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【国際】

裁判長涙で「おわび」 韓国「北スパイ」また無罪

 【ソウル=共同】1970〜80年代、韓国で摘発された「北朝鮮のスパイ」の再審無罪判決が続出している。韓国に留学中の75年に連行され、約5年10カ月間服役した在日韓国人二世の金鍾太(キムジョンテ)さん(62)=東京都練馬区=にも、ソウル中央地裁が7日、再審で無罪を言い渡した。

 崔東烈(チェドンリョル)裁判長は、拷問による虚偽の自白で金さんの容疑がでっち上げられたと断定。三十六年前、無実を訴える金さんが拘置所の床で書いた八十二ページに上る陳述書の冒頭部分を「判決文に載せ、裁判所の教訓としたい」と述べて朗読し、涙で謝罪した。「裁判所と韓国国民を代表しておわびします」

 大阪生まれの金さんは、日本社会での差別に悩み、七〇年に韓国に渡った。ソウル大に通っていたが、韓国中央情報部(KCIA、現在の国家情報院)に連行された。

 再審判決の認定では、KCIAは令状なしに金さんを三週間監禁。水などを使った拷問で無理やり「日本で北朝鮮工作員から機密探知指令を受けて韓国に入国した」と供述させた。金さんは国家保安法違反罪で懲役十年の刑が確定、八一年の仮釈放まで服役した。

 起訴事実を裏付ける“証拠”は拷問で作った調書しかない。韓国では最近、スパイ事件で同様の再審無罪判決が相次ぐ。軍事独裁政権が民主化運動を封じようと「北の脅威」をあおったとみられる。在日韓国人だけで少なくとも百六十人が服役。これまでに九人の無罪が確定した。

 

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