドになっちゃいました。

クレド:そういう僕はロコになっています。

ロコ:俺がお前でお前が俺で状態に。階段を転げ落ちた記憶はないんだけどなぁ(笑)。

タカナ:さりあんになってます。

ギネス:驚きのエリーちゃん14歳に。

さりあん:ギネスだー。

GM:というわけでエリーはタカナになっています。

▲イラスト:みずきひとし氏

[“中の人”入れ替わり状況]
さりあん(シーフ) → ギネス(プリースト)
ロコ(ウォリアー) → クレド(ウォリアー)
クレド(ウォリアー) → ロコ(ウォリアー)
タカナ(シャーマン) → さりあん(シーフ)
ギネス(プリースト) → エリー(ナイト)
エリー(ナイト/NPC) → タカナ(シャーマン)

 以後、リプレイは中の人表記で進みます。

GM:さて、とりあえず部屋の中の様子を説明しましょう。2階のように檻の中にいる、ということはなくて、このフロアは荷物置き場っぽい様相です。部屋の隅に無造作に宝箱のようなものが積み上げられているのが目を引きますね。宝箱は16個ほどあります。

さりあん:……ミミック(宝箱型のモンスター)か?

GM:ほかには、壁ぞいに研究用のデスク、武器や防具などの類も置いてあったりするのですが、そのあたりは蜃気楼のようになっていて、手を伸ばしても遠くに行ってしまい、触れることができません。唯一、次のフロアへ行けるであろう扉だけが実際に触れることができますね。

ロコ:この部屋自体の大きさは?

GM:直径15メートルくらいの円形の部屋です。

ギネス:うーん、ここは何にも触れずに上でしょうね。

さりあん:そうね。上へ行くであろう扉を見てみましょう。

GM:扉にはカギはかかっていないハズですが、どうあがいても開きません。

さりあん:むー?

 実はこのフロアは入れ替わり状態が改善されるまで扉は開かないという仕掛けになっているのです。

さりあん:ということは宝箱を開けてみるしかない、と。

ロコ:16分の1で当たりとか?

タカナ:宝箱は全部同じものなんですか?

GM:細部はいろいろ違いますね。でも大きさの差異はほとんどなくて、だいたい同じ大きさのものが無造作に積み上げられているといった感じです。大きさはひとかかえで持ち上げられるか持ち上げられないかといった程度で。

さりあん:2人がかりなら運べそうね。運んで床に並べてみようか。

ロコ:4×4に配置できるからわかりやすいかも。宝箱に、たとえば同じ色の組み合わせがあるとか、大きさがまったく同じものがあるとか、そういった統一性や法則性のようなものってありますか?

GM:うーん、そういったものはないようです。似たような宝箱もあるにはありますが、どれもバラバラですね。

ロコ:ええと、じゃあ通信のクリスタルを使ってアロルドさんに聞いてみたいんですが……。

GM:ああ、部屋の中に入った時点で通信は通じませんのであしからず(笑)。

さりあん:役に立たないっ!

ロコ:都合のいいときばっかり通信障害になりやがって(笑)!

ギネス:「通じねぇじゃねぇか!」って言って床にクリスタルを叩きつけて壊したい(笑)。

GM:いざというときに脱出できなくなりますよ? あと、エリーの姿でやらんでください。

タカナ:ていうか、みんな身体が入れ替わっても何事もなかったかのように探索を続けていますよね(苦笑)。

GM:確かに。一言も感想なしかい(笑)。

ギネス:あっ、エリーになってるってことはさっきの戦闘でHPが減ったままか。NPCだからいいやと思って回復させておかなかったらこんなことにっ(笑)!

さりあん:ええと、入れ替わったらそのキャラの能力で戦ったりすることになるのかな。

GM:はい。さりあんは中身がさりあんですが、身体がギネスなのでシーフ能力は使えませんね。代わりにプリーストマジックが使えますけど。

ギネス:まぁHPは減っているけど、死んでも私じゃないからいいか。

 相変わらずですが、とんだ破戒僧です。

ロコ:ひどいな(笑)。

ギネス:(キャラシートを眺めつつ)うーん、エリーはもうちょっといい装備持っておけよって感じですね。

GM:ナイトなんだからプレートメイルにしておけって? どんな状況でも動きやすいように家紋入りの高品質レザーアーマーを着ているという設定なんですよ。……さて、結局宝箱を運んで4×4の状態に並べた、ということでいいのかな?

ロコ:そうしてください。さて、私は今、身体がクレド状態なので、バトルアックスでテキトーな宝箱を粉砕してみようかと……。

クレド:ちょっと待って(笑)!

ロコ:ええ? じゃあ……「全員でひとつずつ同時に開けてみるかい?」と。

さりあん:それは最悪の事態になりそうだからやめてっ(笑)。

ロコ:「お兄ちゃんの言うことがきけねぇってのか!?」(一同爆笑)

GM:ちょっと待て(笑)。みんな結局、誰が誰と入れ替わってるのか確認を行っていないよね?

