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孤立

「ふん!こいつが貴族様に逆らった馬鹿な奴か」
学園の中でももっとも日が当たらない場所に、学園内の使用人奴隷が住む建物がある。
そこの奴隷頭アモンは30代の禿頭の大男だった。
先ほどの興奮から少しさめてきた隼人は、恐ろしげな外見の男を見て恐怖した。
「あいさつせんか!!!」
取り巻きに脅される。
「……」
隼人は無言を貫いていた。
「可愛い態度をとるじゃねえか!オラ!!」
取り巻きの一人が腹を殴る。
鳩尾に拳が食い込み、隼人は胃液を吐いてしまう。
「きたねえんだよ!」
まともに顔面を殴られ激痛が走る。
その後も取り巻きたちの暴行は続いた。
「それくらいにしておけ。明日からこき使ってやるんだからな」
大物ぶって取り巻きたちの暴行を笑ってみていたアモンが言う。
「……いいか。王様の下が貴族、その下が騎士、さらにその下が平民だ。俺たち奴隷はさらに下の物みてえなもんよ」
「……」
「だがなぁ、真面目に貴族さまに仕えていたら、おこぼれも回ってくるし、うまい飯にもありつける。奴隷女も抱き放題さ!気にいらねえ奴隷を好きに殺すこともできる。それが俺たち奴隷頭さまだ。よく覚えておけ!!」
最後に一発殴りつけると、隼人は地面に倒れ付した。。
「まあ、今日の所はよかろう。王子から教育してくれと頼まれているから、これからもじっくり可愛がってやろう」
不気味な笑いを浮かべるアモン。隼人は早くも暗雲垂れ込めてきた未来を不安に思った。

トーキン神法学院 食堂

「こんなまずい飯が食えるか!!」
ガシャンと音がして食器が床に叩きつけられる。
「も、申し訳ありません」
地面に土下座して謝る幼い黒髪メイド。
「まあまあ、魔民が作る食事なんてこんなものよ」
「はっ。運のいいやつだな。貴族であるわが主の慈悲に感謝しろよ」
「はい……」
真っ青な顔をして立ち上がろうとするが、その前に頭を踏みつけられる。
「ひっ」
「誰が頭を上げていいといった。こんなくそまずい料理を運んだ罰だ。お前が責任を持って始末しろ!!」
騎士の言葉に、土下座したまま地面にぶちまけられた料理を食べる。
「ふふふ。身の程を知りなさい。私が一言言ったら、アンタも罪人として処刑よ」
「は、はい。申し訳ありません」
涙を流しながら謝罪する。
ユリスが処刑されてから、貴族や騎士たちによる魔民いじめは顕著になっていった。
学園に買われている魔民メイドを貴族とはいえ一生徒が自分の判断で処刑しても、何のお咎めもなく普通に生活しているのである。
あの事件で貴族たちは自分たちの権力を再確認し、行使することに喜びを覚えていた。
「情けない。騎士ともあろうものが弱いものいじめとは」
そのような光景を見るたびにイグニスは不快になるが、自分の主人であるブルーリンから逆に説教される始末。
「彼らの行動は正しいよ。俺たちみたいな上の立場に逆らうとどうなるか、教え込んでやってるんだ。そうすることで、やつら卑しき魔民が盗難したり反抗したりしなくなるんなら、彼らのためになるだろう」
口元をゆがませて言い放つ。
(これは何だ。貴族の誇りは?騎士道はどこにいったのだ。上に立つべき者が非道をして、それを誰も正さぬとは……この国はどうなっているのだ)
そう思いながらも、貴族や騎士から忌まれることを恐れて放置している自分にも腹が立つが、何もできない。
イグニスは毎日憂鬱な気持ちですごしていた。

台所の親方の所に連れて行かれる隼人。
「荒神隼人です。強引に奴隷にさせられて、こちらにご厄介になることになりました。これからよろしくお願いします」
「話は聞いている。俺は料理長ジョアだ。鼻っ柱が強い奴はキライじゃない……が、学園では貴族に逆らうな。お前の行動でさらに他の奴隷がひどい目にあうこともあるんだ」
隼人より10才くらい年長の黒髪の男が厳しい目で言う。
「ひどい目……?」
「貴様と仲良くしたからユリスは目をつけられて、盗人の汚名を着せられて殺された。何が魔王だ。そんなものがいるのなら、我々は5000年も虐げられているはずがない。ただの御伽噺だ」
ジョアの言葉に下を向く隼人。
「貴族や騎士の横暴も日増しにひどくなっていく。……とにかく、貴族や騎士には逆らうな。ユリスはいい娘だった。これ以上犠牲者を出したくない。余計なことをしないでくれ
そういったきり、ジョアは口をつぐんだ。

食事の配膳、学園内の清掃、買出し、その他もろもろ。
学園にいる黒髪奴隷たちの仕事はたくさんあり、皆が分担して行っていた。
もっとも、隼人がその中に混じって仕事をしようとしても、誰も近づいてこない。
「なあ、あの……」
話しかけても逃げていくばかり。
奴隷たちは、ユリスとおなじ事が自分の身にも起こるのではないかと怯えて、隼人にかかわりを持とうとしなかった。
「学園奴隷たち!!北の平原に集まれ!!騎士様の訓練をする!!」
裏庭の掃除をしていると、奴隷頭の大男がきて怒鳴りあげる。
それを聞いて真っ青になる周囲の奴隷たち。
隼人がぽかんとしていると、いきなり奴隷頭に殴りつけられた。
勢いよく飛ばされて壁にたたき付けられる。
「くそ……いてえ!」
「さっさと行かんともう一度食らわすぞ!!」
奴隷頭の脅しに恐怖して、隼人はのろのろと従った。

馬車に押し込められ、北の平原に連れて行かれる奴隷たち。
隼人の周りの奴隷たちはみんな黒い髪の奴隷たちであり、皆震えていた。
「なあ、騎士の狩猟訓練ってなんだよ!!俺たち何をされるんだよ」
周囲のものに聞いても、誰も返事をしてくれない。
しばらくすると、馬車が止まり、奴隷たちは平原で下ろされた。

その場に取り残される50人ほどの奴隷たち。
それぞれに狐や鳥を模した覆面が配られる。
「今日は何人怪我するかな……」
「俺は今度こそだめだ……」
そんな声が聞こえてくる。
たまらず隼人が何が起こるか聞こうとしたとき、肩をたたかれた。
振り向くと狐の面をかぶった奴隷が女の声で忠告してきた。
「いい、これから騎士が襲ってくるから、私たちは逃げ回るの。あなたも覚悟を決めなさい……」
「君は?」
「私はルノー。ユリスの親友だった。あなたのせいでユリスは……。でも、ユリスは貴方を私達の希望だといった。もし本当にそうなら、ユリスのためにも死ぬんじゃないわよ!」
そういって離れていく。
他の奴隷たちも平原のあちこちに全速力で走って散らばっていった。
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