ロコ:ええ。だからわざとやってます(笑)。

さりあん:確認! 確認しましょう! 「チョト待ッテクダサイ。ぎねすダケドワタシサリアンネ」。

 なぜエセ外国人口調なのか。

クレド:ロコの姿で「ボクがお兄ちゃんだよ?」と。

GM:一番年下で女の子なのにお兄ちゃんとはこれいかに。ええと、こちらはタカナが目深に被ったフードを取らずに、消え入りそうな声で「わたし……エリーです……」。

さりあん:いやな雰囲気だ(笑)。

GM:いや、ここでバッとフードを取って、みずきさんにタカナの素顔をイラストとして描いてもらう手もあるか(笑)。

ギネス:エリーの姿で「私はサイフ。みんなのおサイフ」。

GM:おいっ(笑)!

ギネス:「実はギネスです」

タカナ:私はさりあんの姿ですけど、普通に名乗っておきますよ……。


■■4×4の宝箱

GM:わかっちゃいたけどややこしいことになってるな。で、そんな状況で宝箱を運んで並べたわけです。さて、結局どうするんです?

タカナ:もはや運でしかないので、端から開けてみましょうよ。

GM:(うーん、実は16個のうち10個はミミックなんだよなぁ。並べた場所のどこにミミックが潜んでいるか、今決めておこう)さて、では左上から1番、順番に16までナンバリングしまして……どの番号を開けますか?

さりあん:まずは1番で。

GM:了解……というか誰が開けるんですか?

ロコ:開けると宣言した人で。

タカナ:もっとも頑丈な人で。

GM:意見を統一しようよ。開けると宣言したのはさりあんで、頑丈さで言うとギネスだから……今はさりあんか。あれ(笑)?

さりあん:ひどいや! 身体が入れ替わってもあたしが開けることになるのね(笑)!?

GM:っていうかここはシーフじゃないの?

タカナ:あー、えーと、カギがかかっていたりワナを外す必要があればやりますけど、単に開けるだけなら……まぁワナチェックくらいはやりますよ?

GM:(ダイスを振る)カギはかかっていませんし、ワナもないようですね。

さりあん:じゃあギネスが開けるか。

ギネス:私の身体を大事に扱ってくださいよ(笑)!

 ここまでお読みの方ならおわかりのとおり、この流れは単にタカナのプレイヤーが危険を回避したかったにすぎません。外見や能力が変わってもプレイヤーの立ち位置は変わらないようです。

GM:(ええと、1番はミミックだな。このミミックは1体が襲い掛かると全部襲ってくる設定だから……)1番の宝箱を開けると、3番、4番、5番、8番、9番、11番、12番、13番、15番のフタが一斉に開いて襲い掛かってきます!

さりあん:ええーっ! ミミックかとは思ったけど、そんなにいるの!?

ギネス:当たりを引いたなぁ。

GM:いやまぁほとんど当たりなんですけどね。姿を見た人は魔術スキルチェックでモンスターを認識してみてください。成功した人はわかりますが、もちろんミミックですね。ミミックは個々の能力は低く、これといった特殊能力もありません。ただ回避がやや高めです。というわけで一斉に襲ってきますので戦闘開始となります。いつもイニシアチブはさりあんが振ってるけど、中身が振る? 身体が振る?

タカナ:んじゃ振ってみますか。(ダイスを振る)9。

GM:それはパーティ側の先攻ですね。ええと、ミミックはAから……Jまでいますね。……なんだJって。自分で書いてて未体験の数だな……。

さりあん:わかりにくいからミミック1~10にしましょうよ(笑)。


■■入れ替わりバトルは混沌に拍車をかける!?

GM:とりあえず最初はさりあん……の身体を動かしているタカナ。

さりあん:弓だ! 弓で攻撃するんだ!

タカナ:まぁ弓は自分でもよく使うので、いつもどおりって感じですね。クロスボウでミミック01に射撃します。(ダイスを振る)命中してダメージは12点。

さりあん:次はロコたんの番だから……お兄ちゃんか。

クレド:あ、そうか。

タカナ:……これでダイス目がどうなるかが注目点ですね。

クレド:くっ。(ダイスを振る)……。うーん、2回ともハズレました(笑)。

タカナ:……やはりダイス目の悪さはプレイヤー由来のものでしたか(一同笑)。

GM:次はクレドの身体のロコか。

ロコ:(ダイスを振る)2回ともハズレです。さすがクレド……。

GM:ハズレたらキャラのせいなのか(笑)。

ギネス:むむむ、これは支援魔法をかけておいたほうがよかったか!?

GM:ではNPCとなっているタカナの身体を操るエリーの順番。回避アップの支援魔法を使わせますか?

ロコ:相手の攻撃回数が多そうだから使っておいたほうがいいかも。

タカナ:そうですね。

GM:では全員に回避率アップの精霊魔法がかかります。MPを5点消費、と。「闇の精霊シェードよ! 敵の目をくらませろ」的な感じで。次はエリーの身体を操るギネスの番。

ギネス:ミミック01に近接攻撃しますね。(ダイスを振る)1回目はハズレ。2回目は……おっとクリティカルヒット。13点のダメージです。

クレド:素晴らしい!

GM:わりと食らいましたがまだやられていません。

さりあん:えっ、それなりにHP高いな。これが10体は結構キツイぞ……。と、ギネスの番か。ここは魔法を使うべきなんだろうけど、魔法の種類がさっぱりわからないぞ(笑)。

ロコ:祝福魔法のブレスがいいんじゃないですかね。全員に効果のある命中率向上の魔法だし。

ギネス:それがいいですね。MPは19点残っていたので、まだ大丈夫なはず。

さりあん:ではギネスはブレスを唱えます。

GM:了解。味方全員の命中率にボーナスが得られます。次回攻撃から加算してください。……さて、敵フェイズですね。周囲がミミックだらけなので誰に襲い掛かってくるかはわかりません。ランダムで決めていきましょう。ええと、どうやって決めるか。まず誰に何回攻撃が行ったかを決めてから命中判定したほうが混乱が少ないか……。

さりあん:数が多くて大変そうだ(笑)。

 このミミックとの戦闘は、とにかく数を出すことで下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる的なノリでやってみようと思ったわけですが、実際にやってみるとミミックの戦闘管理がかなりの手間になってしまいました。10体のミミックのどれが誰に攻撃したかなどを把握するのが大変で大変で……。

 ゲームマスター側がそんな苦労をしつつも、ミミックの命中率はさほど高くはなく、思ったよりもプレイヤー側に損害を与えることができません。逆にプレイヤーは数字の若いミミックから順番に各個撃破をし、確実に数を減らしていく作戦に……。ミミックの数が減ってくると、戦闘処理は楽になったものの、個々のミミックは強くはないため、すでに脅威ではなくなっていました。

ギネス:最後のエリーの攻撃は(ダイスを振る)クリティカルで12点ダメージ。

GM:むう、戦闘ラウンド12ラウンド。支援魔法が切れるまでは粘ったが、それまでかー。そして今回は何気にエリーが大活躍。

ロコ:(クレドに向かって)ロコは本当はもっとできる子です(笑)!

クレド:ええーっ。

タカナ:ダイス目はどうしようもありませんな……。

さりあん:とりあえずエリーさんことギネスはHPを回復させておきましょうかね。

ギネス:そうですね。何回かダメージを受けたのでお願いします。……ところでカオス的な何かは晴れた感じでしょうか?

GM:えーと、明確に感じられるわけではないですが、重圧的なものは多少軽くなった気がしなくもありません。

ギネス:そして、私の身体はまだエリーのままでしょうか?

GM:はい。エリーのまんまですよ。

さりあん:まぁ、残った宝箱を開けてみましょうか。

GM:うーん、どれが入っていることにしようかな。開けた人は1D6を振ってみてもらえます。

さりあん:(ダイスを振る)1です。

GM:チェインメイルが入っていました。

 こうして残った宝箱を次々に開けていくパーティたち。チェインメイルのほかに、ミディアムシールド、バトルアックス、ヒーリングポーション6本、ダガーを手に入れます。それぞれが魔法の品ですが、未鑑定なので効果まではわかりません。

GM:では最後の宝箱を開けるとなにやら糸電話のような物体が入っていました。以下のような注意書きもあります。「息を吐くことで魂魄を離脱させる」だそうです。

さりあん:魂が抜けちゃうの?

ロコ:誰かがアストラル体(精神体)になって向こうの扉を開けてくるとか?

ギネス:うーん。誰が使う?

タカナ:シャーマンにやらせるのがよかったのかもしれないけど、僕は今はシャーマンじゃないし。

GM:NPC扱いになっているエリーことタカナに行けというのはやめてね(苦笑)?

さりあん:プリーストが行ってきます?

ロコ:いや、プリーストは唯一の回復役なんでやめといて。

GM:そういえば前回のセッションの最後でもプリーストが随伴しなかったおかげで大ピンチになってたからなぁ……。

タカナ:じゃあ人の身体ですけど、シーフのさりあんが行きますか?

さりあん:そうだね。悲しいけどシーフだからね……。よよよ。

GM:(うーん、何か決定的に勘違いしているな)んで、糸電話をどうやって使う?

タカナ:糸電話……? あ、両方に口があるのか。

 ゲームマスターのヒントであることに気付くプレイヤーたち。そう。これは扉を開けるためのアイテムではなく……。そして次回も“混沌”の塔らしい様々な事件がパーティに降りかかります。ご期待ください。


■関連リンク
みずきひとし氏Webサイト「おんなのこHP」


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